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六十九、ローズの決意
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その後親子でどんな話がもたれたのかは、わからない。
気をきかせた私達は、先に王宮へ戻ったからだ。
ちゃんと親子の絆を、とりもどせたかしら。
レオ王は不器用な所があるから、ちょっと心配ね。
やきもきして、何らかの知らせを待っているのに、いまだに何の音沙汰もない。
あれから、数日が過ぎたというのにだ。
「ローズ様がこれほど心配しているのに、知らん顔だなんて。
案外王様って薄情なんですね。
見そこないました」
頬をふくらませながら、グラスは薬草園一太い雑草を、引き抜こうとしている。
「ふふふ。雑草も負けていないのね」
しっかりと根をはった雑草に苦戦しているグラスの様子に、つい笑いがでてしまう。
「見てて下さい。もう少しですから」
グラスがもう一度両手で雑草を握り、気合いをいれて引っ張る。
スポッと雑草は抜けたけれど、グラスも一緒に後に倒れそうになった。
「わあああ」
グラスが声をあげる。
「大丈夫か。グラス」
そう言って、グラスを受け止めたのはレオ王だ。
「お、お、王様じゃありませんか。
ど、ど、どうもありがとうございます」
目を丸くして驚くグラスの言葉は、少しどもっていた。
「これでも私は薄情か」
胸の前で両手を組んで、仁王立ちをしている王様の装いは、いつもとずいぶん違う。
身体にピタッとそう黒いシャツに、黒いパンツ。
髪を後で一本に束ねた姿は、まるで盗賊団の頭領のようだ。
「まさか。
さっきの話を聞いておられたのですか。
あれは、そのう」
「気にするな。からかっただけだ」
ニヤリとする王様は、とてもワイルドで心臓に悪い。
「ローズ王妃。
母の件は感謝しかない。
もっと早く礼を言うべきだったが、スベル国へ急用があってな」
「スベル国が、また何か文句をつけてきたのですか」
顔を曇らせると、豪快に王様は笑う。
「スベルの国王は大の酒好きでな。
山の権利をかけて、火酒の飲み比べをしようと言ってきたんだ」
「その様子じゃ、勝負には勝ったんですね」
アルコール度が高い火酒を相当飲んだだろうに、平然とした顔をしているレオ王を見上げる。
「そうだ。
あなたの言うとおり武力を使わず話をつけた」
王様は誇らしげにそう言うと、大きな手で私の頭をクシャとなでた。
「それじゃあ。もう戦の心配はないんですね」
「ああ」
「よかったです」
戦争になれば、一番に狙われるのは王様の首だろう。
ずーと気になっていた。
ホッとして、膝からくずれそうになったので、王様に抱きしめらる。
「それともう一つ報告がある。
やっと大陸一の解呪師が見つかった。
善は急げだ。
さっさく明日の正午、王宮の隠し部屋で解呪を行う。
あなたにも、その時間私の書斎に来て欲しい。
悪霊をおびき出すために、どうしてもあなたが必要だから。
けど約束して欲しい。
危険なマネはひかえると」
頭上から、優しさをおびた男らしい声がふってきた。
「はい」
コクンと頷く。
でも、約束は守れないかもしれない。
私にとって、レオ王は唯一無二の存在だからだ。
万が一解呪師の力が及ばなかった時は、召喚魔法を蘇らせる。
そう決意した。
気をきかせた私達は、先に王宮へ戻ったからだ。
ちゃんと親子の絆を、とりもどせたかしら。
レオ王は不器用な所があるから、ちょっと心配ね。
やきもきして、何らかの知らせを待っているのに、いまだに何の音沙汰もない。
あれから、数日が過ぎたというのにだ。
「ローズ様がこれほど心配しているのに、知らん顔だなんて。
案外王様って薄情なんですね。
見そこないました」
頬をふくらませながら、グラスは薬草園一太い雑草を、引き抜こうとしている。
「ふふふ。雑草も負けていないのね」
しっかりと根をはった雑草に苦戦しているグラスの様子に、つい笑いがでてしまう。
「見てて下さい。もう少しですから」
グラスがもう一度両手で雑草を握り、気合いをいれて引っ張る。
スポッと雑草は抜けたけれど、グラスも一緒に後に倒れそうになった。
「わあああ」
グラスが声をあげる。
「大丈夫か。グラス」
そう言って、グラスを受け止めたのはレオ王だ。
「お、お、王様じゃありませんか。
ど、ど、どうもありがとうございます」
目を丸くして驚くグラスの言葉は、少しどもっていた。
「これでも私は薄情か」
胸の前で両手を組んで、仁王立ちをしている王様の装いは、いつもとずいぶん違う。
身体にピタッとそう黒いシャツに、黒いパンツ。
髪を後で一本に束ねた姿は、まるで盗賊団の頭領のようだ。
「まさか。
さっきの話を聞いておられたのですか。
あれは、そのう」
「気にするな。からかっただけだ」
ニヤリとする王様は、とてもワイルドで心臓に悪い。
「ローズ王妃。
母の件は感謝しかない。
もっと早く礼を言うべきだったが、スベル国へ急用があってな」
「スベル国が、また何か文句をつけてきたのですか」
顔を曇らせると、豪快に王様は笑う。
「スベルの国王は大の酒好きでな。
山の権利をかけて、火酒の飲み比べをしようと言ってきたんだ」
「その様子じゃ、勝負には勝ったんですね」
アルコール度が高い火酒を相当飲んだだろうに、平然とした顔をしているレオ王を見上げる。
「そうだ。
あなたの言うとおり武力を使わず話をつけた」
王様は誇らしげにそう言うと、大きな手で私の頭をクシャとなでた。
「それじゃあ。もう戦の心配はないんですね」
「ああ」
「よかったです」
戦争になれば、一番に狙われるのは王様の首だろう。
ずーと気になっていた。
ホッとして、膝からくずれそうになったので、王様に抱きしめらる。
「それともう一つ報告がある。
やっと大陸一の解呪師が見つかった。
善は急げだ。
さっさく明日の正午、王宮の隠し部屋で解呪を行う。
あなたにも、その時間私の書斎に来て欲しい。
悪霊をおびき出すために、どうしてもあなたが必要だから。
けど約束して欲しい。
危険なマネはひかえると」
頭上から、優しさをおびた男らしい声がふってきた。
「はい」
コクンと頷く。
でも、約束は守れないかもしれない。
私にとって、レオ王は唯一無二の存在だからだ。
万が一解呪師の力が及ばなかった時は、召喚魔法を蘇らせる。
そう決意した。
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