桑の実色の口紅

名乃坂

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桑の実色の口紅

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「この家とももうすぐお別れか……」

私は家のものをダンボールに詰めながら独り言つ。

四年近く住んだ家。
引っ越した時は、初めての一人暮らしに何かと不安を感じたけど、離れる今となってはどこか寂しい。

家のものを整理していると、棚の奥底にしまっていった箱が姿を現す。

彼との思い出が詰まった箱。
私はこの箱を六年以上開けられずにいた。
一人暮らしを始める際も、なんとなくこの箱を持ってきたはいいけど、大学在学中一度も開けることはなかった。
箱を開けたら、彼のことを思い出しそうで……。

私はこれから社会人として新たなスタートを切る。
今はまさに、この箱を開けるべきタイミングではないか。

私は深呼吸をして埃被った箱に手をかけた。


彼と出会ったのは、今から六年以上前、私がまだ高校二年生の頃だった。
私はいつも窓際で一人で本を読んでいる彼のことがずっと前から気になっていた。
彼はどこか厭世的で浮世離れしていたし、俗っぽいことを言えば、顔だってかっこよかった。
今から思うと、私は彼に異性として惹かれるところがあったんだと思う。
それまでも何度か声をかけようとしたけど、勇気が出ず、なかなか声がかけられなかった。
その日は声をかけられたのは、彼がヘッセの詩集を読んでいたから。たったそれだけの理由だった。

「ねえ……田中くんってヘッセ読むの?」

彼はひどく驚いた表情をした。

「えっ!?ああ…。そうだな」

初めてまともに会話したかも。
私は嬉しくなった。

「私ね、本が好きでね、最近ヘッセのデミアン読んだんだ。ヘッセの作品っていいよね」

田中くんは笑った。

「それは読んだことないな。てか、俺なんとなくかっこいいから難しい本読んでるだけで、内容よくわかってないし」

意外。田中くんが本を読む姿は、すごく板についていたから、そんな理由だなんて微塵も思わなかった。

「なにそれ?変なの。まあ私も気持ちわかるよ」

私達は笑い合った。

その日、私たちは一緒に下校して、二人で芥川とかニーチェの話をした。
別にお互い文学や哲学のことがよく分かるわけではなかったけど、知的な話をしている感じが、周りのみんなよりも少し大人になったみたいで楽しかった。

「こんなに気が合うならさ、もっと前からお前と話しておけば良かったよ。あーあ、人生無駄にした」

田中くんは投げやりな言い方をしてはいたけど、笑顔だった。

「人生無駄にしたって大袈裟過ぎない?私たちまだ五分の一くらいしか生きてないよ?」
「いや、高校生活はたった三年間だろ?それにみんながみんな八十年くらい生きるわけじゃない。やっぱり無駄にしたって気がするな」

私なんかと話したことをそこまで大袈裟に思わなくても……。
まあ、でも正直嬉しい。

「そういえばさ、田中くんって下の名前って何て言うの?」

クラスメイトなのに、下の名前すら知らなかったことに気付いた。

「お前、同じクラスなのに覚えてないなんて、薄情な奴だな~。まあ、俺あんまり下の名前名乗らないようにしてるから仕方ないか」
「ごめんごめん、あんまり他人に興味ないからさ。で、何て言うの?」

田中くんは少し躊躇っているようだった。

「いいか?絶対引くなよ?」
「うん、わかった。キラキラネームなんて今時珍しくないし」

田中くんは少し間を置いてから言った。

「煌めく夜って書いて煌夜。……あ~!恥ずかし~!」

私は何をそんなに恥ずかしがるのか分からなかった。

「何で?綺麗な名前じゃない?綺麗な夜の情景が浮かんできて良いと思うよ」

田中くんは信じられないといった表情で言った。

「そうか?ホストみたいな名前だねってよく言われるけど?しかも苗字は田中なのに、この下の名前ってださくね?この名前なら苗字は桐生とかが良かったな~」

桐生煌夜か……。たしかにそっちの方が遥かにしっくりくる。

「たしかに言われてみればホストみたいな名前だね。まあいいんじゃない?田中くんは茶髪だし、ちょっとホストっぽいし?」

私はかっこいいと褒めたつもりで言ったのに、田中くんは心外だという顔をした。

「俺のこの髪は地毛!チャラくないです!」

地毛だったのか……。言われてみれば生徒指導に引っかかってないってことはそうか。

「ホストってモテるし、別に良くない?悪い意味で言ってないよ」

そうい言うと、田中くんは複雑な顔をした。

「ホストなんて女性を食い物にしてる悪い奴らばっかだよ。俺はああはなりたくないね……。てかお前も絶対将来引っかかるなよ?」

やけに真剣なトーンだなと思った。

「大丈夫。私チャラい人苦手だし」

私は自他共に認める陰キャだ。
ホストの世界なんて無縁すぎる。

「そうやって油断するなよ。自分は大丈夫って思ってる奴が一番危ないんだからな!」

そう言う田中くんは少し世話焼きなお母さんみたいだった。

そんな話をしていると駅に辿り着いた。

「じゃあ俺、反対の電車に乗るから、ここで別れよう。最後に一言言っておくけど、俺がせっかく恥ずかしい思いをして名乗ったんだから、これからは煌夜って呼べよ?田中くんは余所余所しすぎる」
「わかった。じゃあ、また明日ね」

これが私達が初めてまともに話した日のことだった。

田中くん改め、煌夜と別れた後、私は帰宅した。

家に帰るといつも、お母さんからお父さんの愚痴を聞かされた。

「今日もお父さんに怒られた……。お父さんはね、いつも私の努力が足りないって私を責めるのよ……。でも私、ちゃんとあなたの面倒だって見てるし、毎日美味しいご飯を作って、バイトもして、お父さんの仕事の愚痴だって聞いてる。こんなに頑張ってるのに何で誰も分かってくれないんだろう……?ねえ……お母さんは何も悪くないよね?」

この時間、早く終わらないかな?疲れる。

「うん、お母さんは何も悪くないよ。私お母さんにいつも感謝してる」

私の返事は心がこもってなかったと思う。
頭の中では、さっきの楽しかった煌夜との会話を思い出していた。

初めてまともに話したあの日以来、私と煌夜はよく話すようになった。
本当に煌夜の言う通り、何で今まで喋ってなかったんだろうってくらい私達は気が合う。

家のこと、勉強のこと、“まともに”生きること。
こうした学生がこなすべき課題をクリアするだけの退屈だった私の日々が色付いたようだった。

煌夜は私の稚拙な哲学の話に付き合ってくれたし、私の家庭の悩みを突き放さずに聞いてくれた。
私は人生で初めて本音で語り合える友を得たのだ。

それだけではなく、煌夜は色々な遊びも知っていて、煌夜と遊ぶのは刺激的だった。
私は塾がない日にはよく煌夜と遊んだ。
煌夜はよく私にご飯を奢ってくれた。
同じ高校生なのに、どうして煌夜はこんなにお金があるんだろう?
気になって煌夜に聞いてみたけど、
「俺バイトしてるから」
と答えただけだった。
何のバイトをしているのかは、聞いてもはぐらかされる。
まあ、うちの学校はバイト禁止だから、何かの拍子にバレたら困るだろうし、などと私はあまり深く考えていなかった。
ただ煌夜と過ごす日々が楽しくて、たぶん私は煌夜に恋をしていた。

そんな楽しい日々に不穏な影が見え始めたのは、それから一ヶ月ほどだった。
それは煌夜の”バイト”が原因だった。

いつも通り私が教室に入ると、教室内がガヤガヤとうるさかった。
何事かと思って、みんなが注目している黒板の方を見た。
それは不可抗力だった。
私の目に映ったのは、太ったけばけばしいおばさんと煌夜が夜の街でいちゃついている写真だった。
それも、煌夜は複数人とそういう関係にあるようだった。
クラスのみんなが眉をひそめて口々に言う。

「気持ち悪い」
「よくあんなババア抱けるな」
「こんな奴退学にしろ」

私は頭が真っ白になってどうしたらいいか分からなかった。 
私が煌夜と仲が良いからか、私の顔色をチラチラ伺う人もいた。

煌夜、これは一体どういうこと……?

そんな状況はつゆ知らずな煌夜がドアを開けて教室に入ってきた。

みんな静まり返った。
誰も煌夜と目を合わせようとしない。
煌夜は黒板とクラスメートを見比べて、全てを悟ったようだった。
そのまま無言で写真を剥がす。
みんなもどうしたら良いか分からないようだったけど、一人の男子が言葉を発した。

「お前……気持ち悪いな……」

誰かが先陣を切ったことで安心したのか、他の人たちも口を揃えて言い出す。

「気持ち悪い」
「汚い」
「近寄らないで」

煌夜はそれをただ黙って見つめていた。

その後はヒソヒソ噂をしている様子はあったけど、大きなことは起こらずに一日が過ぎた。

帰り道、煌夜が人目を憚って私に話しかけてきた。

「俺のこと……軽蔑したよな……?」

もちろん、私もあの写真を見て何も思わなかったわけではない。
私は性的なことに潔癖に生きてきたから。

でも今まで煌夜と仲良くしてきたし、こんな泣きそうな顔を見ていたら、煌夜のことを嫌いにはなれなかった。
あの写真には何か理由があるはずなんだ。

「理由によるかな……としか言えない。あの写真はどういうことなの……?私を信じて教えてくれたら嬉しい……」

煌夜は目をキョロキョロと動かしたけど、それから決心したらしく口を開いた。

「俺の家さ、金が無いんだ……。父さんは蒸発したし、母さんは夜の仕事で稼いでるけど、ホストに貢いだり、酒代に使ったりして、生活費なんて全然無い。だからこうやって、中学の頃から、金持ちのお姉さん達に付き合う代わりに金をもらってる。いわゆるママ活ってやつかな……」

私はその時、煌夜のバイトが何なのかを悟った。
目の前の同い年の男の子が、こんなに酷い境遇にいるという事実が信じられなかった。信じたくなかった。

「俺だって最初からこんなことしようと思ってたわけじゃ無いし、身体を売るなんて考えたこともなかった。でもな……中学生が働けるところなんて限られてるし、割りの良いバイトしないと生活費が足りなかった。それに…………」

煌夜は言い淀んだ。
私は「続けて」と促した。
煌夜は迷っていたようだけど、また口を開いた。

「俺さ……母さんの大好きだったホスト、つまり俺の父さんに似てるらしいんだけどさ……酔った母さんに、父さんの代わりだって無理やりセックスさせられた……。まだ俺小六だったんだぜ?自分の息子にそんな感情を抱くなんておかしいよな?その頃はそういう行為の意味だってよく分かってなかった……。それから母さんが酔う度にそういうことさせられて、本当に気が狂いそうだった……。最初のうちは毎回吐いたし、自分がすごく汚いものになったような気がした。でも、その辛さにも麻痺していって、血の繋がった母親とやったんだからもう誰とやっても一緒だって、この商売を始めた。家は金なくて腹は空くし、学校に行くにしたって必要なものも買えなかったからな……」

私は何も言えなかった。
女の顔で息子に迫る母親。想像するだけで、あまりのおぞましさに吐き気がした。

「煌夜って名前もさ、蒸発した父さんの源氏名から取ったんだよ。最初から俺を父さんの代わりにする気だったんだろうな」

だから初めて下の名前を聞いた時、名乗るのを躊躇ったのか。
彼にとって名前は呪いの一種なのだ。
彼のことを思うと涙が出た。

「ごめんな……。女の子の前でする話じゃなかったな。まあ、そういうことだから、もう俺には関わるなよ……。じゃあな……」

立ち去る彼を見送ることしか出来なかった。

次の日から、クラスでは煌夜に対するいじめが起こり始めた。
みんな評定を気にしてか、あからさまな暴力とかはなかったけど、煌夜の持ち物はゴミ箱に捨てられ、煌夜の写真は侮蔑の言葉と一緒にクラスラインに載せられた。

一番酷いいじめだと、体液がついたボクサーパンツと、五十代の女性教師に向けたラブレターを煌夜の机の中に入れて、ホームルーム中に煌夜の机をわざとひっくり返すというものもあった。
そんな事態に青ざめてわなわな震えて煌夜を呼び出す担任を見て、笑う人もいれば、目を背ける人もいた。
煌夜は自分はそんなことをしていないと弁明したけど、それは聞き入れられなかった。
クラスのみんなの様子を見てたんだから、先生だって、本当は煌夜のせいじゃないことは分かっているだろう。
でも煌夜のせいにした方が楽だから、煌夜のせいにするんだ。
煌夜の親なら文句を言ってこないから。
ただそれだけだろう。
大人の考えることって本当に汚い。

私は次の日、煌夜のことを慰めようとしたけど、私はあの日以来、煌夜に話しかけても気付かないフリをされていた。
メッセージも未読のままだ。
たぶん煌夜は、私がこれ以上煌夜に関わらないようにって、私を守ろうとしているんだと思う。
でも私は、煌夜がいじめられている時、煌夜のことを擁護し続けた。
そうしていたら、私もみんなから無視されるようになった。
陰口だって叩かれることもある。
本当に下らない。
なんて醜い人間達なんだろう?
そんな醜悪な人間達に大切な煌夜が踏みにじられるのが許せなかった。

友人の絵美はそんな私を見かねてこう言った。

「あんた、もう田中とは縁を切りなよ」

私は絵美がそんな他のクラスメイトのようなことを言うなんてと、ショックを受けた。

「なんで……?煌夜にも色々な事情があるんだよ……。むしろいじめてる方がおかしいと思わないの?」

絵美は苦い顔をしながら言った。

「そりゃ……私だって、今のクラスはおかしいと思ってるよ……。大半は田中のこと、引いてはいても、いじめたいわけではないと思うし……こんな状況が正しいなんてきっと思ってない。でもさ、それを態度に出したら、私達だっていじめの標的にされるかもしれないよ?現にあんたも無視されたり陰口叩かれたりしてんじゃん。たしかに田中には何かしらの事情があるんだろうとは思うし、同情はする。でも、あいつは私達とは別世界の人間じゃん?普通に生きてる私達が関わる必要はないよ。ああいうのは大人が何とかするべきでしょ?」

絵美の言うことは正論なのかもしれない。
でも私はそんな風に割り切れない。

「でも大人が何とかしなかったから、今こんなことになってるんでしょ?やっぱり私は見過ごすことはできない」 

そう言うと、絵美は困った顔をした。

「そうは言うけどさ……大人が何とかできなかった問題を、子供のあんたが解決できるの?それに、あんたがこのまま田中を庇うなら、あんたの友達の私だっていじめられるかもしれないんだよ?私、あんたがいじめられてるからって、あんたとは縁を切れない。だから私を助けると思って、あんたもこんな危ない話からは抜けてよ……」

絵美の不安は分かる。
それでも逃げ出さずに、こんな言いにくい助言をしてくれる絵美はきっと私にとって良い友達なのだろう。
でも私は絵美の言葉が受け入れられなかった。

「そう……。絵美は私がいじめられても離れたくないって思ってるんだよね?それは私の煌夜に対する気持ちと一緒。でも絵美はいじめられてる私に巻き込まれるのが怖いんだよね?じゃあ、私から離れたら?私は絵美と違って、いじめられる覚悟だってあるから」

絵美は泣きそうな顔をした。
こんな酷い事を言うつもりじゃなかった。
でも私は謝れなかった。
ここまで言ってしまったら引き返せなかった。

次の日の帰り道、私は人気がない駅の裏側で煌夜に話しかけた。

「煌夜!」

煌夜は驚いたように振り返った。

「私は煌夜とちゃんと話がしたい。お願いだから私の話を聞いて」

そう言うと、煌夜は立ち止まった。

「どうした……?」

私は伝えたいことを整理するために深呼吸をした。

「あのね、私やっぱり煌夜と離れたくない。煌夜は私のことを思って突き放してるってのは分かってる。でも私は、別に煌夜と仲良くできるなら他の人に嫌われたっていい。だからこれからも仲良くして欲しい」

煌夜は驚いたような顔をして、それから少しの間考えているようだった。

「分かった……じゃあ、お前の定期券貸して」

何で定期券?私は疑問に思ったけど、煌夜に定期券を差し出した。

「ありがとう。ちょっと待ってて」

煌夜はそう言うと、きょとんとする私を放って駅に向かって走り出した。
数分後、私のところに戻った煌夜は、私に定期券を差し出した。

「今お前の定期券、上限近くまでチャージしてきた。やっぱりお前のこと考えると、学校で話すのはやめた方が良いと思う。でもみんなが来ないような遠いところなら大丈夫だろう?遠くで一緒に遊ぼうぜ」

思わず涙が出た。
煌夜も私と話したいと思ってくれていたのだ。
胸がいっぱいになった。

「ありがとう……!」

ハッと気づいた。
感激している場合じゃない。
私の定期券の残額的に、おそらく煌夜は二万弱チャージしてくれたはずだ。

「そういえば、お金……。どうしたらいい?私手元には三千円しかなくて……。いつまでに返せばいい?」

混乱する私に煌夜は言った。

「返さなくていいよ。俺が勝手にやったことだし。それに俺稼いでるからさ!」

煌夜は笑った。
久しぶりにこんな笑顔を見た気がする。

「でも…」
まごつく私に煌夜は言った。
「じゃあ、その分お前は貯金をしておいて。そしてその定期券の残額が無くなったらまたチャージしてよ。そしたらいっぱい遊べるだろ?」 

私は笑顔で思い切り頷いた。

それから私達は度々遠いところで遊んだ。
やっぱり煌夜は私と学校では話そうとはしなかったけど、こうしてたまに会えるから寂しくはなかった。
相変わらず学校では、煌夜はいじめられていたし、私も無視されていたけど、それでもこの時間があるから耐えられた。
私は煌夜と遊ぶために、時々塾を休むようになった。
そしてそれは親にバレた。

「あんた……最近塾サボってるんでしょ……?」

私はヒヤリとした。

「いや……ちゃんと行ってるよ……?」

咄嗟に嘘をついてしまった。
それがお母さんの逆鱗に触れたようだ。

「誤魔化さないで頂戴!」

お母さんが思い切り机を叩いた。

「塾の先生から最近ずっと来てないって連絡があったわよ!成績だってどんどん下がってるじゃない!何やってんのよ!ねえ、お母さん、あんたのために今までどれだけお金と時間を使ってきたと思う!?お母さんはね、あんたのために睡眠時間削って、やりたくないレジ打ちなんかして……ずっと命削ってきたのよ!?あんたはそれに応えようって気はないの!?お母さんのこと、そんなにどうでもいいのね……!お母さんが死んだっていいと思ってるんでしょ!」

私は慌てた。

「そんなこと思ってないよ!ただ、今しかできないことがあって……。だから……その……」

本当に違う。
でもこうなったお母さんは止められない。

それから、お母さんの時代と違って女でも勉強できる恵まれた環境にいるのに、それを分かっていないとか色々言われ続けた。
もちろん、私だって塾代を出してもらってるのに申し訳ないとか思ってはいる。
でも、お願い。そんな風に私を責めないで。

私はそこから二時間責められ続け、最後には私が過呼吸になったことでお母さんの怒りは収まった。

それからは塾の授業にはちゃんと行くようになった。
煌夜のことだけでなく、家のことも勉強のことも考えなければならない。
そんな日々に私は疲れ切っていた。
煌夜と会う時間だけが私の癒しだった。
もっとも、煌夜に出会わなければ私は今こんなに悩んでいなかったのだろうけど。
それでも私は煌夜と出会ったことを後悔はしていなかった。

ある日、お母さんに塾に自習に行くと伝えて、煌夜と遊びに行った。
自習ならバレないだろうし、良いだろう。
私は自分にそう言い訳をした。
最寄りから一時間ほど離れた駅で、煌夜と落ち合った。

「おーい。今日はどうする?美味いもんでも食いに行くか?それとも知的に美術館でも行くか?」

煌夜は楽しそうに言う。

「うーん、人目を気にせず二人きりでゆっくり話ができるところに行きたいな」

それは本心だった。

「人目を気にせず、二人きりでゆっくり…?ああ!ラブホ行くか!?」
「発想が不健全」

私はあまりのデリカシーのない発言に、思わず煌夜を小突いた。

「ごめんごめん、俺ワーカーホリックだからさ?職業病ってやつ?」

煌夜は笑った。
本来なら笑うべき内容ではないけれど、煌夜が楽しそうだったから、思わず私も笑った。

「まあ……ラブホ……興味なくはないけど……」

だいぶ恥ずかしいことを言った自覚はある。
私は煌夜のことが好きだったし、せっかくの冗談に乗じてみようかななどと、らしくもないことを思ってしまった。

「ラブホか~」

煌夜は悩んでいるようだった。

「ちょっと行ってみたいな。ダメ?」

煌夜は少し顔を赤くした。

「お前は情緒がないな~。うーん、まああそこゲームとかもあるし、ちょっと行ってみるか!あ、でももちろんそういうのはナシだからな!」

ラブホに到着すると、煌夜は慣れた手つきで部屋の環境を整え、ゲーム機を出し始めた。

「あのさ……本当にそういうことしないの……?」

そんなことを聞くのは恥ずかしかったけど、勇気を出して聞いてみた。

「ああ。さっきも言っただろう?高校生はこうやって健全に遊ばないと」

ラブホにいる時点で健全も何もないのにね……。

「私じゃ魅力不足?」

冗談ぽく言ったつもりだったが、少し拗ねた口調になってしまった。
実際少し寂しかった。

「そんなわけないだろ……!」

煌夜は赤面していた。

「いや、ぶっちゃけるとお前可愛いしめちゃめちゃ抱きたいよ!?でもさ……」

煌夜は複雑そうな顔をした。

「俺はお前のこと抱けないよ……。だって俺汚れてるし……。それに……現実的なことを言うと性病かもしれないし……」

煌夜は伏し目がちになった。

「検査してないの?私は別に気にしないけど……」

全く気にしないと言ったら嘘になるけど、煌夜を傷付けたくなかった。

「いや、だってさ、もしエイズとか言われたら流石に怖いじゃん?」

たしかにそれは怖いかも……。

「でももしそうなら、お客さんに移したらまずいんじゃない?」

そういう商売の人は定期的に検査をすると聞く。

「そうなんだけどな……。知ったところでこの仕事辞めたら金ないし……。それにさ、未成年を金で買って好き勝手やるような奴らなんか、エイズになってもいいんだよ……」

煌夜は投げやりに言った。
煌夜は仕事の話は私にしないけど、お客さんからどんな扱いを受けているのだろうか……?

「とにかく、お前のことは抱けないよ……。それに高校生は本来まだこういうことをするべきじゃないんだよ。まあ、もしお前が大人になっても俺とそういうことしたかったら、その時はするか?その場合はちゃんと検査するし!」

煌夜は笑った。
少し寂しかったけど、私もつられて笑った。

その後は一緒にゲームをしながら、今ハマってるものとか愚痴とか悩みの話とかをした。

「お母さんは私のことなんか何もわかってくれないんだ……。勉強が出来ない私のことなんかきっと嫌いなんだよ。いい大学に行って外資系の会社に就職してとか、そればっかり。お父さんと上手く行ってないから、私が稼いだらお父さんと離婚して私と暮らしたいらしい。なんか大人になりたくないな~。このまま死にたい……」

成績が下がったことで当たりが強くなったお母さん、将来への不安、もちろん煌夜には言えないけど、煌夜に関すること。
色々な悩みが積み重なって私は疲れてたんだと思う。
だからどんどんネガティブになっていた。

「どうせこれから先の人生真っ暗なんだし、十七で死ぬのもアリかも……。なんかやりたいことぱーっとやってそのまま死にたいな~」

私は愚痴の延長で軽く言ったつもりだった。
でも煌夜はその言葉を聞き逃さなかった。

「そうなんだ……。ならさ……一緒に死なないか……?」

私は驚いた。
煌夜はゲームに集中していたし、そんなに真剣なトーンで返されるとは思わなかった。

「俺もさ、知っての通りこんな人生だしさ、ずっと死んでもいいかなって思ってたんだ。こんな世の中へのせめてもの当てつけとしてさ、心中しないか?」

心中……?
そんな言葉は小説の中か、ニュースでしか聞いたことがなかった。
現実感が湧かなかったけど、いや、むしろ現実感が沸かなかったからか、私はただ頷いた。

「ほんとか……!?ありがとう!今すぐ死ねなくても大丈夫なら、俺あと一ヶ月くらいで十七になるから、その時でもいいか……?せっかくならお前と同い年で死にたい」

煌夜は本当に嬉しそうだった。
まだ頭の中の整理はついていなかったけど、私自身も煌夜と死ぬというのは、ロマンチックで少し魅力的な誘いのように感じた。

そしてその日はやってきた。
煌夜の十七歳の誕生日から三日が過ぎた頃だった。

私達は仮病を使って学校を休んだ。
煌夜との待ち合わせ場所である、家から一時間ほど離れた街に着くと、私はもう後には引き返せないのだとぼんやりと思った。

昨日は珍しくお父さんが早く帰ってきて三人で食事をした。
食卓には少し険悪な雰囲気は漂っていたけど、お母さん特製のキャベツスープはいつも通り美味しかった。
もうあのキャベツスープを食べることもないのか。

朝は私がいつもより早起きして、お母さんが驚いてたな。
お母さんは私がいつも通り学校に行くものだと思っていたから、私の顔も碌に見ずに、洗い物をしながら「いってらっしゃい」と言った。
まさか娘が帰らぬ人になるなんて思ってもないんだろうな。
いざ死ぬとなると、あんなに悩んでいた家族のことも良い思い出のような気がしてくる。

そんなことをぼんやりと考えていると、待ち合わせ場所に着いた煌夜が、笑顔で私に声をかける。

「おはよ!俺昨日はドキドキしてあんまり寝られなかったよ~」

煌夜の身体は傷だらけだった。
私は思わず煌夜をじっと見てしまった。

「あ~、この傷な、お客さんにつけられたんだ~。俺律儀だからさ?一応お客さん全員に、もうこの仕事辞めるからさよならって伝えたんだよ。そしたら許さないって言ってカッターナイフで切ってきた人がいてさ~。困ったよな~。まあ俺、母さんでメンヘラには慣れてるからテキトーに宥めて事なきを得たけどさ」

そんな修羅場があったのか……。

「ひどいね……」

あまり気の利いた言葉は浮かんでこなかった。

「まあ大半のお客さんはあっさり納得してくれたし、なんなら俺が成人したら飲んでねって、すげー高そうな酒くれた人もいるぜ。俺成人する前に死ぬのにな」

煌夜は笑った。

「ちゃんと母さんにも金は置いてったし、もう思い残すことはないな!ちなみに今日は、十万は持ってきてるから、何でも出来るぜ~」

十万という大金には素直に驚いた。
私なんて一万しか持ってこれなかったなんて言えないな……。

私達がまず行ったのは遊園地だ。
遊園地なんて行ったのは何年振りだろう。
飛び降りの予行演習だなんて言って自ら絶叫系マシンを選んだのに、私の何倍も怖がる煌夜を見るのはすごく面白かった。
お化け屋敷では二人で幽霊になったら何をしたいかを語り合った。
こんなに楽しい場所でも、死の影は常に私達につきまとっている。
小さい頃、遊園地に行くと楽しすぎて、これから死ぬのかな、なんて思うこともあった。
今日はまさにその状況なのだと考えると、感慨深かった。

遊園地だけで何時間も遊んでしまった。
他にもやりたいことはあったけど、楽しい時間はあっという間に過ぎる。
もう夕方に差し掛かっていた。

「楽しかったな~。でもお前んちの門限考えたら、そろそろ夕飯食って死ぬ準備しないとお前の母さんから電話かかってきちまうよな~」

煌夜は相変わらずテンションが高い。
これから死ぬ人とは誰も思わないくらいに。

「ところで、お前は最後の晩餐は何が良い?」

そうか、次の食事が人生最後になるのか。

「うーん、食べたいものか~」

せっかくなら普段食べないようなものが食べたかった。
家庭の味は昨日の夜と今日の朝食べてきたから。

「逆に煌夜はないの?私、特別感あるものならなんでもいい」

煌夜に選んでもらうことにした。

「特別感ねぇ……じゃあさ、ステーキ食おうぜ!」

こんな高そうなお店に入ったのは初めてだった。
二人とも制服なのによく断られなかったなと思う。
私達は最後の晩餐を食べながら、これまでの人生を振り返った。

「そういやさ、お前は青い鳥分かる?」

煌夜は唐突に私に聞いた。

「ん?つぶやいたーのこと?」

本の話をしているというのは分かっていたけど、わざと冗談を言った。

「んー、今のは三点」

随分と手厳しい評価だ。
煌夜は不満そうな私に構わず続ける。

「青い鳥で、赤ちゃんは産まれて来る時に何かお土産を持ってくるって話を読んだんだけどさ、俺達は一体何をお土産に持ってこの世界に産まれて来たんだろうな?」

難しい質問だ。
私はこの世界に何か残せたものがあっただろうか……?

「俺はさ、俺達は互いの寂しさを埋めるために産まれてきたと思ってる。俺はほんとさ、いつ死のうかなって思いながら生きてきた。お前と初めてまともに喋った日もさ、俺は本を読んでたけど、あれは周囲の人間と関わりたくなかったからだったんだ。俺、小さい頃から、変な家庭の子供として好き勝手噂されてきた。だからもう他人に自分の領域に入って欲しくなかったんだ。でもお前が俺に話しかけてくれた時、不思議と嫌な感じはしなかった。たぶんそれはお前が俺のこと、バカにしてなかったからなんだろうな。お前と過ごす日々はすごく楽しくて、俺幸せだったよ。ずっとクソみたいな人生だと思ってたけど、悪くなかったなって……」

私は黙って聞いていた。
不意に涙がこぼれた。

「あれ……?情緒馬鹿になってるのかも……。ごめん、ちょっとトイレ……」

本当は私だって煌夜に感謝の気持ちを伝えるべきだったのだろう。
だけど私はいっぱいいっぱいになっていて、とにかく気持ちを落ち着けたかった。
煌夜もそれを分かっていたからか、止めなかった。

そしてとうとう死ぬ時間がやってきた。
煌夜は使い切らなかったお金は「俺達みたいな不幸な子供がこれ以上増えないように」と言って募金箱に突っ込んでいた。
その募金は盲導犬協会のものだから、煌夜が思うものとは少し違うのではないかと思ったけど、誇らしげな顔をする煌夜の前では言えなかった。

私達は高いビルの屋上にいた。
この商業施設は本当に客が少ない。
この時間に屋上にいるのは私達だけだった。

「じゃあ、いっせーのせで飛び降りような」

夜風が冷たい。
外は真っ暗闇だった。

「うん…」

私は自分の今までの人生を振り返っていた。
あんなに嫌だった家族も学校も、今振り返ると優しい思い出も意外とあるものだなと思った。

「いっ……せー……のー……」

私はだんだんと恐怖に襲われていった。
今日こんなにも楽しかったのに死ぬの……?

「せ!」

煌夜は勢いよく飛び降りた。

私は…………脚を震わせたまま屋上に突っ立ったままだった。
落ちていく煌夜と目が合った。
何で?とでも言いたげな、ひどく恨めしそうな顔をしていたように感じた。
ごめんなさい……ごめんなさい……私は死ねない…………。

それからすぐにグシャッと潰れる音が聴こえた。
その後、救急車や警察が来たけど、後のことはあまり覚えていない。
大騒ぎになる街を呆然と眺めていた。
私は保護された。
両親が泣きながら私を抱きしめた。
私はきっと両親は怒るんだろうなと思っていたけど、ただただ私を抱きしめるだけだった。
私を抱きしめる腕からは、両親の温もりを感じた。

ああ……私は愛されてたんだ……。
同時に思った。
私は絵美の言う通り、煌夜とは違うこっち側の人間だったんだ……。

それから私は、一年休学して精神科に通った。
そして学校にも居られなくなって、通信制の高校に転学した。
煌夜の母親は、煌夜が死んだ時、すでに薬物に溺れていて、煌夜が死んだことすら認識できない状態だった。

煌夜……あなたが守ろうとしてきた家族って、こんなにどうしようもないものだったのね……。

私は煌夜のことを考えると涙が止まらなかった。

高校は一留したけれど、何とか地方の誰も知り合いがいない大学に入った。
煌夜と一緒に死ねなかった罪悪感でいっぱいになって、私はよく手首を切った。
リスカ痕だらけの腕を隠すために、年中長袖でいる私を気味悪がってか、大学でも特に親しい友人はできなかった。
それでも惰性的に四年間を過ごし、こんな私を理解してくれた介護施設への就職が決まった。
人手が足りなかっただけなのかもしれないけど、私はこんな自分でも社会に必要とされているんだなと実感することができた。

就職が決まって、これから社会人として新たなスタートを切る。
私は煌夜にまつわるしがらみを断ち切るためにも、この箱を開けなければならない。
そう決心して、箱を開けた。

箱の中には、私が未開封のままにしていた煌夜からの手紙が入っている。
最後の晩餐の時、私がお手洗いに行った際に煌夜が入れたのだろうか?煌夜が死んだ後、私はその日持っていたバッグを整理していたら、バッグの中に小さい紙袋が入っていて、その中に手紙と口紅が入っているのを見つけたのだ。
私はやっと、その時の手紙の封を切った。

「この手紙を読んでるってことは、お前は死ななかったんだな。お前は罪悪感でいっぱいになってるかもしれないけど、俺はお前が死ぬ気ないの、最初から分かってた。それでも一人で死にたくなかったから、気付かないフリをしてただけなんだ。ごめんな。俺はずっと孤独だったから、死ぬ時にお前がそばに居てくれた、たったそれだけで十分幸せだったんだ。だからお前が気にする必要なんて全くないからな。今まで本当にありがとうな。お前は俺にとって、最高の相棒だったよ。
お前の幸せを祈る友より 

p.s. この手紙と一緒に口紅を入れておいた。お前が俺のこと吹っ切れて、新しいスタートを切る時にでも使ってくれ。男が女に口紅を贈る意味は分かるか?ずっと言葉に出来なかったけど、お前のことが大好きだよ。俺は先に行くけど、またお前と会える日を楽しみにしてる。あの世で待ってるな」

涙が止まらなかった。
煌夜は飛び降りなかった私のことを恨めしく見つめてなんていなかったんだ。
あれは私の罪悪感が見せた幻影。
私が煌夜のそばに居たことが、煌夜にとって救いになっていたという事実が、ただただ私を安心させた。
私はこんなにも私の幸せを祈ってくれている煌夜の気持ちも知らずに、死ねなくてごめん、私も早く死にたいだなんて思っていたなんて恥ずかしい。
ありがとう煌夜、私はこれからは前に進んでいくよ。
死ねなかった私は前に進むしかないんだから……。

数日後、私は一度実家に戻り、六年ぶりに絵美と再会した。
あんなに酷い言葉を言った上に、何も言わずに転校したのに、こうしてまた会ってくれる絵美は私にとって最高の友達だ。

「あんたとまた会えるなんて驚いたよ。思ってたよりも表情が明るくて安心した」

絵美は随分と大人びていた。
私達は今のそれぞれの状況について話した。

「へえ、介護施設か~。あんた優しいし向いてるんじゃない?」

絵美の仕事についても聞いた。

「私は今スクールカウンセラーをやってるよ。私だってね、あんたと田中のことを見て、色々と感じることはあったんだ。こういう不幸な子供を救いたいって思った。まだ一年くらいしか経ってないけど、すごくやりがいを感じるよ」

絵美もそんなにも私達のことを考えていてくれたんだと思うと、目頭が熱くなる。

それから私達は空白の期間なんてなかったかのように、夜まで盛り上がった。
帰り道、夜空が煌めいていて、まるで煌夜が私達のスタートを歓迎してくれているかのようだった。

それから少しして、四月がやってきた。
今日は私の初出勤日だ。
私は煌夜がくれた真っ赤な口紅を手に取る。

煌夜……私はもう前に進むよ……。

こんな真っ赤な口紅は介護施設には合わないんじゃないかとは思う。
それでも私は、これから始まる新生活に勇気を振り絞って向かうために、唇に口紅を当てた。










「東京都葛飾区の住宅で、二十代の女性の遺体が発見されました。遺体の近くに落ちていた口紅からは、毒劇物が検出されたため、警察は自殺か他殺の両方の可能性から捜査を進めています」

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