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聖女ではない新しい私へ
3.リツの選ぶ道(キリル)
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「…俺、どうなんの?」
「この世界は、向こうの世界ほど優しくない。
聖女を傷つけたものは、処刑になると決まっている。」
「処刑!?殺されるってこと?」
罪を犯したと理解していても、さすがに処刑されるとは思っていなかったんだろう。
立ち上がり、青ざめた顔でぶるぶると震え出した。
領民たちが騙されて死んだのを見て、
この世界では人の命が軽いことは気が付いたはずだ。
…自分が死ぬのが簡単に想像できてしまったのかもしれない。
「リツに残された道は3つある。
1つは今言ったように、おとなしく処刑されるのを待つ。」
「…それは嫌だ……。」
それはそうだろう。
いくら罪を犯したとはいえ、まだ二十歳になるかならないかの年齢だ。
よっぽどのことが無ければ処刑してほしいなんて思わない。
まぁ、俺もこれを選ぶとは思わずに話しているけど。
「もう1つは、イチカから手紙が来ている。」
「一花から?そういえば一花はどうしてるんだ?」
「イチカは他国の国王に見初められて、王妃になっている。」
「はぁ?」
「ユハエル国という国の国王と結婚し、王妃になったんだ。」
「あの一花が?悠里をあきらめて?嘘だろう?」
信じられないと言った顔のリツにそれもそうだろうなと思う。
こうして話ができるリツとは違い、イチカは話が通じなかった。
俺自身、まさか他国の王妃になるとは思わなかった。
「さっき話したように、イチカもユウリの魔力に依存していた。
リツとは違って、無くなったら死ぬくらいの気持ちだったらしい。
ユウリへと謝罪の手紙が送られてきたのがあるが、読むか?」
「…読む。」
イチカから来た分厚い手紙を出し、リツのほうへ投げてやる。
かなりの重さはあるが、リツは片手で受け止めた。
手紙を開いて読み始めたが、11枚にも及ぶ手紙は長く、しばし沈黙が続く。
三か月前、瘴気が落ち着いてきたころに送られてきた手紙だ。
俺も読んだが、どうしてユウリに固執するのか本人が理解した後は、
ユウリを自分のものにするために孤立させたこと、
自分たちと一緒に生きるように仕向けていたことを後悔したらしい。
向こうの世界にいた頃のイチカは、ユウリが自分から離れたら、
ユウリを殺してしまうかもしれないと思っていた。
自分から離れて誰かのものになるくらいなら一緒に死のうと考えていたという。
だから、そうなってユウリを殺すくらいなら、
自分から離れないようにしたほうが幸せだと思い込んでいたらしい。
そのためにリツのことも利用していたと書かれている。
つまり、リツはユウリの魔力への依存だけではなく、
イチカの魅了によって動かされていたことになる。
二つのあらがえない力に振り回されていた。
リツにとっては、出会ってしまった運命が悪かったとしか言いようがない。
被害者と言えるかどうかは、さすがに行動が悪すぎて庇えないけれど。
「…これが一花が書いた手紙だっていうのはわかった。
一花の字だし、あいつは人に言われたからってこんな手紙は書かない。
そっか…一花も目が覚めたんだな。幸せなのか?」
「国王は後宮も廃止し、生涯イチカだけだと誓ったそうだよ。
イチカはわからないけれど、愛されていると思うよ。」
「そっか。ならいい。」
あの国で後宮を廃止するためにはどれほど根回しが必要なのかを考えると、
国王のイチカにたいする執着のすごさを感じてしまう。
…だからこそ、こんなことを申し出たのだろうけど。
「うん、それで、ユハエル国がリツを引き取ってもいいと言っている。」
「は?」
「処刑されるくらいならユハエル国で引き取ると。
おそらくイチカの願いなんだろうけど、これはお勧めできないかな。」
「なんでだ?一花が王妃の国なんだろう?」
「この世界は、向こうの世界ほど優しくない。
聖女を傷つけたものは、処刑になると決まっている。」
「処刑!?殺されるってこと?」
罪を犯したと理解していても、さすがに処刑されるとは思っていなかったんだろう。
立ち上がり、青ざめた顔でぶるぶると震え出した。
領民たちが騙されて死んだのを見て、
この世界では人の命が軽いことは気が付いたはずだ。
…自分が死ぬのが簡単に想像できてしまったのかもしれない。
「リツに残された道は3つある。
1つは今言ったように、おとなしく処刑されるのを待つ。」
「…それは嫌だ……。」
それはそうだろう。
いくら罪を犯したとはいえ、まだ二十歳になるかならないかの年齢だ。
よっぽどのことが無ければ処刑してほしいなんて思わない。
まぁ、俺もこれを選ぶとは思わずに話しているけど。
「もう1つは、イチカから手紙が来ている。」
「一花から?そういえば一花はどうしてるんだ?」
「イチカは他国の国王に見初められて、王妃になっている。」
「はぁ?」
「ユハエル国という国の国王と結婚し、王妃になったんだ。」
「あの一花が?悠里をあきらめて?嘘だろう?」
信じられないと言った顔のリツにそれもそうだろうなと思う。
こうして話ができるリツとは違い、イチカは話が通じなかった。
俺自身、まさか他国の王妃になるとは思わなかった。
「さっき話したように、イチカもユウリの魔力に依存していた。
リツとは違って、無くなったら死ぬくらいの気持ちだったらしい。
ユウリへと謝罪の手紙が送られてきたのがあるが、読むか?」
「…読む。」
イチカから来た分厚い手紙を出し、リツのほうへ投げてやる。
かなりの重さはあるが、リツは片手で受け止めた。
手紙を開いて読み始めたが、11枚にも及ぶ手紙は長く、しばし沈黙が続く。
三か月前、瘴気が落ち着いてきたころに送られてきた手紙だ。
俺も読んだが、どうしてユウリに固執するのか本人が理解した後は、
ユウリを自分のものにするために孤立させたこと、
自分たちと一緒に生きるように仕向けていたことを後悔したらしい。
向こうの世界にいた頃のイチカは、ユウリが自分から離れたら、
ユウリを殺してしまうかもしれないと思っていた。
自分から離れて誰かのものになるくらいなら一緒に死のうと考えていたという。
だから、そうなってユウリを殺すくらいなら、
自分から離れないようにしたほうが幸せだと思い込んでいたらしい。
そのためにリツのことも利用していたと書かれている。
つまり、リツはユウリの魔力への依存だけではなく、
イチカの魅了によって動かされていたことになる。
二つのあらがえない力に振り回されていた。
リツにとっては、出会ってしまった運命が悪かったとしか言いようがない。
被害者と言えるかどうかは、さすがに行動が悪すぎて庇えないけれど。
「…これが一花が書いた手紙だっていうのはわかった。
一花の字だし、あいつは人に言われたからってこんな手紙は書かない。
そっか…一花も目が覚めたんだな。幸せなのか?」
「国王は後宮も廃止し、生涯イチカだけだと誓ったそうだよ。
イチカはわからないけれど、愛されていると思うよ。」
「そっか。ならいい。」
あの国で後宮を廃止するためにはどれほど根回しが必要なのかを考えると、
国王のイチカにたいする執着のすごさを感じてしまう。
…だからこそ、こんなことを申し出たのだろうけど。
「うん、それで、ユハエル国がリツを引き取ってもいいと言っている。」
「は?」
「処刑されるくらいならユハエル国で引き取ると。
おそらくイチカの願いなんだろうけど、これはお勧めできないかな。」
「なんでだ?一花が王妃の国なんだろう?」
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