15 / 25
桜
しおりを挟む
「春だねぇ」
「春ですね」
由奈さんが桜の木を見てつぶやいた。ちなみに、桜の木はこの家の庭に生えているやつだ。やっぱりこの家はすごい。
「あったかくなってきたね」
心地よい風が当たりを吹き抜けた。
「そうですね」
相槌を打つ。最近の最高気温は20度を超えている。寒い冬は過ぎ、暖かい季節へ変わりゆく日々だ。天気予報では花粉情報が流れている。
「いい天気だし、なんか眠くなってくるわね」
ちなみに今私たちは庭の掃除中だ。
「お花見とかできたら楽しそうですね~」
私はなんとなくそんなことを口にした。この家の桜は立派でとても綺麗だ。お弁当とか作ってレジャーシートでも引いたらピクニック気分になれるんじゃないかな。すると由奈さんはパッと顔を綻ばせて言った。
「いいねそれ!名案だわ!」
ニコッと笑う由奈さん。まさかそんな賛同されるとは思っていなかった私は呆気に取られながら彼女を見つめた。
「美味しいお弁当用意して、可愛いレジャーシートも必要よね。よし、決めた。来週の休日はみんなでお花見しましょ」
妙に乗り気な由奈さんを見て私も微笑んだ。お花見は家族と毎年やっていた。近くに大きな公園があったから、そこの桜を見るのが楽しみだった。桜の木の下で開くお弁当は特別おいしかった。ご飯の後はお姉ちゃんと一緒に桜の花びらを集めたっけな。全部過去形になってしまったそんな思い出たちを、私はぎゅっと抱きしめた。
「お弁当の中身、なんかリクエストある?」
由奈さんに尋ねられ、私は少し考える。すぐに食べたいものは浮かんだ。
「卵焼き。卵焼きが食べたいです。」
「卵焼き?うん。わかった。」
卵焼きはお母さんがお弁当に必ず入れていたものだ。毎回少しずつ味が変わっていたり具が入っていたり。バリエーションがあって毎回楽しみにお弁当を開いていたものだった。だから、由奈さんが作る卵焼きも食べて見たいと思ったのだ。
「でも、なんで卵焼き?もっと、なんかこう、唐揚げとかエビフライとか、そういうのじゃないの?」
はい、と私は迷わず頷いた。
「お母さんがよく作ってくれて、大好きだったんです。」
そういうと、由奈さんは。
「...そうなんだ。」
そういった顔が少しだけ泣きそうに見えたのは気のせいだろうか。はっ、もしかしてお母さんの話するのって失礼だったのかな。由奈さんとお母さんを比べるみたいになっちゃった?そういうつもりじゃなかったんだけど...もしそうだったらすごい申し訳ないな。でもそんなこと聞いたらそれこそ失礼だろうし。そんなことを悶々と考えていると由奈さんは、
「じゃあ、卵焼きは絶対入れるね。」
と、輝かしいぐらいの笑みを浮かべた。あれ、さっきのはやっぱり気のせいだったかな。それとも気を遣ってこんなに笑ってくれてるの?わからない。わからないけど、今私にできることは。
「ありがとうございます!』
満面の笑みを由奈さんに返すことだ。
「さてと、そしたらレミたちにもこの計画を伝えなきゃね。」
うふふ、と嬉しそうな笑みを浮かべて由奈さんは箒を動かしていた手を止めた。
来週か、楽しみだな。
「春ですね」
由奈さんが桜の木を見てつぶやいた。ちなみに、桜の木はこの家の庭に生えているやつだ。やっぱりこの家はすごい。
「あったかくなってきたね」
心地よい風が当たりを吹き抜けた。
「そうですね」
相槌を打つ。最近の最高気温は20度を超えている。寒い冬は過ぎ、暖かい季節へ変わりゆく日々だ。天気予報では花粉情報が流れている。
「いい天気だし、なんか眠くなってくるわね」
ちなみに今私たちは庭の掃除中だ。
「お花見とかできたら楽しそうですね~」
私はなんとなくそんなことを口にした。この家の桜は立派でとても綺麗だ。お弁当とか作ってレジャーシートでも引いたらピクニック気分になれるんじゃないかな。すると由奈さんはパッと顔を綻ばせて言った。
「いいねそれ!名案だわ!」
ニコッと笑う由奈さん。まさかそんな賛同されるとは思っていなかった私は呆気に取られながら彼女を見つめた。
「美味しいお弁当用意して、可愛いレジャーシートも必要よね。よし、決めた。来週の休日はみんなでお花見しましょ」
妙に乗り気な由奈さんを見て私も微笑んだ。お花見は家族と毎年やっていた。近くに大きな公園があったから、そこの桜を見るのが楽しみだった。桜の木の下で開くお弁当は特別おいしかった。ご飯の後はお姉ちゃんと一緒に桜の花びらを集めたっけな。全部過去形になってしまったそんな思い出たちを、私はぎゅっと抱きしめた。
「お弁当の中身、なんかリクエストある?」
由奈さんに尋ねられ、私は少し考える。すぐに食べたいものは浮かんだ。
「卵焼き。卵焼きが食べたいです。」
「卵焼き?うん。わかった。」
卵焼きはお母さんがお弁当に必ず入れていたものだ。毎回少しずつ味が変わっていたり具が入っていたり。バリエーションがあって毎回楽しみにお弁当を開いていたものだった。だから、由奈さんが作る卵焼きも食べて見たいと思ったのだ。
「でも、なんで卵焼き?もっと、なんかこう、唐揚げとかエビフライとか、そういうのじゃないの?」
はい、と私は迷わず頷いた。
「お母さんがよく作ってくれて、大好きだったんです。」
そういうと、由奈さんは。
「...そうなんだ。」
そういった顔が少しだけ泣きそうに見えたのは気のせいだろうか。はっ、もしかしてお母さんの話するのって失礼だったのかな。由奈さんとお母さんを比べるみたいになっちゃった?そういうつもりじゃなかったんだけど...もしそうだったらすごい申し訳ないな。でもそんなこと聞いたらそれこそ失礼だろうし。そんなことを悶々と考えていると由奈さんは、
「じゃあ、卵焼きは絶対入れるね。」
と、輝かしいぐらいの笑みを浮かべた。あれ、さっきのはやっぱり気のせいだったかな。それとも気を遣ってこんなに笑ってくれてるの?わからない。わからないけど、今私にできることは。
「ありがとうございます!』
満面の笑みを由奈さんに返すことだ。
「さてと、そしたらレミたちにもこの計画を伝えなきゃね。」
うふふ、と嬉しそうな笑みを浮かべて由奈さんは箒を動かしていた手を止めた。
来週か、楽しみだな。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
アルファポリスで閲覧者数を増やすための豆プラン
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
エッセイ・ノンフィクション
私がアルファポリスでの活動から得た『誰にでも出来る地道なPV獲得術』を、豆知識的な感じで書いていきます。
※思いついた時に書くので、不定期更新です。
転生したら攻略対象者の母親(王妃)でした
黒木寿々
恋愛
我儘な公爵令嬢リザベル・フォリス、7歳。弟が産まれたことで前世の記憶を思い出したけど、この世界って前世でハマっていた乙女ゲームの世界!?私の未来って物凄く性悪な王妃様じゃん!
しかもゲーム本編が始まる時点ですでに亡くなってるし・・・。
ゲームの中ではことごとく酷いことをしていたみたいだけど、私はそんなことしない!
清く正しい心で、未来の息子(攻略対象者)を愛でまくるぞ!!!
*R15は保険です。小説家になろう様でも掲載しています。
おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)
daisysacky
ファンタジー
現代の日本にやってきたエラは…元の世界に戻る機会があったものの…新たな暮らしを始めます。
そうして新たに、魔法使いが来て、次のチャンスは~
と言い出しますが…
さて!2人の少女の運命は?
セリフ&声劇台本
まぐろ首領
ライト文芸
自作のセリフ、声劇台本を集めました。
LIVE配信の際や、ボイス投稿の際にお使い下さい。
また、投稿する際に使われる方は、詳細などに
【台本(セリフ):詩乃冬姫】と記入していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
また、コメントに一言下されば喜びます。
随時更新していきます。
リクエスト、改善してほしいことなどありましたらコメントよろしくお願いします。
また、コメントは返信できない場合がございますのでご了承ください。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
私と彼女の逃避行
といろ
ライト文芸
「わたしが死にたくないと思うのは、きっとわがままだからなの」
JK二人が生きることから逃げるために逃避行する話です。お互いのこととか、幸せとか、生きることとか、「普通の生活」とか、いろいろ考えながら逃げます。
二人の距離感と空気感をお楽しみください。
テレワーク探偵観察日記ー優里先輩と僕の220日ー
凍龍
ライト文芸
部員と実績不足を理由に廃部になった写真部復活の実績作りのため、生徒会の下請け仕事や人づてに持ち込まれる校内外のやっかいごとを引き受けて学校中を駆け回る僕、四持《よもつ》太陽。そんな僕がある日出会ったのは、なぜかモデルガンを構えたヤベー女、比楽坂優里先輩だった。
学内外で発生するやっかいな事件の現場でたびたび顔を合わせるうち、僕は彼女が使いこなす大量のガジェットに加え、並外れた知識と推理力、そして毒舌に隠された優しい心根に次第に惹かれるようになる。
だが、彼女は間違いなく当校の生徒でありながら、どのクラスでも彼女の姿を見ることはない。
ミステリアスな彼女の正体、そして彼女が抱える闇が次第にあきらかになり、同時に僕と彼女との距離も次第に近づいていく。
だが、そんな日常がいつまでも続くかと思われたある日、彼女は突然失踪し、謎をはらんだメールが送られてくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる