お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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十四、見世物じゃないのよ

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「ローズ様。
お茶会の時、テーブルにかけるクロスはどれにしましょうか」

「そうね、グラス。
白地に水色の小花の刺繍がはいっている物にしましょう」

知的なクレオにぴったりの、落ちついた感じのクロスにした。

「ローズ様。
当日はやはり、ハーブテイをおだしするおつもりですか」

「そのつもりよ。
そうね。ペパーミントの葉を用意しておきましょう」

こんな風に、一つずつクレオを迎える準備をしていると、数日はあっというまに過ぎていった。

そして、いよいよお茶会の日がやってきたのだ。

「雲一つないお天気だわね。
まさに告白びよりだわ」

木陰の下に、計画どおりグラスが用意してくれたテーブルの横に座ったブーニャンが、目を細めて空を見上げる。
 
「いやね。ブーニャン。
今日は学園でお世話になったお礼をするだけよ。
告白をする為に呼んだんじゃないないんだからね」

王女らしく上品にテーブルについていたのに(自分だけがそう思っているだけかもね)ブーニャンのせいで調子が狂ってしまう。

「そーかしら。
それにしては顔がまっ赤よ。
私の目は節穴じゃないんだからね」

そう言うとブーニャンは、「ニャオン」と鳴く。  

「だいたいね。ブーニャンをお茶会に招待したつもりはないのよ。
生意気ばかり言うなら、あっちへ行ってね」 

膝に置いていた手を上げて、「シッシッ」とブーニャンを追っ払う。

「わかったわよ。
テーブルの下で大人しくしてるわ。
こんな面白い見世物は、そうそうないんだから、見逃すわけにはいかないもん」

ブーニャンはそう言うと、尻尾をふってテーブルの下にもぐりこんだ。

その時だった。

今度は私の右肩から、笑い声が聞こえてくる。

「ケッケッケ。
ブーニャンの言うとおりだ。
こんな面白い見世物はないぞ」

声の方に視線をむけなくてもわかる。

少し甲高い声の主はチューちゃんだ。 

「もう。
これは見世物なんかじゃないんだから」

ひょいとチューちゃんの尻尾をつかんで、つまみあげる。

「悪いけどチューちゃんも、向こうへ行っててちょうだい」

「ちぇ。わかったよ。
オイラは絶対的ローズの味方なのにな」

チューちゃんはそう言うと、そばの草むらへ消えていく。

「ローズ様。
あいかわらず私には、使い魔達が何を言っているのかわからないけれど、それなりにローズ様を心配されているんですよ。
だから、そんな風にしかめっ面しないでください。ね」

グラスが口角をあげてニカッを笑う。

「あら。私ったらそんなに難しい顔をしているのかしら」

首を傾けた時だった。

「うん。すごい顔になってるよ」

前方から聞き覚えのある心地よい声がする。

「ローズ王女様。
今日はお茶会のお招きありがとうございます」

ゆっくりと声の方に視線を移せば、身体にピッタリとそうチョッキを着たクレオが、優しく笑っていたのだ。
 
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