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九、野薔薇の村アンバー女王視点

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「ローズウッドの黒い髑髏のお印は、一体なにを意味するのでしょうか。
お教えくださいませ」

王宮内にある王族専用の聖堂の前で膝まずいた。

わたくしの視線の先にあるのは、初代女王の像だ。

ポプリ国の王女は皆魔力をもって生まれてくる。 

けれどその魔力はそれぞれ違っていた。

魔力の性質は赤ん坊の額に現れる痣でわかる。

痣は十才になると消えるが、わたくし達王家の者は、その痣をお印と呼ぶ。

たとえば長女イリスの額には、金色に輝く剣のお印。

これはイリスが光魔法を授かったことのお告げだ。

同じく二女のマーガレットには青い龍のお印が、四女のダリアには赤い炎のお印がしるされていた。

これはマーガレットは水魔法、ダリアは火魔法を授けられたことを意味する。

けれど、黒い髑髏が意味する魔法はわからない。

「その印が意味する魔法は召喚ですよ」

どのくらい祈り続けた時だっただろうか。

ステンドグラスの窓から、眩しいほどの光がさしこみ、わたくしの耳元で小鳥の囀りのような声がした。

「召喚魔法ですって]

思いがけない事実に気を失いそうになる。

「女王様。いかがされましたか」

出入り口に控えていたククス宰相と近衛兵の足音がせまってきた時、光は消え聖堂内はもとの静寂を取り戻した。

「なんでもありません。
それから執務室へ戻る前に、ローズウッドの顔を見に行こうと思います」

「かしこまりました」

男達がうなずく。

屈強な彼らをひき連れて、ローズウッドの部屋へいけば、彼女は乳母の胸の中でスヤスヤと眠りについていた。

「グラント。いつもご苦労様です。 
少しだけわたくしにも、ローズを抱かせてもらえませんか」

「ぜひ、お願いいたします」

大柄で丸顔グラントは微笑みながら、そっとローズを差し出す。

「まあ。なんて可愛い寝顔なんでしょう。
まるで天使だわ」

絹のオクルミに包まれたローズのすべすべした頬に、思わず頬ずりをした。

そして、なんて可哀想なのでしょう。

わたくしは、小さな額の痣を人差し指でなぞる。

危険な召喚魔法は忌み嫌われる。

本人がよほどしっかりしていないと、災いに巻き込まれ命を失うこともあるという。

「わたくしが、しっかりとローズを守らねば」

誰にもわからないような小声で、呪文を唱えローズに保護魔法をかけた。

すると額の髑髏は一瞬で消えてゆく。

これで召還魔法は、封印されたことになる。

わたくしはローズの身の安全を思うあまり、神経質になっているのかもしれない。

人の行き来が多い本宮から、ローズを隔離することまで考えたのだから。

こんな理由でできたのが、野薔薇の村だったのだ。   
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