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九、魔道具のギロチン

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「だが、ソフィ。喜べ」

「はい、王様。一体何をでしょうか」

伯父様が、あっさりと私を、刑に処するはずない。

心の中で、小さな期待がふくらむ。

「今日、祝いに、他国からギロチンを贈られた。
非常によく切れて、一瞬で事がおわる。罪人は、苦しまなくてすむそうだ。
誰か、あのギロチンを持ってまいれ」

「ははあ」

回りに控えていた使用人達が、低く頭を下げると、部屋からでていった。

私の手首は、本当になくなってしまうのだろうか。

「お願いです。王様。
もう少し、しっかりと調べてください」

「無礼者。ソフィは、王太子が、嘘をついていると言うのか」

王様の怒声に、ギアの高笑いが重なる。

「王様。私からも、お願いしますわ。
もう少し、時間をください。
ソフィの無実を証明してみせますわ」

泣き崩れた王妃様を抱きしめながら、今度は母が叫ぶ。

「ソフィのかわりに、私の手首を切り落としてください」

調子にのって、パリスにゲンコツばかりしていたから、二人をこんなに悲しませている。

私こそ、大バカだった。

けど、本当にパリスには、立派な王になって欲しかったのだ。

『良薬、口に苦し』って言葉、あのバカは、知らないのだろうか。


「ルワン、やめなさい。
王様のお決めになった事に、間違いはないのだから」

部屋の後ろで、腕を組んでずーと黙っていた父が、眉をひそめる。

「でたあ。いつもの、ルワン公爵のエエ格好しいが」

ババネア公爵が顎髭をなでながら、この光景をやじり始めた。

もし、疑いが晴れたら、ただじゃおかない。

「皆。静かにするのだ」

王様が声をあらげた時に、パタンと、扉が開かれる。

「仰せの通り、ギロチンをお持ちしました」

ついに手首と、お別れなのだ。

力なく床に両手をついて、うなだれてしまった。

悔しい。

「今から刑を執行する。罪人ソフィ。
顔をあげよ」

「はい」

最後の力を振り絞って、見上げると、ギロチンの横に、ライオネル護衛騎士が、澄んだ瞳で立っていた。

神出鬼没な男だわ。

「このギロチンは、他のギロチンとは、違うと聞いたが、詳しく説明して欲しい」

「はい。これは、魔道具になります。 キュール王国にやってきた、ある冒険家から、我が国の第一王子が買い取った貴重な物です」

「ほう。他のギロチンとは、どうちがうのだ」 

「正しい判断が、できるのです。
無実なら、決して刃は落ちません」

ライオネルは、チラリとこちらに視線をなげる。

その瞳は、『ネズミ、心配するな』と語っているようだ。
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