妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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44、意外な花の主

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「もう! 2人とも何してるのよ。
 ずーと固まったままじゃん」

 ミーナが甲高い声をあげて、小さな手で私とフラン様の髪を数本つかんでひっぱる。

「あ、痛い」

 私とフラン様は同時に声を上げるとやっと我にかえり、名残惜しそうに身体を離す。

 そして、お互い二人の世界に浸りすぎていた事に気がついて、目をあわせて微笑んだ。

「もう。いつまでイチャイチャしてるのよ。
 バカバカしくて、ミーナ爆発しちゃうからね。
 ちょっとアイリーンは急用があるんでしょ」

「たいへん。そうだったのよね。
 ふいのファーストキスで頭から何もかもが飛んじゃって、すっかり忘れていたわ。
 教えてくれてありがとう、ミーナ」

 そう言ってミーナの方へ視線を移した。

「恥ずかしがり屋のアイリーンが、ファーストキスを言葉にするなんてびっくり。
 けどアイリーンのそんな幸せそうな顔、ミーナ初めて見たよ。
 なんかさ。
 フランにちょっと嫉妬しちゃいそう」

「バカな事言わないでよ。
 これまでミーナがいてくれて、どんなに心強かったか。 
 これからだってそうよ。
 ミーナ、私の1番の友達でいてね」

「僕もミーナには一生お礼を言いたいぐらい感謝している。
 ミーナ、ずーとアイリーンを守ってくれてありがとう」

「およよ。
 あらたまってそう言われると、それはそれですごい照れるよ。
 それとフラン。
 お礼はレストランSでのステーキ3枚でいいからさ」

「ははは。
 じゃあ、今回の件が落ち着いたらご馳走しよう
 ジョンとミーナはなんだか気が合いそうだしね」

「あのう、フラン。
 今回の件ってなに?」

 ミーナに目を細めているフラン様に、なんとなく不安な気持ちになって首を傾ける。

「それは」

 そこで言葉を区切ると、フラン様は濁りのない瞳で私をまっすぐに見据えた。 

「実はゴールデンローズの主が見つかったんだ。
 僕は王子としてその女性に会いにいく」

「そうだったの。
 これでフランは国へ帰れるし国民は救われるのね。
 本当に良かったわ」

 その気持に嘘はない。

 だけどさっきまで咲きほこっていた花が、みるみる萎れてゆくように気持がしぼんでゆく。

「奇跡の花を咲かせられるんだもん。 
 花の主はフランにお似合いの素敵な人に違いないわね」

 無理をして明るく微笑んだ私の目の前に、フラン様は懐から丸めた紙をさしだした。

「これがその人なんだ」

 気のせいかな、不機嫌そうにフラン様は紙をひろげてゆく。

「ええ!
 これはマリーンじゃない!」

  まるで聖女のように微笑むマリーンの似顔絵を見た瞬間、背筋に悪寒が走ったのだ。
 
   
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