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十八、魔鳥現れるレオン王子視点

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アイリスとフロストの森へでかけた。

聖女教育に必要な魔鳥の卵を得る為だ。

長年の知り合いとはいえ、アイリスと二人っきりで、でかけるのは初めてだった。

魔獣がひしめく森の中は、危険だからアイリスの手を握る。

アイリスと恋人つなぎだ。

なぜか、少年の様にときめく自分に我ながらあきれる。

貴婦人、他国の王女、娼婦、ありとあらゆる女と浮名をながしたオレにも、こんな純粋な気持ちが残っていたんだな。

女達とつきあったのは、犯罪捜査の情報収集の為で、本気だったことは一度もない。

だから、初めて知った。

本当の恋をすれば、こんなささいな事にでも胸が高鳴るということを。 

『なんだか可哀想』 

さっきアイリスにそう言われた。

その言葉に泣きそうになる。

そしてオレは決心した。

「アイリス。これから、オレは自分の気持ちに正直になるぞ」

アイリスの白くて小さな耳元でささやく。

「それはどんなお気持ちですか」

しばらくの沈黙の後、アイリスは、まるで小動物のように小首をかしげた。

アイリスにとって、オレは長年の兄の親友にすぎない。

だから、うまく伝わらなかったのだろう。

「わからないのか。
アイリスには婚約者がいたので、あきらめていた気持ちだ。
そう言えばわかるか」

心の奥に封じ込めていた思いを、口にする。

「わかりません」

震えるぐらいに緊張した告白にも、アイリスは素っ気なく首をふる。

普通はここまで言うと、わかるはずだ。

まして聡明なアイリスが、理解できないはずはない。

「そうか。オレのことが嫌いだから、とぼけているんだな」

国一番のモテ男とはやされても、好きな女は手に入れられない。

それこそ可哀想じゃないか。

胸がキリキリ痛む。

そんな自分が可笑しくて、鼻をフンとならした時、アイリスがオレを見上げる。
 
「嫌いじゃありません」

可愛い声でそう言うアイリスの瞳には、うっすらと涙がうかんでいた。

きっとオレに申し訳ないのだろう。

やはり思いは、胸にしまっておくべきだったな。

「アイリスが、幸せに暮らしていれば黙っているつもりだった」

オレの言い訳に、アイリスは強ばった声で答えた。

「あら、私は幸せですよ。
ゴットンは、聖女様を妹みたいに可愛がっているだけですもん。 
なのに私が嫉妬して、ことを荒げてしまっただけです」

そう言って泣きそうな顔をするアイリス。

芝居をするなら、もっとうまくやれ。

じゃないと、気になってしかたがないじゃないか。 

「それは本心なのか。オレの目を見て、答えるんだ」

オレは、手でアイリスの顎をもちあげた。

と同時に、突風がふきあれた。

回りの木々がしなり、「キイイイーン。キイイーン」と空から悲鳴のような鳴き声が聞こえる。

あの声は、きっと魔鳥だ。

何回か仕留めたことがあるので、すぐにわかった。

よし、卵はいただくぞ。

戦闘モードに切り替わったオレの目の前で、アイリスが細い肩をふるわせている。

「怖がりだな。そう心配するな。
たかが、魔鳥がやっつてきただけだ」 

そう言って、思わずアイリスを力いっぱい抱きしめた。

そして、その時はっきり意識した。

アイリスは、自分の命よりも大事な存在なのだということをだ。
 
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