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七十二、魔道具のオルゴールに願う
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「危ないローズウッド」
血相を変えた王様が咄嗟に立ち上がり、盾になってくれた。
「オニキス女官、気でも狂ったのか。
呪いを解いたら、さっそく会議を開く。
申し開くがあるなら、そこでしろ」
「王様、おケガはありませんか。
後は私におまかせを」
ナール宰相とユリア騎士が、それぞれ声をはりあげながら、王様の方へと駆けてゆく。
「とうとう悪霊が姿をだしてきたようですな。 すぐにソイツをこの杖の中へ封印するので、ご心配には及びませんぞ」
バーレン解呪師は自信たっぷりな様子でそう言うと、手にした杖をオニキス女官の方へつきつけた。
「さまよえる魂よ。ここへ戻るのだ」
バーレーン解呪師が声をはりあげる。
けど、オニキス女官の様子に大きな変化はない。
「馬鹿言うんじゃないよ。
イライラするジジイだね」
しばらくすると、オニキス女官は激しく悪態をつき始めたのだ。
その様子を見たバーレン解呪師が、今度は呪文のようなものを唱えた時だった。
オニキス女官の手首にあるサソリのアザが、身体から離れ、バーレン解呪師めがけて突進したのは。
「う、う、どうしたんだい」
残ったオニキス女官は胸をかきむしりながら苦しんでいたが、白目をむくとその場に倒れた。
サソリの大きさは、私の背丈を軽く上回っている。
「とんでもない化け物じゃ」
驚きの声をあげるとバーレン解呪師は、意識を手放した。
するとサソリはクルリと方向を変えて、王様へと向かう。
「このままだと、王様がやられてしまうわ」
立ち上がってオロオロしていると、ブーニャンの声が耳をかすめた。
「もう頼れるのはローズしかいないわ」
「でも、どうすればいいのかしら。
わからないの」
目に涙を浮かべ、弱々しい声をあげていると、サソリが王様へとびかかってゆく。
「よし。こい」
長い髪をひるがえして、王様は剣に手をあてて構えている。
「クソう。私では駄目なのか」
けれど、どうしても鞘から剣が抜けないようだ。
王様が悔しそうな声を上げた時のことだった。
サソリが王様に襲いかかったのは。
サソリは一瞬で王様の命を奪うと、その醜い姿をくらました。
「王様。王様」
大粒の涙をボロボロこぼしながら駆け寄り、倒れている王様をヒシッと抱きおこす。
息がとだえた王様の顔は、まだ生きているかのように美しい。
けど、胸に耳をあてても、心臓の鼓動は聞こえなかった。
「王様。王様。レオ王様。
私をおいていかないで」
できれば、このまま一緒に死んでしまいたい。
自分の喉をひとつきしようと、王様のそばに転がる剣に手を伸ばした時だった。
「あきらめるのはまだよ。
これはね。
一つだけ、願いをかなえてくれるのよ」
ブーニャンが差し出したのは、お嫁にでるときにお母様から譲られた魔道具のオルゴールだ。
「わかったわ」
手にしたオルゴールの蓋をソッとあける。
「お願いです。
ストーン国のレオ王を生き返らせてください」
コロコロと可愛い音をたてるオルゴールに
願った時だった。
周囲の情景の輪郭がくずれてゆく。
それが再び元へ戻った時、目の前にサソリと対峙する王様の姿が現れたのだ。
「時が戻ったのね。
まだ王様は生きている」
今度こそ、絶対に王様を悪霊なんかにわたしはしない。
強く強く決心をする。
血相を変えた王様が咄嗟に立ち上がり、盾になってくれた。
「オニキス女官、気でも狂ったのか。
呪いを解いたら、さっそく会議を開く。
申し開くがあるなら、そこでしろ」
「王様、おケガはありませんか。
後は私におまかせを」
ナール宰相とユリア騎士が、それぞれ声をはりあげながら、王様の方へと駆けてゆく。
「とうとう悪霊が姿をだしてきたようですな。 すぐにソイツをこの杖の中へ封印するので、ご心配には及びませんぞ」
バーレン解呪師は自信たっぷりな様子でそう言うと、手にした杖をオニキス女官の方へつきつけた。
「さまよえる魂よ。ここへ戻るのだ」
バーレーン解呪師が声をはりあげる。
けど、オニキス女官の様子に大きな変化はない。
「馬鹿言うんじゃないよ。
イライラするジジイだね」
しばらくすると、オニキス女官は激しく悪態をつき始めたのだ。
その様子を見たバーレン解呪師が、今度は呪文のようなものを唱えた時だった。
オニキス女官の手首にあるサソリのアザが、身体から離れ、バーレン解呪師めがけて突進したのは。
「う、う、どうしたんだい」
残ったオニキス女官は胸をかきむしりながら苦しんでいたが、白目をむくとその場に倒れた。
サソリの大きさは、私の背丈を軽く上回っている。
「とんでもない化け物じゃ」
驚きの声をあげるとバーレン解呪師は、意識を手放した。
するとサソリはクルリと方向を変えて、王様へと向かう。
「このままだと、王様がやられてしまうわ」
立ち上がってオロオロしていると、ブーニャンの声が耳をかすめた。
「もう頼れるのはローズしかいないわ」
「でも、どうすればいいのかしら。
わからないの」
目に涙を浮かべ、弱々しい声をあげていると、サソリが王様へとびかかってゆく。
「よし。こい」
長い髪をひるがえして、王様は剣に手をあてて構えている。
「クソう。私では駄目なのか」
けれど、どうしても鞘から剣が抜けないようだ。
王様が悔しそうな声を上げた時のことだった。
サソリが王様に襲いかかったのは。
サソリは一瞬で王様の命を奪うと、その醜い姿をくらました。
「王様。王様」
大粒の涙をボロボロこぼしながら駆け寄り、倒れている王様をヒシッと抱きおこす。
息がとだえた王様の顔は、まだ生きているかのように美しい。
けど、胸に耳をあてても、心臓の鼓動は聞こえなかった。
「王様。王様。レオ王様。
私をおいていかないで」
できれば、このまま一緒に死んでしまいたい。
自分の喉をひとつきしようと、王様のそばに転がる剣に手を伸ばした時だった。
「あきらめるのはまだよ。
これはね。
一つだけ、願いをかなえてくれるのよ」
ブーニャンが差し出したのは、お嫁にでるときにお母様から譲られた魔道具のオルゴールだ。
「わかったわ」
手にしたオルゴールの蓋をソッとあける。
「お願いです。
ストーン国のレオ王を生き返らせてください」
コロコロと可愛い音をたてるオルゴールに
願った時だった。
周囲の情景の輪郭がくずれてゆく。
それが再び元へ戻った時、目の前にサソリと対峙する王様の姿が現れたのだ。
「時が戻ったのね。
まだ王様は生きている」
今度こそ、絶対に王様を悪霊なんかにわたしはしない。
強く強く決心をする。
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