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第2章 その女、現状を把握するにつき
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しおりを挟む探偵と聞けば、大体の人がイギリスのシャーロック・ホームズくらいは知っているのでは無いだろうか。
もちろん、探偵ならエルキュール・ポワロと答える人もいれば、エラリー・クイーンが好きだという人もいるだろう。
ここで、日本人として自国の名探偵を挙げるなら……明智小五郎や金田一耕助に始まり、近年であれば漫画・アニメでおなじみの江戸川コナンや金田一一。
ちなみに私が好きなのは忘却探偵・掟上今日子、女性だし…とまあ、以上は私の読書歴の中から拾いあげた一例だが、他にも多数描かれてきたことだろう。他の国もしかり。
ここで、アメリカの探偵に焦点を当ててみよう。
先ほどもあげたエラリー・クイーンは世界的に有名な探偵の1人だし、ミステリーを読まない人でも名前くらいは聞いたことがあるのでは無いだろうか。しかし、当然だがアメリカの探偵が彼1人に止まるわけでは無い。
私は中毒とも言えるほどの物語好きで、創作と名のつくものならそれこそ文学作品から始まりラノベや漫画、WEB小説から二次創作まで読むし、海外の本もよく読む。最近読んだアメリカのミステリーは、『バーニー・ローデンバー(彼は“泥棒探偵”、とでもいうべきか)』シリーズである。買い集めて一気読みした。
もちろん、それは日本語に翻訳されていたから読めたのである。
…しつこいようだが、私の英語力は底辺で、推理小説を原文のまま読むなんてことはできない(辞書を引きながらなんとか読み終えたとしても、その頃には1つ年をとっている自信がある)。つまり、アメリカではメジャーとされる探偵シリーズも、日本語に翻訳されていなければ私は読むことはできないし、それ故に知らない名作も数多あることだろう。
で、『探偵ラディ』シリーズも、そんな翻訳されていない米国のメジャーな探偵物の1つなのだが、これは2010年にハリウッド映画化されたことで世界的に有名になった。
舞台は1950年代から70年代のアメリカである。
映画ではまだ半分も話が進んでいないのだが、私は大体の物語の流れを把握している。というか、このシリーズに関しては映画化される前から知っていた。
なぜなら、英語に堪能なおじいちゃんそもそも原作小説のファンだったのである。それも、オタクと称していいレベルで。もちろん、生前は映画も一緒に観に行ったし。
で、この探偵ラディシリーズの登場人物にして主人公のラディだが、彼は初めからいわゆる私立探偵として登場するわけではない。
彼は、刑事だった父親を目の前で殺されて、その仇を取る為に自らも刑事になり活躍していた、という前歴を持つ。
母親を早くに亡くし、一人っ子であったラディにとって、喧嘩は絶えなくともたった1人の家族であった父親。
彼の死がキッカケで、ラディはそれまでの自由奔放・放埓三昧の生活に別れを告げ、怒涛の勢いで刑事になり、日々凶悪犯罪と戦いつつ、父親を死に至らしめた犯人を追い詰めていくことになるのだ。
で、その件の父親というのが、
『ダリウス・ミラーだ。そこにいるデカイのは私の倅だ』
……今、私の目の前にいる。
1950年5月某日。ラディは大学を卒業したその日に父親と将来のことで大ゲンカをし、家を出て友達の元を渡り歩いていた。
そして、運命の夜。雨の中、酔っ払った勢いで家路を辿っていたラディは、路地裏で父親が何者かに棍棒で殴り殺されるところを目の当たりにするはずだった。
『今こうして私が生きているのは、君のおかげだ。…可哀想に、女の子が顔に傷まで作って。君は日本人だというが、本当かね?ああ、心配しないでくれ、君は私の恩人だ。君の身寄りがないなら、私のところへ来るといい。…おい、ラディ、どうせ暇だろう、“あの部屋”を片付けて、この子がすぐに住める状態にしておくんだ!わかってるな?…ところで、何か欲しいものはないか?私にできることなら何でも言ってくれ』
拝啓、おじいちゃんへ。どうやら私は、あなたの愛した物語の根本とも言える流れを変えてしまったようです。
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