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48、マリーンの黒い笑み

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「久しぶりね。お姉様。
 また一段と貧乏くさくなっちゃってさ。
 お気の毒様。
 で、今さらここにノコノコと何しにやってきたのよ。
 言っときますけど、私はね。
 もうお姉様の魔力なんて必要ないんだから」

 私の前でピタリと足を止めた影の正体は、予想した通りマリーンだった。

「マリーンは一段と口が悪くなっているのね。
 それはそうと、私の魔力がいらないってどういう事なの。
 あんなに欲しがってたくせに」

「だってね。
 私はもうゴールデンローズを咲かせられるんだもん。
 お姉様が咲かせられないゴールデンローズをよ」


 胸元が大きくあいた下品なドレスを着たマリーンは、顎をツンを持ち上げて勝ち誇った顔する。

 なんとなく意地悪な表情にすごみが増している気がした。 

「ねえ。マリーン。
 その花の事で確認したい事があって、私はここへきたのよ。
 マリーンの咲かせるゴールデンローズは、本当はライアンローズじゃないの?
 もし偽物だったら大変な事になるのよ。
 考えてみて。
 魔法の劣等生だったマリーンが、いきなりゴールデンローズを咲かせられるわけないでしょ」

「失礼ね。魔法の劣等生だなんて。
 あれは私が本気をださなかっただけ。
 お姉様こそなによ。
 変な言いがかりなんかつけちゃってさ。
 あ、わかったわ。
 きっと私に嫉妬してるのね。
 実はね。
 マンチン夫人がサクラダにいるイトコから、不思議な呪文を手にいれたのよ。そのおかげで、私はゴールデンローズの主になれたってこと」

「サクラダってフランの国だわ。
 そんな呪文があるなら、どうしてフランに教えなかかったのかしら。
 夫人のイトコは、フランと敵対してるってことね」
 
「ちょっと何を1人でブツブツ言ってるざんすか。
 ちゃんと人の話を聞きなさい。
 呪文は誰でもが使えるってわけじゃなかったの。
 でも、マリーンは呪文の主になれたざんす」


 あのマリーンを選ぶなんて。

 きっとその呪文は怪しいものだわ。

 そうすると競りにかけられる花は偽物に間違いない。

 困ったわ。

 押し黙っている私を見て、どう勘違いしたのか、マリーン達がバカにしたような笑い声をたてた時だった。

「なら集まっている人達の前で、花が本物だっていう証明をみせろよ」

 私達を追いかけてきたフラン様が、眉をつり上げ声をはる。

「あら。オマエはたしかお姉様のさえない彼氏だったわね。
 あいかわらず生意気なこと。
 じゃあ、わかったわ。
 オマエの言うとおりにしてあげる。
 けどもし私の咲かせた花が本物だったら、オマエとお姉様をただじゃおかないからね」

 そう言うとマリーンは、今までで1番黒い笑みをうかべたのだ。
 
 



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