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八、聖女におちた夫ゴットン視点
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「アイリス伯爵令嬢が、婚約者だなんて、お前、ほんとにラッキーだな。
けど、釣り合いが全然とれてない。
ワハハハハ」
貴族学園の生徒だった時から、こんな風にまわりからやじられていた。
けど、本当のことだ。
アイリス伯爵令嬢は、品のいい容姿、頭脳明晰、優しい性格、すべてを兼ね備えていて、皆の憧れの的だった。
一方、僕はどこをとっても、平凡な目立たない男だ。
そんなアイリスと結婚できて、数ヶ月たった。
「どんな女も結婚したとたん、色あせるもんだ。
愛人にしたい女ができたら、わしに相談しろ。
うまいこと、はからってやる」
こともあろうかお父様は、結婚式の最中に、こう耳打ちしてきた。
けれど、おあいにくさま。
式をあげて、数ヶ月たつけれど、アイリスに飽きたりしてない。
けど、不満は一つだけある。
それはアイリスが、しばらくの間、聖女をひきとりたいと言い出したことだ。
僕としては、二人っきりの新婚生活を楽しみたいのに。
いくら、レオン王子の頼みとはいえ、断って欲しかった。
しぶる僕に、アイリスは優しく微笑んだ。
「そうよね。けど、王族とは、親しくしている方がいいわよ。
ゴットンの為にも。いずれは伯爵家を継ぐんだから」
と。
「そっか。そこまで、考えていてくれてたんだ。さすがアイリス」
僕は、アイリスの申し出をうけいれた。
いつも沈着冷静なアイリスは、僕という船を、より良い方向に導いてくれる羅針盤のようだ。
尊敬していた。
信頼していた。
「ただいま。早かっただろ。
仕事を切り上げて帰ってきたんだ」
ある日、予定より早く、出張から帰宅したんだ。
「はやくアイリスの顔をみたくてさ」
「まあ、驚いたわ」
アイリスは、目を丸くしていた。
けれど、あまり喜しそうじゃないし、ベッドの下に何かを隠した気がする。
「なんだか、僕の顔を見ても、喜しそうじゃないな」
まじで、気落ちした。
「そんな事ないわよ。
ちょっと朝から、ゴタゴタして、疲れているだけよ。
気分転換にお茶にしましょうよ。
朝摘みのペパーミントがあるの」
そうだったんだ。
しっかり者のアイリスとはいえ、僕ぬきで、お母様達と暮らすのは大変なんだな。
なんだか、自分が頼られているようで喜しい。
「実はね。やってきた聖女様のことなんだけど、私の手におえそうにないの」
テーブルで、二人でお茶の飲んでいると、アイリスが大きなため息をついた。
そうなんだ。
アイリスを悩ませているのは、聖女だったのか。
聞けば、お母様やお姉様まで、あきれているそうだ。
いったい、どんな女なんだ。
よし決めた。
「ここから、出て行けって言う」
僕は、アイリスに宣言したのだ。
何が聖女だ。元は酒場女だろ。
娼婦と似たようなものだ。
僕が気合いをいれて、フンと鼻をならした時、あわただしく扉がひらいた。
「ただいま、センセー」
聖女だな。
甘えた声をだしても、だまされないぞ。
厳しい視線を聖女にむけた。
「ドレスがドロドロじゃない。
いったいどうしたの」
アイリスが、とがっと声をだしている。
けど、僕には、聖女が純粋無垢な子供にしか見えなかった。
花を摘むのに夢中で、ドレスがドロドロだって!
お母様の花を、髪にいっぱい飾っている!
なんてバカなんだろう。
けど、めちゃくちゃ可愛い。
この女には、僕がついていないとダメなんだろうな。
こんな気持ちにさせられたのは、初めてだった。
けど、釣り合いが全然とれてない。
ワハハハハ」
貴族学園の生徒だった時から、こんな風にまわりからやじられていた。
けど、本当のことだ。
アイリス伯爵令嬢は、品のいい容姿、頭脳明晰、優しい性格、すべてを兼ね備えていて、皆の憧れの的だった。
一方、僕はどこをとっても、平凡な目立たない男だ。
そんなアイリスと結婚できて、数ヶ月たった。
「どんな女も結婚したとたん、色あせるもんだ。
愛人にしたい女ができたら、わしに相談しろ。
うまいこと、はからってやる」
こともあろうかお父様は、結婚式の最中に、こう耳打ちしてきた。
けれど、おあいにくさま。
式をあげて、数ヶ月たつけれど、アイリスに飽きたりしてない。
けど、不満は一つだけある。
それはアイリスが、しばらくの間、聖女をひきとりたいと言い出したことだ。
僕としては、二人っきりの新婚生活を楽しみたいのに。
いくら、レオン王子の頼みとはいえ、断って欲しかった。
しぶる僕に、アイリスは優しく微笑んだ。
「そうよね。けど、王族とは、親しくしている方がいいわよ。
ゴットンの為にも。いずれは伯爵家を継ぐんだから」
と。
「そっか。そこまで、考えていてくれてたんだ。さすがアイリス」
僕は、アイリスの申し出をうけいれた。
いつも沈着冷静なアイリスは、僕という船を、より良い方向に導いてくれる羅針盤のようだ。
尊敬していた。
信頼していた。
「ただいま。早かっただろ。
仕事を切り上げて帰ってきたんだ」
ある日、予定より早く、出張から帰宅したんだ。
「はやくアイリスの顔をみたくてさ」
「まあ、驚いたわ」
アイリスは、目を丸くしていた。
けれど、あまり喜しそうじゃないし、ベッドの下に何かを隠した気がする。
「なんだか、僕の顔を見ても、喜しそうじゃないな」
まじで、気落ちした。
「そんな事ないわよ。
ちょっと朝から、ゴタゴタして、疲れているだけよ。
気分転換にお茶にしましょうよ。
朝摘みのペパーミントがあるの」
そうだったんだ。
しっかり者のアイリスとはいえ、僕ぬきで、お母様達と暮らすのは大変なんだな。
なんだか、自分が頼られているようで喜しい。
「実はね。やってきた聖女様のことなんだけど、私の手におえそうにないの」
テーブルで、二人でお茶の飲んでいると、アイリスが大きなため息をついた。
そうなんだ。
アイリスを悩ませているのは、聖女だったのか。
聞けば、お母様やお姉様まで、あきれているそうだ。
いったい、どんな女なんだ。
よし決めた。
「ここから、出て行けって言う」
僕は、アイリスに宣言したのだ。
何が聖女だ。元は酒場女だろ。
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甘えた声をだしても、だまされないぞ。
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いったいどうしたの」
アイリスが、とがっと声をだしている。
けど、僕には、聖女が純粋無垢な子供にしか見えなかった。
花を摘むのに夢中で、ドレスがドロドロだって!
お母様の花を、髪にいっぱい飾っている!
なんてバカなんだろう。
けど、めちゃくちゃ可愛い。
この女には、僕がついていないとダメなんだろうな。
こんな気持ちにさせられたのは、初めてだった。
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