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17、マリーンの癇癪

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「勝手に私の部屋に入るなんてひどいわ。
 まるで泥棒じゃない」

 自分の部屋に確かめにいくと、リンダの言ったとおりマリーンが部屋の中をキョロキョロと物色していた。

「泥棒ですって。
 1つも取られるような物もないくせに、図々しいわね」

 部屋の主が戻ってきたというのに、マリーンは少しも悪びれる様子がない。

 胸の前で腕をくみ、私の方を見据えると不適な笑みをうかべる。

「ゴチャゴチャ言ってないて、さっさとここから出ていって」

 2度とこんなことができないように、ガツンと言ってやった。

「ふーんだ。
 でていくのはそっちよ、お姉様。
 それになにそのカッコは。
 まるで男の子じゃないの。
 とうとう頭がおかしくなったのかしら」

 お嬢様らしいワンピースを着ているマリーンは、見下したような視線を私にむける。

「お姉様。
 いいことを教えてあげましょうか」

 今までにマリーンがこう言って教えてくれた事に、いいことなんて1つもなかった。

 今度はなにかしら。

 緊張してピクリとマブタが動く。

「この部屋はね。
 とりつぶして物置として使う事になったのよ。
 さっきお母様がお決めになったの。
 だから、私がお姉様の荷物を整理してあげようとしていたの。
 それなのに泥棒呼ばわりするなんて、生意気にもほどがあるわ」

 癇癪をおこしたマリーンは、部屋にあるものを手当たり次第投げ始めた。

 小さな花瓶、コップ、枕にクッション……。 

   それらが床に乱雑に転がってゆく。

「少しはスッキリしたから、このへんで許してあげるわ」 

 最後に窓のカーテンをビリビリとひきさくと、やっとマリーンは落ち着きをとりもどしたようだ。

 息をふかく吐くと動きを止める。

「この疫病神。
 トットと帰れ!」

 ミーナがペンダントからちぎれそうなぐらい激しく揺れる。

「マリーンお嬢様。
 物置の件は私も知りませんでしたが、たとえそうでも、これはいくらなんでもやり過ぎです」 

 今まで青ざめて押し黙っていたリンダが、重い口をひらいた。

「うるさーい。ババアは黙っててよ。
 これ以上何か言うと、お母様に頼んで解雇してやるわ」

「どうぞご自由にして下さいませ」

 ツンと顎を上げるマリーンに、リンダは静かな声をあげる。

「貧乏人のババアのくせに偉そうにしないでよ。 
 わかったわ。
 さっそくお母様に言いつけてやる」

 そう言ってマリーンが部屋をでようとした時だった。

「あら。何かしら。これは」

 床に転がっている小さな巾着袋を見つけて、頭を傾げる。

 それは私のヘソクリだった。

 これまでのリトルドリームでの稼ぎを、あの袋にまとめていれていたのだ。

「あれはなんでもないわよ」

 あわてて走りより、小袋に手をのばした。

 けれど、横からのびてきたマリーンの手に大事なヘソクリを奪われてしまう。

「あら。
 けっこうなお金がはいってるわ。
 マカロン夫人? リトルドリーム?
 これはいったいどういう事なの。
 お姉様。説明しなさい」

 まるめて袋にいれていた領収書をひろげると、マリーンが眉をつり上げた。

「私が何をしようがマリーンには関係ないでしょ!
 ほっといてよ」 

 両手で拳をつくって思いっきり叫ぶ。

 その時、突然背後から現れた誰かにはがいじめにされたのだ。

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