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53、フラン様のおわり
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「フラン、しっかりするんだ。
お願いだから目をあけてくれ!」
茫然と立ちすくんでいた私だが、フラン様の元に駆けつけたキキの緊迫した声で我にかえる。
「オマエ、じゃなくてアイリーン様。
なんとかフランを助けてやってくれ。
頼む。
このとおりだ」
いつも生意気なキキが私の名前を様づけで呼ぶと、額が地面につきそうなほど深々と頭をさげた。
男の友情に胸があつくなる。
なんとかしたいのは私だって同じだ。
「とても残念だけど、私は治癒魔法が使えないの」
がっくりと肩をおとし目をうるます。
「けど以前にフランを助けてくれたんだろ。
もう1度その手を使えないのか」
そう言って、顔をあげたキキの顔が険しい。
そして、その目にはあきらかな絶望の色がうかんでいた。
「それがあの時はただの偶然だったのよ。
だから今、どうしたらいいのかまったく思いつかないの」
私は正真正銘のダメ人間だ。
やっと巡り会えた人が瀕死の状態にあるというのに、ただオロオロと震えているだけなんて。
「私だってフランを救いたい。
たとえ自分の命をひきかえにしても。
だってフランは私の唯一の人だから。
誰よりもフランを愛しているわ!」
胸の奥からつきあげてくる熱い想いを言葉にすると、なぜか一層悲しみがます。
とうとう私は地面にひざまずいて、両手で顔をおおって嗚咽した。
ボロボロとあふれる涙が、頬をつたって地面にこぼれてゆく。
「ミーナ。
もしフランがこのまま亡くなったら、すぐに私も後をおうわ。
とめてもムダだからね」
私の隣で同じようにうずくまっているミーナの肩を抱いたときだった。
「おおおおお」
とまるで地鳴りのような大きな声が周囲からわきあがる。
ああああ。
ついにフラン様が息をひきとったのね。
お願いだから目をあけてくれ!」
茫然と立ちすくんでいた私だが、フラン様の元に駆けつけたキキの緊迫した声で我にかえる。
「オマエ、じゃなくてアイリーン様。
なんとかフランを助けてやってくれ。
頼む。
このとおりだ」
いつも生意気なキキが私の名前を様づけで呼ぶと、額が地面につきそうなほど深々と頭をさげた。
男の友情に胸があつくなる。
なんとかしたいのは私だって同じだ。
「とても残念だけど、私は治癒魔法が使えないの」
がっくりと肩をおとし目をうるます。
「けど以前にフランを助けてくれたんだろ。
もう1度その手を使えないのか」
そう言って、顔をあげたキキの顔が険しい。
そして、その目にはあきらかな絶望の色がうかんでいた。
「それがあの時はただの偶然だったのよ。
だから今、どうしたらいいのかまったく思いつかないの」
私は正真正銘のダメ人間だ。
やっと巡り会えた人が瀕死の状態にあるというのに、ただオロオロと震えているだけなんて。
「私だってフランを救いたい。
たとえ自分の命をひきかえにしても。
だってフランは私の唯一の人だから。
誰よりもフランを愛しているわ!」
胸の奥からつきあげてくる熱い想いを言葉にすると、なぜか一層悲しみがます。
とうとう私は地面にひざまずいて、両手で顔をおおって嗚咽した。
ボロボロとあふれる涙が、頬をつたって地面にこぼれてゆく。
「ミーナ。
もしフランがこのまま亡くなったら、すぐに私も後をおうわ。
とめてもムダだからね」
私の隣で同じようにうずくまっているミーナの肩を抱いたときだった。
「おおおおお」
とまるで地鳴りのような大きな声が周囲からわきあがる。
ああああ。
ついにフラン様が息をひきとったのね。
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