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30、マリーンとの再会
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「きゃはははは。
恋人への贈り物がただの空気だなんて、マジで笑えるわ。
お姉様の恋人つてどんだけ貧乏なのよ」
フラン様を見上げて首を傾げていると、突然甲高い声が耳をつんざいた。
「どうしてアンタがここにいるのよ。
ここが穢れるから、さっさと帰ってちょうだい」
玄関からこちらに歩いてくる声の主をにらみつける。
声の主は2度と会いたくない女ナンバー1のマリーンだった。
「どうしてかって。
お姉様が約束をやぶったからじゃない!」
私の正面に立ったマリーンは、腰に両手をあてて居丈高にさけぶ。
「約束? 約束ってどんな約束よ」
「とぼけないでよ。
邸を出る前に私に魔力をくれるって言ったでしょ!」
「ああ。あの約束はナシよ」
「なんですって。
アイリーンの分際で私にはむかうなんて、許せないわ」
目をつりあげたマリーンの手が、私の髪をムンズとつかんだ時だった。
「レデイーらしくない行動はやめないとね」
と、フラン様の手がマリーンの手首をつかんだ。
口調こそ優しいが、フラン様の表情には怒りがにじみでている。
片眉をつり上げ、ピクピクと頬をふるわせていた。
「ふん。
貧乏人のくせになにがレデイーよ。
ちょっとぐらいイケメンだと思って、いい気にならないで。
私は伯爵令嬢なのよ。
その汚い手を離しなさい」
「この人に2度と乱暴をしないと約束するなら、手を離すけどね」
「けっ。
平民のくせに生意気ね。
第1これは私とお姉様の問題なのよ。
部外者はひっこんでてちょうだい。
アンタは何も知らないでしょーが、悪いのはこの女なんだから」
マリーンはそう言うと、フラン様にむかって「ペッ」とツバをはく。
フラン様は他国とはいえ王太子なのだ。
いくらなんでもヤバいでしょう。
ひょっとしたら、シンシア国とサクラダ国の紛争に発展するかもしれない。
「マリーン。
この人はね。
サクラダの」
額に冷や汗をにじませながら、声をしぼりだした時だった。
「きゃああ。
痛いじゃないのよ」
とマリーンが悲鳴をあげる。
「これでも君がわかってくれないなら、もっと力をこめて手首を粉々にするけどいい?」
フラン様がマリーンに冷酷な声でつげた。
フラン様はただ優しいだけの人じゃなかったのだ。
怒るべき時にはしっかりと怒れる人。
フラン様には国のリーダとしての資質が立派に備わっている。
私がそう思ったと同時に、
「わかったわよ。
お姉様には何もしないわ。
お願い。
だからその手を離して」
とマリーンが情けない声をあげた。
悪縁で結ばれた姉妹の再会はこんな風に最悪だったのだ。
恋人への贈り物がただの空気だなんて、マジで笑えるわ。
お姉様の恋人つてどんだけ貧乏なのよ」
フラン様を見上げて首を傾げていると、突然甲高い声が耳をつんざいた。
「どうしてアンタがここにいるのよ。
ここが穢れるから、さっさと帰ってちょうだい」
玄関からこちらに歩いてくる声の主をにらみつける。
声の主は2度と会いたくない女ナンバー1のマリーンだった。
「どうしてかって。
お姉様が約束をやぶったからじゃない!」
私の正面に立ったマリーンは、腰に両手をあてて居丈高にさけぶ。
「約束? 約束ってどんな約束よ」
「とぼけないでよ。
邸を出る前に私に魔力をくれるって言ったでしょ!」
「ああ。あの約束はナシよ」
「なんですって。
アイリーンの分際で私にはむかうなんて、許せないわ」
目をつりあげたマリーンの手が、私の髪をムンズとつかんだ時だった。
「レデイーらしくない行動はやめないとね」
と、フラン様の手がマリーンの手首をつかんだ。
口調こそ優しいが、フラン様の表情には怒りがにじみでている。
片眉をつり上げ、ピクピクと頬をふるわせていた。
「ふん。
貧乏人のくせになにがレデイーよ。
ちょっとぐらいイケメンだと思って、いい気にならないで。
私は伯爵令嬢なのよ。
その汚い手を離しなさい」
「この人に2度と乱暴をしないと約束するなら、手を離すけどね」
「けっ。
平民のくせに生意気ね。
第1これは私とお姉様の問題なのよ。
部外者はひっこんでてちょうだい。
アンタは何も知らないでしょーが、悪いのはこの女なんだから」
マリーンはそう言うと、フラン様にむかって「ペッ」とツバをはく。
フラン様は他国とはいえ王太子なのだ。
いくらなんでもヤバいでしょう。
ひょっとしたら、シンシア国とサクラダ国の紛争に発展するかもしれない。
「マリーン。
この人はね。
サクラダの」
額に冷や汗をにじませながら、声をしぼりだした時だった。
「きゃああ。
痛いじゃないのよ」
とマリーンが悲鳴をあげる。
「これでも君がわかってくれないなら、もっと力をこめて手首を粉々にするけどいい?」
フラン様がマリーンに冷酷な声でつげた。
フラン様はただ優しいだけの人じゃなかったのだ。
怒るべき時にはしっかりと怒れる人。
フラン様には国のリーダとしての資質が立派に備わっている。
私がそう思ったと同時に、
「わかったわよ。
お姉様には何もしないわ。
お願い。
だからその手を離して」
とマリーンが情けない声をあげた。
悪縁で結ばれた姉妹の再会はこんな風に最悪だったのだ。
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