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18、婚約破棄の破棄
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「そうわめくな。アイリーン。
オマエはすぐにオレと結婚するんだから、こんなボロ部屋にこだわる必要はないだろ」
むだに甘い男の声が私の鼓膜をふるわし、むせかえるほどキツイ香水の香りが鼻腔をくすぐる。
「その声はアラン様ね。
私はアラン様に婚約破棄をされたのよ。
なのに結婚だなんてありえないでしょ」
「喜べ。
あの婚約破棄は破棄してやる」
「なんですって!
私はそんな事きいていません。
破棄したりやめたり、いくらアラン様でも勝手すぎます」
「まあ、そう怒るな。
色々あったが伯爵令嬢の分際で、公爵令息に嫁げるのだ。
ありがたく思え」
そう言うとアラン様は、私を抱きかかえて部屋をでようとする。
「アラン様。私をどこへ連れていくつもりなのですか」
「この邸の客間だ。
オマエを連れてこいって、お母様に命令されたんだ。
お母様はなぜかオマエを気にいっていてな。
オレがオマエと結婚しなければ、オレを勘当するとまでいうんだ」
「アラン様を勘当するですって」
目を丸くして驚いたものの、すぐにその方がマンチン公爵家にとってはいい事だな、と思う。
アラン様のすぐ下の弟であるシーラ様は文武にたけた優秀な人だったからだ。
「おい。何を考えているんだ。
オレは弟なんかに公爵家を譲るつもりは1ミリもないぞ。
オレから家をとってみろ。
何も取り柄がないからな」
「ご自慢の顔があるでしょ。
このさいシーラ様に公爵家を譲って、男娼にでもなったらどうですか」
「なんだと。
アイリーンの分際でオレに生意気な口をきくな。
オレだってな。
本当はオマエなんかと結婚したくない。
けど、しかたなくするんだ。
おぼえてろ。
結婚しても、オマエなんかに指1本ふれない。
すぐに何人もの愛人をかこってやるからな」
アラン様はそう言って、私の顔をのぞきこむ。
怒りのせいかアレン様の瞳は真っ赤に変わっている。
「まるで毒蛇みたいね」
ゾクリと悪寒が背中を走った時だった。
「お姉様。
私が捨てたアラン様と、末永く仲良くするのよ。
これは私からの結婚祝いよ」
マリーンが「キャキャキャ」と笑いながら、私のボロワンピースを顔面めがけて投げてきた。
「アラン様。
こんな少年の格好で公爵夫人に会うのは失礼でしょ。
着がえたいから、下ろしてちょうだい」
床の上に散らばったみすぼらしい服に視線をおとして、アラン様にお願いする。
「まさかオマエに男装の趣味があったとは、驚いたぜ。
まあ、何を着てもパッとしないがな」
アラン様はバカにしたように鼻で笑うとやっと私を手放してくれた。
その嫌な笑い方は、これから会う公爵夫人とそっくりだ。
オマエはすぐにオレと結婚するんだから、こんなボロ部屋にこだわる必要はないだろ」
むだに甘い男の声が私の鼓膜をふるわし、むせかえるほどキツイ香水の香りが鼻腔をくすぐる。
「その声はアラン様ね。
私はアラン様に婚約破棄をされたのよ。
なのに結婚だなんてありえないでしょ」
「喜べ。
あの婚約破棄は破棄してやる」
「なんですって!
私はそんな事きいていません。
破棄したりやめたり、いくらアラン様でも勝手すぎます」
「まあ、そう怒るな。
色々あったが伯爵令嬢の分際で、公爵令息に嫁げるのだ。
ありがたく思え」
そう言うとアラン様は、私を抱きかかえて部屋をでようとする。
「アラン様。私をどこへ連れていくつもりなのですか」
「この邸の客間だ。
オマエを連れてこいって、お母様に命令されたんだ。
お母様はなぜかオマエを気にいっていてな。
オレがオマエと結婚しなければ、オレを勘当するとまでいうんだ」
「アラン様を勘当するですって」
目を丸くして驚いたものの、すぐにその方がマンチン公爵家にとってはいい事だな、と思う。
アラン様のすぐ下の弟であるシーラ様は文武にたけた優秀な人だったからだ。
「おい。何を考えているんだ。
オレは弟なんかに公爵家を譲るつもりは1ミリもないぞ。
オレから家をとってみろ。
何も取り柄がないからな」
「ご自慢の顔があるでしょ。
このさいシーラ様に公爵家を譲って、男娼にでもなったらどうですか」
「なんだと。
アイリーンの分際でオレに生意気な口をきくな。
オレだってな。
本当はオマエなんかと結婚したくない。
けど、しかたなくするんだ。
おぼえてろ。
結婚しても、オマエなんかに指1本ふれない。
すぐに何人もの愛人をかこってやるからな」
アラン様はそう言って、私の顔をのぞきこむ。
怒りのせいかアレン様の瞳は真っ赤に変わっている。
「まるで毒蛇みたいね」
ゾクリと悪寒が背中を走った時だった。
「お姉様。
私が捨てたアラン様と、末永く仲良くするのよ。
これは私からの結婚祝いよ」
マリーンが「キャキャキャ」と笑いながら、私のボロワンピースを顔面めがけて投げてきた。
「アラン様。
こんな少年の格好で公爵夫人に会うのは失礼でしょ。
着がえたいから、下ろしてちょうだい」
床の上に散らばったみすぼらしい服に視線をおとして、アラン様にお願いする。
「まさかオマエに男装の趣味があったとは、驚いたぜ。
まあ、何を着てもパッとしないがな」
アラン様はバカにしたように鼻で笑うとやっと私を手放してくれた。
その嫌な笑い方は、これから会う公爵夫人とそっくりだ。
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