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エオズ学園 1年R組 入学式編
父の死、変わった和田家
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ベランダに止まっている鳥がチュンチュン鳴き出した頃、俺は、ゆっくりと体を起こす。
現時刻5時28分。
今日は、入学式と言う事もあり、いつもより2分早く目が覚めた。
顔を洗い、歯を磨き、食卓へ向かった。
そう、今日はエオズ学園の入学式。
俺、和田伊尾屋はエオズ学園のトップクラスであるR組に入学する事になったのだ。
「おはよう」
「…………うん、おはよう」
いつも通り、母は俺と妹の分のご飯を作っていた。
「彩花はまだなのか?」
「……まだ寝ていると思うよ」
母に元気は無かった。
昨日、父の戦死電告を聴いたからだ。
サクラA隊隊長和田久古。俺の父。
彩花もこの事を知り、自分の部屋に昨日から引きこもったまま出てこない。
「そういえば、今日は高校の入学式だったわね」
「うん」
「……これ持っていきなさい。はい、お守り」
そこには、雷属性強化装備『雷鬼神のお守り』があった。
「え!これ20万円ぐらいするでしょ!?どうして……」
「いいのいいの。かっこいいじゃん~」
「駄目だよ!お金大丈夫な――」
「それにね――。
お父さんみたいになって欲しくないから」
ニコッと母は微笑んだ。
しかし、その微笑みには、いつも彼女が見せる『笑顔』は無く、外面だけの作り笑顔だった。
俺は雷鬼神のお守りを受け取ると、後ろのハンガーにかけているエオズの制服の胸ポケットの中にしまった。
「はい、ご飯」
そう言うと、母は魔法で台からテーブルへと皿を次々と送り、いつの間にか一食のご飯へと変わっていた。
「……いただきます」
俺はご飯と煮物を交互に食べ、時々好物であるオムレツやベーコンをちょびちょび食べた。
「彩花……大丈夫なのかしら」
「………ああ見えても全国模試とか全国大会とかはいつも優勝してるやつだ。俺と違って根性が強い。大丈夫だろ」
「そう………」
最後にデザートである、チョコレートを一口で食べて、お口直し。
『カカオ三六%』と甘さはそこそこあるはずのに、何故か無味どころか塩気のある味がした。
「ごちそうさま」
「そこに置いておきなさい」
洗い物をしている母が、俺にそう告げたあと、後ろにハンガーにかけてある制服をとって、二階に戻り、学校の支度をした。
灰色にチェックがはいった、ジャケットとズボン。黒のベルトにネクタイ。ネクタイは赤色で薄っすらと白色のダイヤの模様が入っている。
そして、今回の醍醐味は胸ポケットとは逆の胸元に付ける、バッジだ。これはR組の証拠となる物で、色はゴールド。ちなみに、下のクラスであるH組はシルバー、S組はブロンズだ。
俺はその制服に着替え、鞄に筆記具等をいれ、玄関のドアまで移動し、母に寮生活の注意事項を叩き込まれた。
「今日も雷鳴堂いくの?」
「伊予さんにもちゃんと挨拶しとかなきゃなんないし
朝の目覚まし感覚で行ってくるよ」
「そう。おじさんによろしく言っといてね」
俺は家を出る前に玄関から見える範囲で部屋をみわたした。
和田家は変わってしまった。
父さんは死んでしまい、彩花は引きこもって、母は生きる気力を失ったような顔をしていた。
「………父さんも命懸けで闘った。俺も、頑張るから……だから……その……なんだ?」
「伊尾屋………ふふ。そうね。お母さん頑張るから!
伊尾屋も頑張って、ね!」
「………おう」
俺はそう言い、鍵を開けた。
「じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
母は笑顔でそう言った。
現時刻5時28分。
今日は、入学式と言う事もあり、いつもより2分早く目が覚めた。
顔を洗い、歯を磨き、食卓へ向かった。
そう、今日はエオズ学園の入学式。
俺、和田伊尾屋はエオズ学園のトップクラスであるR組に入学する事になったのだ。
「おはよう」
「…………うん、おはよう」
いつも通り、母は俺と妹の分のご飯を作っていた。
「彩花はまだなのか?」
「……まだ寝ていると思うよ」
母に元気は無かった。
昨日、父の戦死電告を聴いたからだ。
サクラA隊隊長和田久古。俺の父。
彩花もこの事を知り、自分の部屋に昨日から引きこもったまま出てこない。
「そういえば、今日は高校の入学式だったわね」
「うん」
「……これ持っていきなさい。はい、お守り」
そこには、雷属性強化装備『雷鬼神のお守り』があった。
「え!これ20万円ぐらいするでしょ!?どうして……」
「いいのいいの。かっこいいじゃん~」
「駄目だよ!お金大丈夫な――」
「それにね――。
お父さんみたいになって欲しくないから」
ニコッと母は微笑んだ。
しかし、その微笑みには、いつも彼女が見せる『笑顔』は無く、外面だけの作り笑顔だった。
俺は雷鬼神のお守りを受け取ると、後ろのハンガーにかけているエオズの制服の胸ポケットの中にしまった。
「はい、ご飯」
そう言うと、母は魔法で台からテーブルへと皿を次々と送り、いつの間にか一食のご飯へと変わっていた。
「……いただきます」
俺はご飯と煮物を交互に食べ、時々好物であるオムレツやベーコンをちょびちょび食べた。
「彩花……大丈夫なのかしら」
「………ああ見えても全国模試とか全国大会とかはいつも優勝してるやつだ。俺と違って根性が強い。大丈夫だろ」
「そう………」
最後にデザートである、チョコレートを一口で食べて、お口直し。
『カカオ三六%』と甘さはそこそこあるはずのに、何故か無味どころか塩気のある味がした。
「ごちそうさま」
「そこに置いておきなさい」
洗い物をしている母が、俺にそう告げたあと、後ろにハンガーにかけてある制服をとって、二階に戻り、学校の支度をした。
灰色にチェックがはいった、ジャケットとズボン。黒のベルトにネクタイ。ネクタイは赤色で薄っすらと白色のダイヤの模様が入っている。
そして、今回の醍醐味は胸ポケットとは逆の胸元に付ける、バッジだ。これはR組の証拠となる物で、色はゴールド。ちなみに、下のクラスであるH組はシルバー、S組はブロンズだ。
俺はその制服に着替え、鞄に筆記具等をいれ、玄関のドアまで移動し、母に寮生活の注意事項を叩き込まれた。
「今日も雷鳴堂いくの?」
「伊予さんにもちゃんと挨拶しとかなきゃなんないし
朝の目覚まし感覚で行ってくるよ」
「そう。おじさんによろしく言っといてね」
俺は家を出る前に玄関から見える範囲で部屋をみわたした。
和田家は変わってしまった。
父さんは死んでしまい、彩花は引きこもって、母は生きる気力を失ったような顔をしていた。
「………父さんも命懸けで闘った。俺も、頑張るから……だから……その……なんだ?」
「伊尾屋………ふふ。そうね。お母さん頑張るから!
伊尾屋も頑張って、ね!」
「………おう」
俺はそう言い、鍵を開けた。
「じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
母は笑顔でそう言った。
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