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36.初めての夜
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マリーナさんが帰ってきたのは夕方になってからだった。
早めの夕食を取り、食後のお茶を飲みながら話を聞く。
「もう一人の令嬢は誰だったんだ?」
「レベッカ・イナリー。イナリー子爵家の一人娘でした」
「イナリーってあれか。
叔母上が俺の名前を使って契約しようとした家の一つか」
それってあの夜会で倒れた夫人が騙そうとしていたって。
ジルベール様の名前を使って事業をしようとしていたけど、
結果的にはどの事業も中止になったと聞いていた。
「ほとんどの家はジルベール様に確認のお手紙が来ていましたが、
イナリー家だけは来ませんでした。
マリーズ様の言葉を信じて事業を開始してしまい、
その損害で子爵家は爵位を売り飛ばすことになったそうです」
「それは騙そうとした叔母上も悪いが、
俺に確認せずに投資しようとした子爵も悪いんじゃないか?」
「ええ、私もそう思いますが、あの令嬢は違ったようです。
ジルベール様がシルヴィ様と結婚していれば、
ジルベール様の名前を使って事業することができたはずだと。
それを邪魔したのはシャル様だと逆恨みしていたようです」
「え?そんなことで恨まれていたの?」
「どう考えればそんなことになるんだ?」
私とジルベール様が不満の声をあげたのは同時だった。
婚約者がシルヴィ様だと信じていたにしても、
それが嘘だったことはわかったはずなのに。
「王宮騎士に淡々と説明されて、
それが逆恨みだとわかったようですが、
今さら後悔してもやったことは取り返せないですからね」
「それはそうだろう。
シャルに攻撃していたのは俺とマリーナで確認している。
現行犯で捕まえたし、言い逃れはできない。
処罰はいつくらいに決まりそうだ?」
「一週間のうちには決まるそうです。
魔力制限をかけられ別々の強制就労場に送られるかと」
「家への処罰は?」
「リナリー家はもうないので罰金が増えるだけです。
生きている間は出られないかもしれませんね。
アンクタン家は爵位と領地を取り上げになると思います」
「取り上げか。
シャル、どうする?」
「え?」
どうすると聞かれて、意味が分からずに聞き返す。
「多分、シャルに継ぐ意思があるかどうか聞かれると思う。
継ぎたいといえば、俺たちの二番目の子が継ぐことになる」
「二番目の子、ですか?」
「一番目の子はロジェロ家を継ぐからな」
「あ……そうですよね」
私がロジェロ侯爵夫人なのだから、当たり前のことではある。
なのに、自分の産む子が後を継ぐということを考えたことがなかった。
「えっと……いらないです。
あまりアンクタン家にいい思い出がないので」
「それなら王家に任せてしまえばいい」
「では、確認が来た場合はそう返事をしておきますね」
「シャルは、二人の処罰はそれでいいのか?」
「平民に落とされるということは、もう会わないということですよね?
だったらそれでかまいません。
今日会ってみて、もう怖くないとわかりましたから」
「そうか」
実際に対決してみたら、ドリアーヌはちっとも怖くなかった。
だから報復する気にもならなかった。
もう二度と私の目の前にあらわれてほしくないと願うほどの存在でもない。
きっとそのうち忘れてしまう気がする。
お父様もお義母様も。
私には必要じゃないことがわかったから。
「ジルベール様、シャル様のお支度はどういたしましょうか?」
「そうだな……シャルの気持ちに任せる」
ん?私のお支度ってなんだろう。
マリーナさんがいい笑顔で近づいてくる。
「シャル様、今日が初夜になりますが」
「えっ、あ、そうだね」
そういえばそうだった。
卒業するまで待ってもらってたの忘れていた。
だって、いろんなことがあったから……って言い訳だわ。
「シャル、無理はしなくていいぞ。
嫌なら待てる、と思う」
めずらしく言い切らないジルベール様に、
我慢させていたのではないかと思う。
「もう待たなくて、大丈夫です……」
「そうか」
覚悟を決めて言ったら、ジルベール様はふわっと笑った。
その顔にどきどきしながら、マリーナさんにお願いする。
「マリーナさん、準備してくれる?」
「ええ、もちろんです」
まだ夜になったばかりだけど、浴室へと連れていかれる。
念入りに洗われた後、髪や肌を香油で整えてもらう。
いつもよりも肌触りのいい夜着を身に着けたら、
マリーナさんに薬湯を差し出される。
「薬湯?」
「気分が落ち着くものです。気休め程度ですけど」
「ありがとう……」
「シャル様、どうしても、どうしても無理だと思ったら、
助けを呼んでくださいね?止めに入りますから」
「え、うん。ありがとう。でも、大丈夫だと思う」
「それならいいのです」
逃げてもいいってわざと言ってくれたのかな。
逃げ場を作った方が、私は逃げないと思って。
ゆっくり深呼吸してからベッドに向かうと、
ジルベール様はもうすでに夜着姿で本を読んでいた。
こんな時でも魔術書を手放さないのはジルベール様らしい。
「あぁ、来たか」
「お待たせしましたか?」
「待ったような気もするが、悪くなかった」
「悪くない、ですか?」
「シャルを待つのなら、それもいいかと思ったんだ。
他の誰かなら時間の無駄だと思うんだろうに」
笑いながらも抱き寄せてくれるジルベール様に、
すぐに見下ろされる形になる。
覚悟は決めたけれど、怖くないわけじゃない。
目をぎゅっとつぶったら、まぶたの上にキスが落ちる。
そっとふれるような優しいキス。
「……ジルベール様?」
「怖いなら怖いと言ってくれ。嫌なことはしたくない」
「……怖いです。でも、少しも嫌じゃないです。
ジルベール様のものになれるのなら、痛いのも平気です」
「そうか…俺も怖いよ」
「怖い?ジルベール様が?」
「力任せに抱きしめたら壊れてしまいそうだ。
どんな魔術よりも力加減が難しい。
魔術なら失敗してもかまわないが、シャルには失敗したくない。
少しも壊したくないんだ」
そっとふれてくる手が震えた気がした。
ゆっくりと輪郭をなぞるように、私を確かめるように、
ジルベール様の手のひらがふれる。
それがもどかしくて、ジルベール様を抱きしめ返す。
唇が重なって、溶け合うほどにキスを続けていくうちに、
怖い気持ちは消えていた。
それからずっと。ジルベール様の唇と手が、
私の身体にくっついてしまったんじゃないかって思うほど、
眠りにつくまで一度も離れなかった。
日の光を感じて目が覚めたら、まだくっついたままだった。
抱きしめられたまま、ジルベール様の唇は私の髪にふれている。
それがうれしくて、ジルベール様の首筋に額をこすりつけた。
「ん。起きたのか?」
「はい」
「身体は大丈夫か?」
「……痛いかも、です」
幸せな気持ちとは別に、身体はしっかり痛かった。
ちょっとでも動いたら身体がきしむような気がする。
「悪い……やっぱり力加減がまずかったか」
「気にしないでください。うれしかったので」
「そうはいってもな」
ちょっと不満そうなジルベール様に笑ってしまう。
私も必死だったけれど、ジルベール様も同じくらい必死だった気がする。
女性に慣れていないと言い訳していたのを聞いて、
それは逆にうれしかったのだけど。
「次は無理させないようにする」
「次……」
次はいつなんだろう。少なくともこの痛みが消えてからにしてほしいな。
そう思っていたら、何かが背中側からぶつかってきたのを感じる。
「え?」
「……精霊が戻ってきたようだ」
「え?あ、猫耳が。精霊さん戻ってきたんですね」
昨日どこかに行ってしまった精霊さんが戻ってきたらしい。
頭の上をさわったらふわふわした耳がある。
また戻ってきてくれたのはうれしいけど、どうして身体に?
「わかった……少なくとも精霊が融合している間は手を出さない」
「どういうことですか?」
「精霊はシャルの身体が傷ついてると思って、守ってるんだ」
「あ」
心当たりに思わず顔が熱くなる。
精霊さん……守ってくれるのはうれしいけど、なんだか恥ずかしい。
「わかりやすいといえばわかりやすいか。
無理はさせたくない。精霊ともうまく共存していくか」
ふうっと息を吐きながら私を抱きしめるジルベール様の手が、
猫耳と尻尾にふれてみぃと鳴いてしまう。
「ははっ。シャルなら、猫耳があっても愛しているよ」
「あ、私も……愛しています」
昨日はそんな言葉もないほど必死だったことに、
お互い気がついてくすくすと笑いあう。
それがとても幸せで、このままずっと抱きしめていてほしいと願う。
黒猫令嬢でも幸せになれるんだって思いながら。
早めの夕食を取り、食後のお茶を飲みながら話を聞く。
「もう一人の令嬢は誰だったんだ?」
「レベッカ・イナリー。イナリー子爵家の一人娘でした」
「イナリーってあれか。
叔母上が俺の名前を使って契約しようとした家の一つか」
それってあの夜会で倒れた夫人が騙そうとしていたって。
ジルベール様の名前を使って事業をしようとしていたけど、
結果的にはどの事業も中止になったと聞いていた。
「ほとんどの家はジルベール様に確認のお手紙が来ていましたが、
イナリー家だけは来ませんでした。
マリーズ様の言葉を信じて事業を開始してしまい、
その損害で子爵家は爵位を売り飛ばすことになったそうです」
「それは騙そうとした叔母上も悪いが、
俺に確認せずに投資しようとした子爵も悪いんじゃないか?」
「ええ、私もそう思いますが、あの令嬢は違ったようです。
ジルベール様がシルヴィ様と結婚していれば、
ジルベール様の名前を使って事業することができたはずだと。
それを邪魔したのはシャル様だと逆恨みしていたようです」
「え?そんなことで恨まれていたの?」
「どう考えればそんなことになるんだ?」
私とジルベール様が不満の声をあげたのは同時だった。
婚約者がシルヴィ様だと信じていたにしても、
それが嘘だったことはわかったはずなのに。
「王宮騎士に淡々と説明されて、
それが逆恨みだとわかったようですが、
今さら後悔してもやったことは取り返せないですからね」
「それはそうだろう。
シャルに攻撃していたのは俺とマリーナで確認している。
現行犯で捕まえたし、言い逃れはできない。
処罰はいつくらいに決まりそうだ?」
「一週間のうちには決まるそうです。
魔力制限をかけられ別々の強制就労場に送られるかと」
「家への処罰は?」
「リナリー家はもうないので罰金が増えるだけです。
生きている間は出られないかもしれませんね。
アンクタン家は爵位と領地を取り上げになると思います」
「取り上げか。
シャル、どうする?」
「え?」
どうすると聞かれて、意味が分からずに聞き返す。
「多分、シャルに継ぐ意思があるかどうか聞かれると思う。
継ぎたいといえば、俺たちの二番目の子が継ぐことになる」
「二番目の子、ですか?」
「一番目の子はロジェロ家を継ぐからな」
「あ……そうですよね」
私がロジェロ侯爵夫人なのだから、当たり前のことではある。
なのに、自分の産む子が後を継ぐということを考えたことがなかった。
「えっと……いらないです。
あまりアンクタン家にいい思い出がないので」
「それなら王家に任せてしまえばいい」
「では、確認が来た場合はそう返事をしておきますね」
「シャルは、二人の処罰はそれでいいのか?」
「平民に落とされるということは、もう会わないということですよね?
だったらそれでかまいません。
今日会ってみて、もう怖くないとわかりましたから」
「そうか」
実際に対決してみたら、ドリアーヌはちっとも怖くなかった。
だから報復する気にもならなかった。
もう二度と私の目の前にあらわれてほしくないと願うほどの存在でもない。
きっとそのうち忘れてしまう気がする。
お父様もお義母様も。
私には必要じゃないことがわかったから。
「ジルベール様、シャル様のお支度はどういたしましょうか?」
「そうだな……シャルの気持ちに任せる」
ん?私のお支度ってなんだろう。
マリーナさんがいい笑顔で近づいてくる。
「シャル様、今日が初夜になりますが」
「えっ、あ、そうだね」
そういえばそうだった。
卒業するまで待ってもらってたの忘れていた。
だって、いろんなことがあったから……って言い訳だわ。
「シャル、無理はしなくていいぞ。
嫌なら待てる、と思う」
めずらしく言い切らないジルベール様に、
我慢させていたのではないかと思う。
「もう待たなくて、大丈夫です……」
「そうか」
覚悟を決めて言ったら、ジルベール様はふわっと笑った。
その顔にどきどきしながら、マリーナさんにお願いする。
「マリーナさん、準備してくれる?」
「ええ、もちろんです」
まだ夜になったばかりだけど、浴室へと連れていかれる。
念入りに洗われた後、髪や肌を香油で整えてもらう。
いつもよりも肌触りのいい夜着を身に着けたら、
マリーナさんに薬湯を差し出される。
「薬湯?」
「気分が落ち着くものです。気休め程度ですけど」
「ありがとう……」
「シャル様、どうしても、どうしても無理だと思ったら、
助けを呼んでくださいね?止めに入りますから」
「え、うん。ありがとう。でも、大丈夫だと思う」
「それならいいのです」
逃げてもいいってわざと言ってくれたのかな。
逃げ場を作った方が、私は逃げないと思って。
ゆっくり深呼吸してからベッドに向かうと、
ジルベール様はもうすでに夜着姿で本を読んでいた。
こんな時でも魔術書を手放さないのはジルベール様らしい。
「あぁ、来たか」
「お待たせしましたか?」
「待ったような気もするが、悪くなかった」
「悪くない、ですか?」
「シャルを待つのなら、それもいいかと思ったんだ。
他の誰かなら時間の無駄だと思うんだろうに」
笑いながらも抱き寄せてくれるジルベール様に、
すぐに見下ろされる形になる。
覚悟は決めたけれど、怖くないわけじゃない。
目をぎゅっとつぶったら、まぶたの上にキスが落ちる。
そっとふれるような優しいキス。
「……ジルベール様?」
「怖いなら怖いと言ってくれ。嫌なことはしたくない」
「……怖いです。でも、少しも嫌じゃないです。
ジルベール様のものになれるのなら、痛いのも平気です」
「そうか…俺も怖いよ」
「怖い?ジルベール様が?」
「力任せに抱きしめたら壊れてしまいそうだ。
どんな魔術よりも力加減が難しい。
魔術なら失敗してもかまわないが、シャルには失敗したくない。
少しも壊したくないんだ」
そっとふれてくる手が震えた気がした。
ゆっくりと輪郭をなぞるように、私を確かめるように、
ジルベール様の手のひらがふれる。
それがもどかしくて、ジルベール様を抱きしめ返す。
唇が重なって、溶け合うほどにキスを続けていくうちに、
怖い気持ちは消えていた。
それからずっと。ジルベール様の唇と手が、
私の身体にくっついてしまったんじゃないかって思うほど、
眠りにつくまで一度も離れなかった。
日の光を感じて目が覚めたら、まだくっついたままだった。
抱きしめられたまま、ジルベール様の唇は私の髪にふれている。
それがうれしくて、ジルベール様の首筋に額をこすりつけた。
「ん。起きたのか?」
「はい」
「身体は大丈夫か?」
「……痛いかも、です」
幸せな気持ちとは別に、身体はしっかり痛かった。
ちょっとでも動いたら身体がきしむような気がする。
「悪い……やっぱり力加減がまずかったか」
「気にしないでください。うれしかったので」
「そうはいってもな」
ちょっと不満そうなジルベール様に笑ってしまう。
私も必死だったけれど、ジルベール様も同じくらい必死だった気がする。
女性に慣れていないと言い訳していたのを聞いて、
それは逆にうれしかったのだけど。
「次は無理させないようにする」
「次……」
次はいつなんだろう。少なくともこの痛みが消えてからにしてほしいな。
そう思っていたら、何かが背中側からぶつかってきたのを感じる。
「え?」
「……精霊が戻ってきたようだ」
「え?あ、猫耳が。精霊さん戻ってきたんですね」
昨日どこかに行ってしまった精霊さんが戻ってきたらしい。
頭の上をさわったらふわふわした耳がある。
また戻ってきてくれたのはうれしいけど、どうして身体に?
「わかった……少なくとも精霊が融合している間は手を出さない」
「どういうことですか?」
「精霊はシャルの身体が傷ついてると思って、守ってるんだ」
「あ」
心当たりに思わず顔が熱くなる。
精霊さん……守ってくれるのはうれしいけど、なんだか恥ずかしい。
「わかりやすいといえばわかりやすいか。
無理はさせたくない。精霊ともうまく共存していくか」
ふうっと息を吐きながら私を抱きしめるジルベール様の手が、
猫耳と尻尾にふれてみぃと鳴いてしまう。
「ははっ。シャルなら、猫耳があっても愛しているよ」
「あ、私も……愛しています」
昨日はそんな言葉もないほど必死だったことに、
お互い気がついてくすくすと笑いあう。
それがとても幸せで、このままずっと抱きしめていてほしいと願う。
黒猫令嬢でも幸せになれるんだって思いながら。
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