妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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43、さよなら、友達

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「私のお母様が亡くなったのは、お父様とお母様の妹が愛し合っているのをみたショック
なの」

 フラン様の隣に腰をおろすと心の中で「エイッ」て気合いをいれて、1番言いたくなかった事をうちわけた。

「それってどういう意味なの。
 ええ、まさか。
 そういうことなの。
 それはひどいなあ!」

 最初はキョトンとした顔をしてとまどっていたようなフラン様が、しばらくして声をあらげる。

「でさ。
 アイリーンの継母がその妹なんだよ」

 私達の前で体操座りをしていたミーナが、身振り手振りをまじえて口をはさむ。 

「驚いたでしょ。
 恥さらしな家で。
 私の身体の中にも、裏切り者のお父様の血が流れているのよ。
 そんな私が王子様の友達になってはいけないの。
 だから友達ごっこはこれで終わりにしまよう。
 短い間だったけど楽しかったわ」

 うつむいて早口でそう言うと、この場から離れようとベンチから立ち上がった時だった。

「そんな事全然問題じゃない。
 たとえアイリーンが殺人者の娘だろうと、僕はアイリーンを手放さない。
 親が誰であろうと、アイリーンはアイリーンだから。
 いつもニコニコと明るくて、苦労を感じさせないアイリーンが大好きなんだ」

 フラン様に腕をひっぱられ、ギュッと胸の中に抱きしめられたのは。

「大好き? 
 私なんかを」 

 フラン様の分厚い胸板に顔をうずめる形になった私は、フラン様の言葉を繰り返すと顔を見上げた。

「アイリーンだから好きなんだ。
 アイリーンじゃないとダメなんだ」

 甘い声でささやくフラン様と視線がぶつかる。

 思わず赤面してギュツと目を閉じると、ふいに唇に柔らかい感触がおちてきた。

「アイリーンのファーストキスだよ」

 ミーナのはしゃいだ声が鼓膜をふるわす。

「実は僕にとってもファーストキスなんだ。
 アイリーンの言うとおり、これで友達ごっこは終わりにしよう。
 今からは友達じゃなくて、僕の彼女になって欲しい」

 目をうるませたフラン様は熱い眼差しをおくってくる。

「でも、でも」

 王子様の隣に立って絵になるのは、生まれも育ちも完璧な美しい令嬢なのだ。

 私みたいな社交界デビューもはたしてないような女の子が王子様と結ばれるのは、物語の中だけでしょ。

 それにフラン様も男だ。

    いつかお父様のように心変わりするかもしれない。

「自分の気持ちに正直になりなよ。
 いつもアイリーンが書いている物語みたいに、きっとハッピエンドがまってるから勇気をだせよう」

 私の揺れている気持ちを見透かしたように、ミーナが励ましてくれる。

「ねえ。アイリーン。お願いだから僕を信じて欲しい。
 僕は」

 フラン様が力強い声で何かを伝えようとした。 

 けど、それをさえぎり全身から勇気を絞りだして叫ぶ。

「あのう。私もフランが大好きなんです!」

「アイリーン!」

 パアッと顔を輝かせたフラン様に、折れそうなぐらい強く強く抱きしめられた。

 さよなら、友達。


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