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聖女ではない新しい私へ

6.本来の自分

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「聖女の仕事が終わった?
 青色が私の本当の目の色?美里は本当の目の色が紫だったってこと?」

「うん。でも、これで二人がどこに生まれるはずだったのかわかった。」

「「え?」」

どこに生まれるはずだったのかわかった?
それって、この世界で産まれるはずだった場所がわかったってこと?
おもわず美里と目を合わせる。
銀色の髪に紫の瞳になった美里…誰かに似ている?


「あれ…悠里、もしかして王族?カインに似ている。」

「え?私がカインさんと?
 でも、それを言ったら美里はキリルに似てる。色が同じだから?」

私とカインさんの色が同じで、キリルと美里の色が同じだった。
色が同じだから似ているように見えるんだと思ったら、その通りだとキリルに言われる。

「二人とも正解だよ。
 金髪碧眼は王家の色だし、銀髪紫目はうちの公爵家特有の色なんだ。」

「え…?どういうこと?」

「つまり、ユウリはカイン兄さんの妹として産まれるはずだったし、
 ミサトは俺の妹として産まれてくるはずだったってこと。」

「「えええ!?」」

私がカインさんの妹?
本当なのか確認したくてカインさんを見たら柔らかく微笑まれた。
うれしくて仕方ないって顔に、何も言えなくなる。

「この世界から弾きだされる魂はほとんどが貴族の子の魂なんだ。
 聖女の魔力量が多いってこともあるけど、戻ってきた聖女の髪と瞳の色で、
 だいたいはどこの家に産まれるはずだったのかわかる。」

「それと…長年の瘴気の研究で言われている仮説があるんだけど、
 瘴気が生まれるきっかけは死ぬはずじゃなかった人が死んだときなんじゃないかと。
 おそらく、今回の瘴気が発生したのは母上の毒殺がきっかけだと思う。」

「カインさんのお母さん?王妃様だった人?」

「そう。母上…亡くなった時、お腹に子どもがいたんだ。
 何事もなく産まれていたらちょうどユウリくらい。
 多分、あの時の母上は死ぬはずじゃなかった。
 だけど、運が悪かったのか毒殺されたことで瘴気の種が生まれたんだと思う。
 そして、その衝撃でユウリたちの魂が向こうの世界に飛ばされた。」

「…私がその時の魂だとして…どうして他の人の魂も飛ばされたの?」

毒殺された時にお腹にいた私の魂が飛ばされたというのは想像できたけれど、
その場合美里たちの魂も一緒に飛ばされたことが理解できない。
衝撃で飛ばされるって言ってたけど、どういうことなんだろう。

「貴族って、王族が産まれる時に合わせて子どもを産むんだ。
 ほら、結婚相手とか友人として王族に近づけるようにね。
 王妃のお腹に子がいると公表されたら、まず高位貴族たちが子を産もうとする。
 もちろん公爵家のうちも同じ時期に子を産もうとしただろう。
 それがミサトの魂なんだと思う。」

「ユウリが生まれなかったことで、高位貴族が子を産ませなかった。
 それと、王族に合わせて子を産むのは高位貴族だけじゃない。
 高位貴族の子の乳母になるために下位貴族たちも子を産むんだ。
 結果、百人くらい生まれるはずだった魂が生まれなくなってしまったんだろう。」

「…それが弾かれた魂ってことなんだ。」

たった一人産まれなかったことで、そんなにも影響があるなんて知らなかった。
…私がこの世界に産まれなかったことで、美里も産まれなかった。
実感はないけれど、金髪碧眼が王家以外ではありえないというのなら、
タイミング的にもカインさんの妹だというのがあっている。

「…ユウリ、これからは妹だと思っていいだろうか…。」

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