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5、ギフトをもたない娘1

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「ねえ。アイリーン。
 どうしてオマエみたいな娘に、公爵家から縁談がきたと思うわけ。
 ふつうに考えれば、ありえない話でしょ。
 貴族学園を中退して、社交界にもデビューしていないオマエが、見目麗しいアラン様に嫁ぐだなんてね」

 陰気な琥珀色の瞳に怒気をうかべたカーラが、ツカツカと足音をたてて私の方へ歩みよってくる。

 そりゃそうだけど。

 私だって、ちゃんと学園を卒業したかったし、フワフワのドレスを着て、社交界にもでてみたかったわ。

 それをそうさせなかったのは、カーラ叔母さん、じゃなくてカーラお義母様あなたでしょう。

 パインお父様は、カーラお義母様のいいなりで、邸での発言力はゼロに近くて、ちっとも力にならなかった。

「お父様はね。アイリーンの、ローラお姉様そっくりの派手な髪色を見ると吐き気がするらしいのよ」
とカーラは言ってたけど、まったく嘘にも聞こえない。

とても悲しいことだけど。

 唇をかんで黙っていると、ミーナの声が耳をかすめる。

「あの、くそババアめ。
 偉そうにしやがって。
 あんな女、ジャガイモにけつまずいて、床で頭をうって死んでしまえ」

「こら。ミーナ。静かにするのよ」

 手でミーナの口をふさいでから、カーラの質問に黙って首を左右にふった。

「わかりません」

「お母様。
 マリーンもその事は、不思議でしかたなかったのよ。
 どーして、こんな引きこもりでブスのお姉様に、アラン様との縁談がふってわいてきたのか」

「それはね。
 ひとえに、私の営業トークのおかげよ。
 実はね。
 社交界では、こんな噂がひそかにささやかかれていたのよ。
 公爵にかくれて、秘密の賭博に参加したマンチン公爵夫人は、大きな借金をかかえて困っている、とね。
 それでお母様はね。
 あるパーテイで出会ったマンチン公爵夫人のお耳にソッと扇をあてて、耳打ちしたのよ。
『奥様。わが家にとんでもない事がおこりましたの。
 実はあのアイリーンが、亡くなった母と同じギフト持ちだって事が最近わかりましたのよ。
 ということは、アイリーンはゴールデンローズを咲かせることができるのです。
 皆さんもご存じのように、ゴールデンローズは金のなる木ですわ。
 けど、リーフ家の跡取りはもうマリーンに決定しているでしょ。
 アイリーンを嫁にだすのは、金の卵を失うようなものですわ。
 とても残念でしかたありませんの。
 この事は、信頼している奥様だけに申し上げているのですよ。
 もし、この事実がもれれば、ゴールデンローズ目当ての縁談が殺到して大変な事になるでしょ。
私はアイリーンを本当に幸せにしてくれる方に、嫁がせたいのですよ」
とね。

「それって嘘っぱちじゃない」

 私とマリーンの声がそろう。


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