お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

文字の大きさ
上 下
10 / 76

九、野薔薇の村アンバー女王視点

しおりを挟む
「ローズウッドの黒い髑髏のお印は、一体なにを意味するのでしょうか。
お教えくださいませ」

王宮内にある王族専用の聖堂の前で膝まずいた。

わたくしの視線の先にあるのは、初代女王の像だ。

ポプリ国の王女は皆魔力をもって生まれてくる。 

けれどその魔力はそれぞれ違っていた。

魔力の性質は赤ん坊の額に現れる痣でわかる。

痣は十才になると消えるが、わたくし達王家の者は、その痣をお印と呼ぶ。

たとえば長女イリスの額には、金色に輝く剣のお印。

これはイリスが光魔法を授かったことのお告げだ。

同じく二女のマーガレットには青い龍のお印が、四女のダリアには赤い炎のお印がしるされていた。

これはマーガレットは水魔法、ダリアは火魔法を授けられたことを意味する。

けれど、黒い髑髏が意味する魔法はわからない。

「その印が意味する魔法は召喚ですよ」

どのくらい祈り続けた時だっただろうか。

ステンドグラスの窓から、眩しいほどの光がさしこみ、わたくしの耳元で小鳥の囀りのような声がした。

「召喚魔法ですって]

思いがけない事実に気を失いそうになる。

「女王様。いかがされましたか」

出入り口に控えていたククス宰相と近衛兵の足音がせまってきた時、光は消え聖堂内はもとの静寂を取り戻した。

「なんでもありません。
それから執務室へ戻る前に、ローズウッドの顔を見に行こうと思います」

「かしこまりました」

男達がうなずく。

屈強な彼らをひき連れて、ローズウッドの部屋へいけば、彼女は乳母の胸の中でスヤスヤと眠りについていた。

「グラント。いつもご苦労様です。 
少しだけわたくしにも、ローズを抱かせてもらえませんか」

「ぜひ、お願いいたします」

大柄で丸顔グラントは微笑みながら、そっとローズを差し出す。

「まあ。なんて可愛い寝顔なんでしょう。
まるで天使だわ」

絹のオクルミに包まれたローズのすべすべした頬に、思わず頬ずりをした。

そして、なんて可哀想なのでしょう。

わたくしは、小さな額の痣を人差し指でなぞる。

危険な召喚魔法は忌み嫌われる。

本人がよほどしっかりしていないと、災いに巻き込まれ命を失うこともあるという。

「わたくしが、しっかりとローズを守らねば」

誰にもわからないような小声で、呪文を唱えローズに保護魔法をかけた。

すると額の髑髏は一瞬で消えてゆく。

これで召還魔法は、封印されたことになる。

わたくしはローズの身の安全を思うあまり、神経質になっているのかもしれない。

人の行き来が多い本宮から、ローズを隔離することまで考えたのだから。

こんな理由でできたのが、野薔薇の村だったのだ。   
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」 アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。 金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。 私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

処理中です...