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三十、魔法の粉薬

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「まずはご挨拶をかねて乾杯をしよう。
おい。この店で一番高い飲み物を持ってきてくれ」

王子はパチンと指をならせて、テーブルの近くにいたワニ獣人に声をかけた。

魔法で服を変えた時に、ちゃんと指先もライオンのヒズメに変わっていたのだ。

「かしこまりました」

丁寧に頭をさげて、ワニ獣人は様々なお酒の並ぶカウンターへ向かう。

「ではこれでいかがでしょう。
獣人国でも、最高の飲み物と言われている
『告白』です」

ワニ獣人は三角形をしたガラスのボトルを、テーブルに置いた。

「お味の方はですね」

ワニ獣人が説明しようとしたのを、王子がさえぎった。

「味なんかどうでもいい。
店で一番高い物を飲むってことが、重要なんだからな」

王子はそう言うと、懐から財布をとりだしお札をワシ掴みにする。

「これはチップだ。とっておけ」

「ありがとうございます」

一瞬ギョッと顔を強ばらせたワニ獣人は、すぐに満面の笑みをうかべると、白い手袋をはめテーブルにグラスを並べた。

「あとはオレがする」

王子が手でその動作を制する。

「かしこまりました」

背筋をのばせて、ワニ獣人が戻ってゆく。

「オレ達は明日の早朝、出国へするので、今夜はゆっくりできない。
だから、さっそく始めませんか。
実を言うと、こういう所は初めてなんだ。
お手柔らかに頼む」

「ほう。場慣れしているので、初心者には見えなかったですぞ」

「経営している商団の仕事が忙しくて、なかなか遊ぶ暇がないんだ」

「その商団では、どんな物を扱っているんですか」

ゴットンとお義父様が、王子との会話に熱中しているすきに、二人のグラスに魔法の粉薬を混ぜた。

これを飲めば、誰だって正直になってしまう。

魔鳥の卵の効果は期限切れなのに、最近魔力が強くなってきている。

だから、こんな魔法だって使えるのだ。
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