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50、ブレーム公爵の尻尾

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「もうちょっとマシな人だと思ってたんだけどな」

 お父様のいい加減さにチッと舌打ちをした時、もう1人のダメ男アラン様の弾んだ声が耳にとどく。

「皆様。
 たいへん長らくお待たせいたしました。
 私は競りの司会をさせていただくマンチン公爵令息のアランと申します」

 公爵令息?

 たしかお母様と一緒に公爵家を追い出されたはずなのに。

「嘘つき!
 見栄っ張り!
 女たらしの頭からっぽ男!」

 ミーナがピョンピョンはねながら、私の思いを代弁してくれる。

「では前置きはここまでにして、奇跡の花、ゴールデンローズの主、マリーンリーフ伯爵令嬢にご登場いただきましょう!」

 アレン様が大げさに、両手を空に向かって広げた。

「ケッ、くさい芝居だな。
 よく見るとたいしたイケメンでもないし」

 フラン様がまたらしくない毒をはく。

 最後のセリフは余計だった気もするけど。

 ひょっとしたら、まだ嫉妬をひきずっているのかな。

 それって可愛すぎるんですけど。

 フラン様の横顔にチラリと視線を走らせて、ニヤついていたら周囲から拍手と歓声がわきあがった。

「ワタクシがご紹介にあずかったマリーンと申します」

 群衆の視線の先には台の上にのって、下手くそなカーテシーをとるマリーンがいる。

「なにがワタクシよ。
 すましちゃってさ」 
 
「そうカリカリするなよ。アイリーン。
 すぐにバケの皮をはいでやるから」

 胸の前で両腕をくんで、余裕の笑みをうかべていたフラン様だったけど、マリーンに続いて台上に立ったマンチン夫人の言葉に顔を凍りつかせたのだ。

「マリーンがゴールデンローズを咲かせられるようになったのは、すべてワタクシのおかげざますのよ。
 なぜならワタクシが、サクラダ国にいるイトコ、ブレーム公爵から奇跡の花を咲かせる秘技を手にいれたからです。
 おわかり。
 このワタクシこそが真の英雄なのです」

 口元に手をあて、マンチン夫人は高らかに笑う。

「さあ、じゃんじゃん花に高値をつけておくれ。
 ワタクシの優雅な生活のためざますわ。
 オホホホ」

「まさかブレーム公爵がこの件にかかわっていたとは思わなかったぜ」

 夫人の言葉を魔法石に録音していると背後から、男らしい声が聞こえてきた。

「キキじゃん。
 一体どこにいたのさ。
 ミーナ、ずーと探していたのよ」 

 あれれ。

 なんだかミーナの声の調子が、熱をおびているみたいなんですけど。

 気のせいかな。

「だな、キキ。
 これでブレーム公爵の尻尾をつかまえたってわけさ。
 さてと。
 これからヤツをどんな風に料理しようか」

 瞳にハートを浮かべているミーナを無視して、フラン様とキキは勢いよくハイタッチをすると、低い声でなんとなく物騒な話をしている。

 正直、フラン様達話の内容はよくわからない。

 けど、あんな風にマンチン夫人が威張ってられるのはこれが最後のような気がしたのだ。

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