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2、嘘つきの妹

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「そうやってね。
 お姉様はいつも上手に嘘をつくのよ」

 そう言うと、マリーンは膝をおり背中を曲げて泣き崩れた。

「女優顔まけの名演技ね」

 私はかがみこんで、マリーンの背中を優しくなでながら、耳元にそっとささやいた。

 スカートの裾にたっぷりとフリルがあしらわれた、お揃いのレモンイエローのドレスをまとった姉と妹。

 姉妹の髪には、同じレモンイエローの大きなリボン。

 胸元の同じ位置には、やはりお揃いの銀色の星形のブローチが光っている。

 そんな姉妹は、どこからみても、とても親密に見えるだろうけど、私達の仲は最悪だった。

 それというのも、マリーンがいたるところで私の悪口を吹聴して、悪役令嬢にしたてあげているからだ。

「『女優顔まけの名演技』だなんてお姉様ひどすぎるわ」

 哀れな声をだすマリーンを見て、アラン様は眉を吊り上げると、私を力いっぱい突きとばした。

 私は身体のバランスを崩して、床につっぷしてしまう。

「アイリーン。
 よく聞くんだ。
 オレはマリーンと結婚する。
 か弱いマリーンをオマエから守れるのは、オレだけだからな」

 アラン様は私を指さしながら、冷ややかに言い放ったのだ。

 「アラン様あ、喜しいです」 

 ゾッとするような甘えた声をだして、マリーンはアラン様の胸に飛び込んでゆく。

 途中、勝ち誇った目でチラリと私を振りかえりると、口元に意地悪な微笑みをたたえてだ。

 「はい。わかりました」

 私は立ち上がると、スカートについたホコリを払いながら、感情の入ってない声をだす。

 そして、スカートの裾をひるがえして、そそくそとパーテイ会場をあとにした。

「アイリーン。
 あんなバカとの結婚、なくなってラッキーね。
 でも、やられっぱなしで、ミーナ、悔しいよう」

 胸元で、ミーナが深いため息をつく。

「まあ。見てらっしゃい。
 あの2人のことだもの。
 うまくいくわけないじゃない」

「そりゃそうだけど。
 アイリーンが、ボロ雑巾のように扱われているのを、ただ黙ってみているのは苦痛だよ」

「ミーナ。
 いつも私を励ましてくれてありがとう。 
 とりあえず、今はいそいで邸へ、戻りましょうね。
 夕食の準備に遅れそうだから」

 継母は私になんか、絶対に邸の馬車を使わせない。

 母から豊穣のギフトを譲り受けなかった私は、この家の厄介者でしかないから。

 マンチン公爵家の近くをウロウロして、なんとか辻馬車をひろうと、リーフ伯爵家へといそいだ。
 
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