お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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七十五、エピローグ

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「これでこのお話はおわりよ」

老婆はそう言うと、少し驚いた顔になる。

「まあ。泣いているのね」

「うん。だって私みたいなローズちゃんが、幸せになったんだもん」

「私みたいってどこがなの」

老婆は心配そうに、少女の顔をのぞきこむ。

「賢いお姉ちゃんや、妹に挟まれているところがよ」

「ああ、そう言えば」

ハッとして老婆が口に手をあてて、何か言おうとした。

「心配しないで。
もうお姉ちゃんたちと、比べたりしない。
私にだって、お姉ちゃん達と違う幸せが待ってるんだもん」

少女は顔を輝かせる。

「ローズ様のようにね。
あら、あたりが賑やかになってきたわ。
お待ちかねのコットンキャンデーの屋台も
でてるわよ」

「じゃあ、早くいこうよ」

あわててベンチからおりた少女は、老婆の手をひっぱってゆく。

「はい。はい」

老婆は微笑むと、山吹色の花が蓋に描かれたオルゴールをスカートのポケットにしまう。

「ねえ。バアバ。
ひょっとして、そのオルゴールって、さっきのお話にでていた物なの」

振り返った少女が首を傾げる。

「よくわかったわね」

老婆が少しギョッとした瞬間だった。

「なんてことあるわけないでしょ。
もう私は大人なの。
だまされないわよ」

少女は自慢そうに胸をはる。

「そうよね」

老婆は優しくそう言うと、少女と屋台へと歩きだす。

「わたくしの自慢の娘ローズウッド。
今日は建国記念日ね。
おめでとう。
実はね。
わたくしは転生して、今はストーン国で暮らしているのよ。
こうやってあなたの話を伝えていくのが、今のわたくしの生き甲斐なの」

元のアンバー女王はそう言うと、満足そうに広場にあるローズの銅像に視線をなげた。

とたんに大きな花火が打ちあげられて、その声はかき消されたのだ。

             ー完ー
 最後までおつきあい下さり、ありがとうございました。


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