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1、聖女をクビになりました!

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「ポポ。
 これであの最低最悪なリオン王との婚約は解消だよな。
 バンザーイ!
 ヒューヒュー」

 フワフワと宙を漂いながら、教会へ続く石畳の坂道をのぼる私に話しかけるのは、精霊のマカである。

 私、ポポは物心ついた時から2人の精霊に守られている。

 1人目はさっきのマカ。

 2人目はロンという。

 2人ともマカロンというお菓子の姿をしていてる。

 なぜにお菓子が?って考えたけど私がお菓子大好きだからかな。

 本当のところはよくわからない。

 ちなみにマカは青。

 ロンは赤い色をしていた。

「ほんとホッとするわ。
 アイツと結婚することが最初からわかってたら、絶対王宮なんかにこなかったもんね」
 
 そう言って、思いっきり顔をしかめる。

 私はアイツ(一応この国の王様だけど、アイツでいいの)が大、大、だーい嫌いだ。

 ま、アイツも私を見るとムシズが走るようだけど。

 その証拠にアイツはいつも私に会うと眉をよせて嫌味をはなつ。

 頭の悪いアイツは嫌味のパターンも乏しい。

 ちなみに定番の1つ、ネズミバージョンはこんな感じだ。

「これはこれは聖女様だったか。
 薄い茶色の髪に丸い目のマヌケ面。
 メリハリのない幼児体型はまるでドブネズミだ。
 間違って踏みつけそうになったぞ」
ってね。

 ちょっと、ちょっと、ちょーと、そこの(アホ)坊ちゃま。

 偉そうにしてるけど、本物のドブネズミなんか見たことないしょ。

 ドブネズミはね。踏みつけるには、ちょっと大きすぎるのよ。

 オラなんかドブネズミを焼いて食った事あるべよ。
(食料難の時しかたなくだけど)

 どうだ。まいったか!
とその度心でつっこみをいれてやるのだ。

 私も今年で13歳になる。

 いっこうに女らしくなれないけどね。

 私はこの国唯一の聖女なのだ。

 ま、聖女と言っても王宮にあがってからは魔力が激減して、アイツからは出来損ない聖女とバカにされているけれども。

 悪口を言っているのはアイツだけじゃない。

 貴族達は陰で私を、ナンチャテ聖女って呼んでいるらしいし。

 寡黙な騎士達や、よく事情のわかっていない平民は別だったけど。

 けど、そんな事もすぐに過去になる。

 あと数時間で聖女をクビになるからね。

   なぜって。

 聖女の代わりがみつかったからよ。

 やっと自由になれるのだ。

 人生バンザーイだよ。

 実は私。

 ド田舎娘出身の捨て子である。

 ここへ来るまでは方言まるだしで喋っていたし、暮らしの色々なマナーも全く知らなかった。

 そんな私がだ。

 魔力だけをみこまれて、聖女として王宮につれてこられたの。

 王宮生活は大変なんてもんじゃなかった。

 苦行と言っても過言ではない。

 それもこれも。

 シュメール国には「聖女は時の王と結婚すること」という迷惑な法律のせい。

「あなたは脳ミソがあるざんすか」
 となじる意地悪な教育係に針で腕を刺されながらも、なんとか詰め込み王妃教育に耐えてこれたのは、愛しの推しの存在のおかげだ。 

 私と押しとの出会いは、今でもはっきりと胸に深く刻まれている。

 

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