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33、ブランチさんの鑑定魔法
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「ほんとだあ。
2人で手なんか握っちゃってさ。
いやらしいぞー」
「ヒュウヒュウ」とミーナは口笛を吹いていたけど、突然ハッとしたような顔をして口笛をやめる。
「あれれ。
この人どこかで見覚えがあるよ。
どこだったかなあ」
ケーキの箱を頭にのせたまま、ミーナは目を見開いてフラン様の顔を見上げる。
頭から箱がずり落ちないのは不思議だ。
魔道具って一体どういう作りをしているのかな。
「思い出した!
この前、道で倒れていた王子様だよ」
「まいったなあ。
うまく化けたつもりなのに、チビクマちゃんにまですぐにバレてしまうとは」
フラン様はそう言うと、ピョコンピョコンとはねるミーナの頭をなでた。
その時だ。
「コホン」
とブランチさんがわざとらしく大きな咳をして、トゲトゲしい声をあげたのは。
「そんなに落胆することはない。
私には君はどこからどう見ても王子なんかに見えないぞ。
『亀のコウより年のコウ』だよ。
私は簡単にはだまされないのだ」
異国の古いコトワザを口にしたブランチさんは険しい視線をフラン様になげる。
「しかし君。
王子様を名のって、女の子をナンパする手は古すぎるんじゃないかな」
ブランチさんは胸の前で両手を組むと、キリッと眉をつりあげた。
「ブランチさんは、アイリーンの事となるといつも人が変わるんだ。
疑い深くて怒りっぽいジジイになる。
そこ一番の欠点なんだよな」
「フラン様。ミーナの言うとおりなんです。
ブランチさんはいつもはこんな人じゃないんです。
お願いです。
どうかブランチさんを不敬罪で訴えないでください」
「きっとブランチさんにとってアイリーンは娘も同然なんだろうね。
いいよね。そういう関係。
それに訴えるも何も、僕はまったく怒ってないから大丈夫だよ」
フラン様が破壊力抜群の爽やかな笑みをうかべる。
そのせいで私の心臓は大きく跳ねた。
「けっ、調子のいい男だな。
つべこべ言わずにそこへ座れ。
私が鑑定魔法を使って、オマエの正体をあばいてやるから」
ブランチさんがさっきまでフラン様が座っていた椅子を指さした。
「わかりました。
ぜひお願いします」
この場の雰囲気を楽しんでいるようなフラン様は椅子へ腰かける。
「おい詐欺師。
逃げるなら今のうちだぞ」
そう言うブランチさんにフラン様は首を横にふり静かに目を閉じた。
「ブララブララ」
ブランチさんが人差し指をフラン様の額にあてて呪文をつぶやく。
ブランチさんの指先から光があふれて、一瞬にしてフラン様は私が最初に見た姿に変わった。
神秘な森を思わせるエメラルドの瞳。
太陽のように輝くブロンドの髪。
大理石のような肌。
フラン様の頭上には「鑑定結果。サクラダ国の第1王子」と文字が浮かび上がっている。
「なんと。
あなたは本当にサクラダの第1王子フラン様だったのですね。
知らずとはいえ、さきほどは大変失礼しました。
どうか私を罰してくださいませ」
驚愕したブランチさんは、口に手をあてワナワナと身体をふるわせていた。
「ブランチさん、あなたは全然悪くありません。
むしろ僕の恩人をとても大切にしてくれているのがわかり、心があたたまりました。
だからあなたを罰するなんてできません。
けど、僕のお願いを1つだけ聞いていただけるでしょうか」
フラン様は床に膝をついて深く頭を下げるブランチさんに穏やかな声をだす。
「なんなりとおっしゃって下さい」
「僕の恩人にお礼をさせてくれませんか」
「はあ? そんな事でいいのですか」
ブランチさんは少しとまどった様子を見せていたが、すぐにコクンと首を縦にふる。
そういうわけで、私は3日後フラン様が働いているレストランを訪れる事になった。
2人で手なんか握っちゃってさ。
いやらしいぞー」
「ヒュウヒュウ」とミーナは口笛を吹いていたけど、突然ハッとしたような顔をして口笛をやめる。
「あれれ。
この人どこかで見覚えがあるよ。
どこだったかなあ」
ケーキの箱を頭にのせたまま、ミーナは目を見開いてフラン様の顔を見上げる。
頭から箱がずり落ちないのは不思議だ。
魔道具って一体どういう作りをしているのかな。
「思い出した!
この前、道で倒れていた王子様だよ」
「まいったなあ。
うまく化けたつもりなのに、チビクマちゃんにまですぐにバレてしまうとは」
フラン様はそう言うと、ピョコンピョコンとはねるミーナの頭をなでた。
その時だ。
「コホン」
とブランチさんがわざとらしく大きな咳をして、トゲトゲしい声をあげたのは。
「そんなに落胆することはない。
私には君はどこからどう見ても王子なんかに見えないぞ。
『亀のコウより年のコウ』だよ。
私は簡単にはだまされないのだ」
異国の古いコトワザを口にしたブランチさんは険しい視線をフラン様になげる。
「しかし君。
王子様を名のって、女の子をナンパする手は古すぎるんじゃないかな」
ブランチさんは胸の前で両手を組むと、キリッと眉をつりあげた。
「ブランチさんは、アイリーンの事となるといつも人が変わるんだ。
疑い深くて怒りっぽいジジイになる。
そこ一番の欠点なんだよな」
「フラン様。ミーナの言うとおりなんです。
ブランチさんはいつもはこんな人じゃないんです。
お願いです。
どうかブランチさんを不敬罪で訴えないでください」
「きっとブランチさんにとってアイリーンは娘も同然なんだろうね。
いいよね。そういう関係。
それに訴えるも何も、僕はまったく怒ってないから大丈夫だよ」
フラン様が破壊力抜群の爽やかな笑みをうかべる。
そのせいで私の心臓は大きく跳ねた。
「けっ、調子のいい男だな。
つべこべ言わずにそこへ座れ。
私が鑑定魔法を使って、オマエの正体をあばいてやるから」
ブランチさんがさっきまでフラン様が座っていた椅子を指さした。
「わかりました。
ぜひお願いします」
この場の雰囲気を楽しんでいるようなフラン様は椅子へ腰かける。
「おい詐欺師。
逃げるなら今のうちだぞ」
そう言うブランチさんにフラン様は首を横にふり静かに目を閉じた。
「ブララブララ」
ブランチさんが人差し指をフラン様の額にあてて呪文をつぶやく。
ブランチさんの指先から光があふれて、一瞬にしてフラン様は私が最初に見た姿に変わった。
神秘な森を思わせるエメラルドの瞳。
太陽のように輝くブロンドの髪。
大理石のような肌。
フラン様の頭上には「鑑定結果。サクラダ国の第1王子」と文字が浮かび上がっている。
「なんと。
あなたは本当にサクラダの第1王子フラン様だったのですね。
知らずとはいえ、さきほどは大変失礼しました。
どうか私を罰してくださいませ」
驚愕したブランチさんは、口に手をあてワナワナと身体をふるわせていた。
「ブランチさん、あなたは全然悪くありません。
むしろ僕の恩人をとても大切にしてくれているのがわかり、心があたたまりました。
だからあなたを罰するなんてできません。
けど、僕のお願いを1つだけ聞いていただけるでしょうか」
フラン様は床に膝をついて深く頭を下げるブランチさんに穏やかな声をだす。
「なんなりとおっしゃって下さい」
「僕の恩人にお礼をさせてくれませんか」
「はあ? そんな事でいいのですか」
ブランチさんは少しとまどった様子を見せていたが、すぐにコクンと首を縦にふる。
そういうわけで、私は3日後フラン様が働いているレストランを訪れる事になった。
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