妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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51、茶番のはじまり

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「先にゴールデンローズを見せてくれないか」

 前方にいる恰幅のいい貴族風の男があげた声に、他の皆が同調したようにうなずく。

「そうなると思ってお持ちしましたわ」

 大きな植木鉢をかかえたカーラが、待ってましたとばかりにやってきた。

 身体にピタッとそった紫色のドレスを着たカーラの頬は、私が邸にいた時よりも一段とげっそりしている。

 きっとお継母様はお父様の浮気に気がついているのね。

 けど、同情なんて1ミリもない。

 これで少しはお母様の気持がわかったかしらね。

「これがワタクシが咲かせた奇跡の花でございます」

 私の複雑な思いをよそに、マリーンは植木鉢から1本花をひき抜くと、ドヤ顔で高々と掲げる。

「おおお。
 長く生きてきたが、あんなにキラキラ光る花は見たことがないわい。
 マリーン様はまさしく聖女じゃ」

「そんなわけないよ。ジジイの目はふし穴か」

 ミーナは反発してたけど、白くて長い顎髭をたくわえた老人は、目をうるませ地面にひれふした。

 と同時にあちこちから一斉に叫び声がする。

「500ルクソール!」

「1000ルクソール!」

「2000ルクソール!」

 たしかリーフ家の一年の生活費が100ルクソール位だったと思う。

 そこから計算すると花がとんでもない価格で競り落とされようとしている。

「それにしても不思議だわ。
 奇跡の花が植木鉢一杯に咲いているなんて」

 ゴールデンローズを1本咲かせるだけで膨大な魔力を消費すると、以前読んだ魔法の本に書かれていた。

 それだけマリーンの魔力が凄いってことなの。

 ないない。

 それは絶対ない。

 自分の心の声に手をヒラヒラさせた瞬間、フラン様が力強い声と鋭い視線をマリーンにむけた。

「値がつく前に、その花が本物のゴールデンローズだという証明を見せるんだ!」

「そんなにわめかないないで。
 ワタクシもそのつもりでいましたから」

 マリーンが指をパチンとならすと、アラン様が縄でしばられ覆面をした男女を台上にひっぱってくる。

「ここにいる2人を剣で切ってちょうだい」

 マリーンの残酷な指示に周囲がどよめいた。

「皆さん。心配はご無用よ。
 ワタクシが奇跡の花で、すぐに2人を助けますから」

 マリーンの言葉がおわるやいなや、アラン様が2人の覆面をはぎとった。

 その瞬間、
「やめて!」
と私はありったけの力をこめて叫んだ。 
 
 なぜって、アラン様に剣をつきつけられているのはリンダとサムだったから。

 こんな茶番早くやめさせないと。

   魔法の力でリンダとサムの元へ一瞬で移動する。




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