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六、ライオネル護衛騎士
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けど、顔が高すぎて、手が届かない。
「あんな発表の仕方はないな。
アイツは、噂どおりのバカ王太子だな。
あんなヤツの為に、イライラする事はない」
ライオネルに、手首をつかまれた。
「見ていたの?」
「ああ。あのとき広間にいた。
王子の護衛でな」
キュール王国は、我が国より、はるか南に位置する豊かな国だ。
メイプル王国とも、交易があり、我が国は良質なスパイスや、果実やらを大量に輸入していた。
その縁で、春の祭りには、毎年招待されていたのだ。
「恥ずかしいわ」
「オマエは悪くないぞ。
落ちこむな。必ず、またいい事がある」
ライオネルに、肩をポンとたたかれる。
「見かけによらず、優しいのね」
ライオネルの身体からは、海の香りが漂ってきた。
常夏のキュール王国で、毎日のように泳いでいるのかしら。
「キュール王国って、綺麗な国らしいわね。
いつか、行ってみたいわ」
うつむいた時、ライオネルの足先に、ふと視線が落ちた。
「ちょっと。せっかく咲いた花を、踏まないでよ」
騎士姿の胸を両手でおす。
シュッとした見かけからは、わからなかったが、相当な筋肉のようだ。
胸板の厚さが、すごい。
「おい。花なんか、踏んでないぞ」
「いえ、踏んでます」
「これは、たかが雑草だろ」
ライオネルが、靴の下から顔をだしている、ピンク色の小さな花を指さした。
「そうよ。たかが雑草の花よ。
それでも、花は花よ」
「まあな」
ライオネルは、『やっちまった』というような顔で、空を仰ぐ。
その顔がおかしくて、自然に頬がゆるんでくる。
「それにどうして、ここに食べ物が、こんなに、散らかっているのよ」
「オレが、持ってきたんだ。
アソコでは、落ち着いて食えん」
「ひょっとして、私の顔をナプキンでふいたの」
「ああ、そうだ。
念の為、持ってきていて良かっただろ」
「そっちこそ、変な人ね」
「ネズミに言われたら、おしまいだな」
同時に二人で、吹き出す。
認めたくないけど、こんなガサツの人と、妙に波長があった。
大きな身体、小麦色の肌、ふてぶてしい態度のくせに、不快感はない。
むしろ爽やかよ。
南国のフルーツのように。
「じゃあ、オレは、これで仕事に戻る。
ネズミも、あんまりクヨクヨすんな」
大きな背中が、だんだんと小さくなってゆく。
「パリスとは、正反対のタイプね」
心臓が、ドクンドクン、大きな音をたてる。
会ったばかりなのに、どうしてよ。
とまどっていると、大勢の人の声と、足音が、あわただしくやってくる。
「ソフィ様がいたぞ。
盗んだババネア公爵の宝石を、あんな所に、隠そうとしてるんだ」
ちょっと待ってよ。
何が、どうなってるの。
「あんな発表の仕方はないな。
アイツは、噂どおりのバカ王太子だな。
あんなヤツの為に、イライラする事はない」
ライオネルに、手首をつかまれた。
「見ていたの?」
「ああ。あのとき広間にいた。
王子の護衛でな」
キュール王国は、我が国より、はるか南に位置する豊かな国だ。
メイプル王国とも、交易があり、我が国は良質なスパイスや、果実やらを大量に輸入していた。
その縁で、春の祭りには、毎年招待されていたのだ。
「恥ずかしいわ」
「オマエは悪くないぞ。
落ちこむな。必ず、またいい事がある」
ライオネルに、肩をポンとたたかれる。
「見かけによらず、優しいのね」
ライオネルの身体からは、海の香りが漂ってきた。
常夏のキュール王国で、毎日のように泳いでいるのかしら。
「キュール王国って、綺麗な国らしいわね。
いつか、行ってみたいわ」
うつむいた時、ライオネルの足先に、ふと視線が落ちた。
「ちょっと。せっかく咲いた花を、踏まないでよ」
騎士姿の胸を両手でおす。
シュッとした見かけからは、わからなかったが、相当な筋肉のようだ。
胸板の厚さが、すごい。
「おい。花なんか、踏んでないぞ」
「いえ、踏んでます」
「これは、たかが雑草だろ」
ライオネルが、靴の下から顔をだしている、ピンク色の小さな花を指さした。
「そうよ。たかが雑草の花よ。
それでも、花は花よ」
「まあな」
ライオネルは、『やっちまった』というような顔で、空を仰ぐ。
その顔がおかしくて、自然に頬がゆるんでくる。
「それにどうして、ここに食べ物が、こんなに、散らかっているのよ」
「オレが、持ってきたんだ。
アソコでは、落ち着いて食えん」
「ひょっとして、私の顔をナプキンでふいたの」
「ああ、そうだ。
念の為、持ってきていて良かっただろ」
「そっちこそ、変な人ね」
「ネズミに言われたら、おしまいだな」
同時に二人で、吹き出す。
認めたくないけど、こんなガサツの人と、妙に波長があった。
大きな身体、小麦色の肌、ふてぶてしい態度のくせに、不快感はない。
むしろ爽やかよ。
南国のフルーツのように。
「じゃあ、オレは、これで仕事に戻る。
ネズミも、あんまりクヨクヨすんな」
大きな背中が、だんだんと小さくなってゆく。
「パリスとは、正反対のタイプね」
心臓が、ドクンドクン、大きな音をたてる。
会ったばかりなのに、どうしてよ。
とまどっていると、大勢の人の声と、足音が、あわただしくやってくる。
「ソフィ様がいたぞ。
盗んだババネア公爵の宝石を、あんな所に、隠そうとしてるんだ」
ちょっと待ってよ。
何が、どうなってるの。
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