妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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27、女神のヘルプ 女神視点

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   ワタクシは豊穣の女神アリストです。

 均整のとれた豊満な肢体に蜂蜜色の豊かな髪をもっている。

 くわえて陶器のようなツヤ肌にアーモンドのような大きな目。

 自分で言うのもなんだけど、美女だらけの女神の中でも、とびっきりの美女だと思うわ。

 雲の上にそびえる城に住んでいるワタクシは、絹でできた純白のドレスをまとい、花に囲まれた部屋で暮らしている。

 毎日お気に入りの精霊や、魂だけになった人間とのお喋りを楽しみにしながら。

「ローラ。
 あなたの娘アイリーンの様子を、魔法の鏡で一緒にのぞいてみましょう」

 今日の話し相手はローラリーフ嬢である。

 人間界では女伯爵だったローラは身も心もとても美しい女性たったから、ワタクシは彼女に最高のギフトをあたえた。

 幻の花と言われていたゴールデンローズを咲かす力よ。

「ワタクシがあなたに余計な力をあたえたばかりに、あなたたち親子には苦労をかけるわね」

「とんでもないです。
 女神様は何も悪くありません。
 悪いのは、せっかくいただいた力を上手にいかせなかった私ですわ」

 ローラは深々と頭を下げると、長いため息をつく。

 ワタクシたちは猫足の丸テーブルをはさんで、向かいあって座っている。

 テーブルの中央に置かれた鏡は人間界をリアルタイムでうつす。

 それぞれの前には可愛いカップが置かれていた。

 カップの中では、朝露の精霊が入れてくれたレモン色のお茶が湯気をたてている。

「悪いのはローラじゃなくってよ。
 コンプレックス丸出しの妹カーラと、そんな女にうつつをぬかせたパインだわ」

 ワタクシはカップに口をつけて、甘酸っぱいお茶を一口飲むと、カップをテーブルに戻して言葉を続けた。

「主人と妹の事にショックをうけたあなたは、事故で死んでしまったのね」

「そうです。
 けど、残されたアイリーンのことがとても気がかりでこの世界に召された時、女神様にお願いしたのです」

 そう言うとローラはテーブルの上で重ねた両手にギュッと力をいれる。

「そうだったわね。
 たしか『娘に私のギフトを引き継がせないで下さい』でしたよね。
 あんなお願いは初めてだったから、今でもあの時のあなたの様子はよく覚えているわ」

「こわかったのです。
 妹達にアイリーンのギフトを悪用されるのが」

「わかってるわ。
 だからワタクシがアイリーンに魔法をかけたのよね。
 アイリーンが真実の愛に出会った時、初めてギフトの力が開花するようにとね」

 ワタクシの言葉に無言でうなずいたローラは、すぐに目を丸くして驚きの声をあげた。

「女神様。 
 とうとうアイリーンが邸をでました」
と。

「まあ、本当なの」

 ワタクシはローラの視線の先にある鏡に視線を落とす。


「女神様。
 アイリーンは邸を出たのはいいけど、行き先がなくて宙に浮かんだままですわ」

 ローラが心細い声をだした。

「大丈夫ですよ。
 ワタクシがヘルプしますから」

 ドンと拳で胸をたたき、鏡にむかって人差し指を優雅にふる。

 女神であるワタクシは、呪文を唱えずとも魔法を発動させれるのだ。

「たった今、ブランチに栞を送りましたよ」

 口角をあげて、少し自慢げに微笑む。

「栞? ですか」

 ローラは不思議そうな顔をして首を傾けた。

「そうよ。
 裏に、『邸を出たアイリーンが、行き場を失って空を漂っている』って魔法で書きこんだ栞なの」

「まあ。ありがとうございます」

 やっとローラの表情がホッとしたようにゆるんだ。

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