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3.味方?
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「とりあえず、座って話を聞かせてもらえるかしら?」
ソファに座るように言われ、おとなしく座ることにする。
精神的な疲れで、立っていたくなかった。
座って、あらためて女官長と向き合うと、今日起こったことをすべて話した。
できるだけ詳しく、私にはどうしてこうなったのか全く分かっていないことを。
話し終わった時に、女官長は考え込んでいるようだった。
そして、扉のところにいた衛兵に向かった声をかけた。
「一人はユキ様を呼んできて。
もう一人は宰相の所へ、何が何でも陛下をお止めするように、と伝えてきて。」
「「はっ!」」
衛兵たちがすぐさま部屋から出ていく。
それを見届けて、女官長はふんわり微笑んだ。
「怖かったわね。もう大丈夫だから、安心していいわ。
陛下はここに来させないから。」
「ありがとうございます。」
女官長からの優しい言葉を聞いて、張り詰めていた気持ちが緩んだ。
涙があふれてきて、止まらなかった。
殺されるかもしれなくても抵抗するつもりだったけど、やっぱり怖かった。
いったい自分をどうするつもりなんだろうと、気が気じゃなかった。
あらあらと女官たちがハンカチを貸してくれる。
その優しさを素直に受け取って、涙を拭くと、少し落ち着いてきた。
「ユキ様が来るまで、少しあなたのことを聞いてもいいかしら?
薬師なのよね?それはご両親から?」
「はい、そうです。もとは父が薬師だったそうです。
父に弟子入りした母も薬師になっていますので、私は母から受け継いでいます。」
「ご両親が亡くなったのはいつ頃?」
「父は私が小さい時に亡くなっています。母は4年前です。」
「あぁ、4年前。あの時たくさんの方が亡くなったものね。
それじゃあ、それからあなた一人で店を続けてきたの?」
「そうです。周りの店の協力もあって、今までやってこれました。」
「…年齢を聞いてもいいかしら?」
「先週、16歳になりました。」
その言葉に女官長だけでなく、周りの女官たちも驚いているのがわかる。
それはそうだろうと思って、特に気にはしない。もう言われ慣れている。
「成長が12歳で止まってしまっているんです。理由はわかりません。」
「そうなの…それで。でも、話していると16歳なのはわかるわ。
今まで一人でお店を続けてこられたのも納得だわ。
頑張ってきたのね。」
お店を続けてこられたことは自分にとっても誇りだ。
そのことを褒めてもらえて、嬉しくなった。
「遅くなってしまってすまないね。
陛下のほうを先になんとかしてきたよ。」
そう言って部屋に入ってきたのは、はきはきと話す高齢の女性だった。
もともとは赤髪だろうか、白髪が混ざって桃色のように見える。
女官たちとは服が違っていた。
ふわっと薬草の匂いがするのは、もしかして薬師なのだろうか。
「ユキ様。お待ちしていました。陛下はどうでしたか?」
「あれは、魔力酔いの一種だね。
薬を飲ませて寝かせてきた。一晩寝れば治るだろう。」
「それは良かったですけど、魔力酔いの一種ですか?」
魔力酔い?そんな症状知らない。
このユキ様に聞けば教えてもらえるのだろうか?
「名前は?」
ユキ様が私を見て、聞いてきた。
「ルーラです。」
「ルーラ、お前は魔女だね?」
「いいえ。母が魔女だとは聞いていますが、私は魔女じゃありません。」
その答えがおかしかったのか、ユキ様は首を傾げた。
「気が付いていないのか。陛下の魔力酔いはお前の魔女の魔力が原因だ。」
「えええ?」
ソファに座るように言われ、おとなしく座ることにする。
精神的な疲れで、立っていたくなかった。
座って、あらためて女官長と向き合うと、今日起こったことをすべて話した。
できるだけ詳しく、私にはどうしてこうなったのか全く分かっていないことを。
話し終わった時に、女官長は考え込んでいるようだった。
そして、扉のところにいた衛兵に向かった声をかけた。
「一人はユキ様を呼んできて。
もう一人は宰相の所へ、何が何でも陛下をお止めするように、と伝えてきて。」
「「はっ!」」
衛兵たちがすぐさま部屋から出ていく。
それを見届けて、女官長はふんわり微笑んだ。
「怖かったわね。もう大丈夫だから、安心していいわ。
陛下はここに来させないから。」
「ありがとうございます。」
女官長からの優しい言葉を聞いて、張り詰めていた気持ちが緩んだ。
涙があふれてきて、止まらなかった。
殺されるかもしれなくても抵抗するつもりだったけど、やっぱり怖かった。
いったい自分をどうするつもりなんだろうと、気が気じゃなかった。
あらあらと女官たちがハンカチを貸してくれる。
その優しさを素直に受け取って、涙を拭くと、少し落ち着いてきた。
「ユキ様が来るまで、少しあなたのことを聞いてもいいかしら?
薬師なのよね?それはご両親から?」
「はい、そうです。もとは父が薬師だったそうです。
父に弟子入りした母も薬師になっていますので、私は母から受け継いでいます。」
「ご両親が亡くなったのはいつ頃?」
「父は私が小さい時に亡くなっています。母は4年前です。」
「あぁ、4年前。あの時たくさんの方が亡くなったものね。
それじゃあ、それからあなた一人で店を続けてきたの?」
「そうです。周りの店の協力もあって、今までやってこれました。」
「…年齢を聞いてもいいかしら?」
「先週、16歳になりました。」
その言葉に女官長だけでなく、周りの女官たちも驚いているのがわかる。
それはそうだろうと思って、特に気にはしない。もう言われ慣れている。
「成長が12歳で止まってしまっているんです。理由はわかりません。」
「そうなの…それで。でも、話していると16歳なのはわかるわ。
今まで一人でお店を続けてこられたのも納得だわ。
頑張ってきたのね。」
お店を続けてこられたことは自分にとっても誇りだ。
そのことを褒めてもらえて、嬉しくなった。
「遅くなってしまってすまないね。
陛下のほうを先になんとかしてきたよ。」
そう言って部屋に入ってきたのは、はきはきと話す高齢の女性だった。
もともとは赤髪だろうか、白髪が混ざって桃色のように見える。
女官たちとは服が違っていた。
ふわっと薬草の匂いがするのは、もしかして薬師なのだろうか。
「ユキ様。お待ちしていました。陛下はどうでしたか?」
「あれは、魔力酔いの一種だね。
薬を飲ませて寝かせてきた。一晩寝れば治るだろう。」
「それは良かったですけど、魔力酔いの一種ですか?」
魔力酔い?そんな症状知らない。
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「名前は?」
ユキ様が私を見て、聞いてきた。
「ルーラです。」
「ルーラ、お前は魔女だね?」
「いいえ。母が魔女だとは聞いていますが、私は魔女じゃありません。」
その答えがおかしかったのか、ユキ様は首を傾げた。
「気が付いていないのか。陛下の魔力酔いはお前の魔女の魔力が原因だ。」
「えええ?」
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