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7、ギフトをもたない娘 カーラ視点
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1つ年上のローラお姉様は、まるでカトレアの花のように華やかだった。
光の加減により銀色にも金色にも、ピンク色にも見える、もえるような若草を彷彿させる淡い緑の髪と瞳をもっていた人。
薔薇色の頬と、大理石のような白い肌をして、いつも朗らかに笑っていた。
リーフ伯爵家には男子がいない。
ほんの数年前まで、家の当主は男子と定められていた。
けれど、法律が改正され女でも当主になれるようになったのだ。
「やっと法律が女当主を認めてくれたのに、まだ女伯爵はあらわれないのね。
なら、私がその第1号になるわ」
お姉様は自信たっぷりにそう言った。
言葉どおりお姉様は、伯爵家の三男パイン様と結婚して、自分がリーフ家の当主となる。
「初めまして。カーラ。
これからよろしくね」
パインお義兄様が邸へやってきた時、玄関先で私の手を握りしめた。
灰色の髪に灰色の瞳。
お義兄様は少し気弱そうで、どことなく影の薄い感じがしたのだ。
「アナタは私と同類だわ。
これからきっとローラお姉様の引き立て役として生きるのね。
お可哀想に」
私はつい本音を口にして、お義兄様の手を握りかえした。
「あら。
初対面の人とは話せないカーラが、自分からパインに言葉をかけたわ。
珍しいこともあったもんね」
と、ローラお姉様は私の本音を冗談だと思い、笑いとばしていたわ。
激しい人見知り。
取り柄のない陰気な娘。
そんな評判の私は、どの縁談もうまくいかず、当時はすっかり結婚をあきらめていたのだ。
「美人でギフト持ちで、両親にも期待をかけられて育ったお姉さまになんか、私の気持ちなんかわかるもんですか」
ポツリと呟いて、唇をかみしめた時、やわらかな声が耳をかすめた。
「アナタにはローラにない魅力がある。
気にしないで」
と。
生まれて初めて男の人にささやかれた甘言に、頭は真っ白になった。
それからは、気がつけばいつもパインお義兄様を目でおっていたのだ。
「ローラは本当にやり手だね。
最近思うんだ。
アイリーンが生まれた今は、僕なんて必要ないんじゃないのかって」
モデル領地になって、お姉様がますます仕事に没頭した頃、パインお義兄様はこんな事を口走るようになった。
だから、私はカケにでたのだ。
お姉様の留守を見計らって、パインお義兄様にせまり凋落した。
つもりだったけど、お義兄様にとっては私との事は過ちだったようだ。
それがわかるから。
ローラお姉様そっくりのアイリーンを見ると、一瞬で頭に血がのぼった。
アイリーンはまるでローラお姉様の亡霊だ。
だから、アイリーンをとことん痛めつけないといけない。
どうしても、ローラお姉様だけには負けたくなかった。
光の加減により銀色にも金色にも、ピンク色にも見える、もえるような若草を彷彿させる淡い緑の髪と瞳をもっていた人。
薔薇色の頬と、大理石のような白い肌をして、いつも朗らかに笑っていた。
リーフ伯爵家には男子がいない。
ほんの数年前まで、家の当主は男子と定められていた。
けれど、法律が改正され女でも当主になれるようになったのだ。
「やっと法律が女当主を認めてくれたのに、まだ女伯爵はあらわれないのね。
なら、私がその第1号になるわ」
お姉様は自信たっぷりにそう言った。
言葉どおりお姉様は、伯爵家の三男パイン様と結婚して、自分がリーフ家の当主となる。
「初めまして。カーラ。
これからよろしくね」
パインお義兄様が邸へやってきた時、玄関先で私の手を握りしめた。
灰色の髪に灰色の瞳。
お義兄様は少し気弱そうで、どことなく影の薄い感じがしたのだ。
「アナタは私と同類だわ。
これからきっとローラお姉様の引き立て役として生きるのね。
お可哀想に」
私はつい本音を口にして、お義兄様の手を握りかえした。
「あら。
初対面の人とは話せないカーラが、自分からパインに言葉をかけたわ。
珍しいこともあったもんね」
と、ローラお姉様は私の本音を冗談だと思い、笑いとばしていたわ。
激しい人見知り。
取り柄のない陰気な娘。
そんな評判の私は、どの縁談もうまくいかず、当時はすっかり結婚をあきらめていたのだ。
「美人でギフト持ちで、両親にも期待をかけられて育ったお姉さまになんか、私の気持ちなんかわかるもんですか」
ポツリと呟いて、唇をかみしめた時、やわらかな声が耳をかすめた。
「アナタにはローラにない魅力がある。
気にしないで」
と。
生まれて初めて男の人にささやかれた甘言に、頭は真っ白になった。
それからは、気がつけばいつもパインお義兄様を目でおっていたのだ。
「ローラは本当にやり手だね。
最近思うんだ。
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だから、私はカケにでたのだ。
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つもりだったけど、お義兄様にとっては私との事は過ちだったようだ。
それがわかるから。
ローラお姉様そっくりのアイリーンを見ると、一瞬で頭に血がのぼった。
アイリーンはまるでローラお姉様の亡霊だ。
だから、アイリーンをとことん痛めつけないといけない。
どうしても、ローラお姉様だけには負けたくなかった。
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