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絡み合う運命
20.魔力切れ
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「ユウリを離せ!」
振り返ったら、神剣をかまえたままのキリルがいた。
ここまで走ってきたのか、めずらしく肩で息をしている。
後ろにいる隊員たちも汗をかいているのが見えた。
数名の隊員たちと共に私を探してくれていたようだ。
「キリル!」
「うるさい!悠里は俺の、俺たちの大事な人なんだ!
もうお前なんかに騙されて聖女なんて危険なことをさせるなんて嫌だ!」
律のその言葉にキリルの顔が曇る。
…騙しているという言葉に心当たりがあったのかもしれない。
わかってるから、そんな顔しなくていいよ、と言ってあげたくなる。
騙されているのかもしれないとは何となく思っていた。
どうして転移してきたからといって、私が聖女の仕事をしなくちゃいけないんだろう。
この世界に生まれた人たちがこの世界を守ればいいと思うのに。
聖女は偉い立場だとは言うけれど、神官宮以外の他の人たちと関わるわけでもない。
隊長としてキリルはそばに居てくれるけれど、終わってしまえば一緒にはいられない。
どう考えても私に聖女となるメリットはない。わかってる。
だけど、それでもいいと思ってしまった。
騙されているのだとしても、私を必要だと思ってくれるのならそれでいい。
聖女としてでも、キリルのそばにいたかった。
「私は騙されてなんかいない!
律、離して。私はキリルのところに帰る!」
大きな声でそういうと、顔を上げたキリルがハッとした顔をしている。
「そうだ…。ユウリは俺のところに帰ってくるんだ。
リツ、ユウリを離すんだ!」
「…なんでだよ…なんで、こんなやつのために尽くそうとするんだ。
悠里は…そんな尽くすようなタイプじゃなかっただろう!」
私を押さえている手からぷるぷると震えが伝わってくる。
律が本気で怒っているのがわかるけれど、こればかりはどうしようもない。
これは私が決めたことだ。私がどうするかは、私が決める。
律に怒られたからと言って、変える気は全くなかった。
「私のことはもうほっといてよ!」
「うるさい!だまれ!」
怒りが頂点に達したのか、律は小さなナイフを取り出し私の首元に突き付けた。
ひやりとした金属の感触が肌にふれる。
「リツ!何をしているんだ!ユウリを傷つける気か!」
「うるさい!悠里を傷つけたくなかったら、俺たちをこのまま行かせろ!
下手に動けば悠里が傷つくことになるぞ。」
「なんだと…?」
まさか…こんな風に脅されるとは。
首元に突き付けられているナイフは見えない。だけど、ふれている感触はある。
下手に動いたり、暴れたりしたら切れてしまうかもしれない。
律の顔は見えない…だけど、これは本気なんだと思った。
「いいか、そのままじっとしていろ…。」
キリルたちが動かないのを見た律が私を連れてまた移動しようとする。
まずい…このまま連れていかれたらキリルのところに戻れなくなるかもしれない。
そう思った時、急に身体が放り出された。
同時にカランと音が鳴って、小さなナイフが転がっていくのが見えた。
「うわぁぁぁぁ!!」
律の悲鳴が聞こえたと思ったら、少し離れた場所でのたうち回っていた。
何が起こったのかわからなかった。
立とうとしたら、放り出されたときに地面にぶつけた肩の痛みで動けない。
律が何か苦しんでいるように見えるが、いったい何が起きたのか?
「ユウリ!」
気がついたら、キリルに抱き上げられていた。
地面に落ちて泥だらけになってしまっているのにかまわず、抱きしめられる。
大きな優しい腕の中に閉じ込められ、その服にしがみついた。
「キリル!…どうしようかと思った。
…今、律に何があったの?」
「あれはユウリのヘビだ。」
「え?」
見たら、律の首に白い蛇が噛みついている。
…あれは…私の左腕にいた蛇?もしかして私を助けてくれた?
隊員たちが律を捕まえ縛り上げると、蛇はしゅるるんと私の腕に戻ってくる。
「…ありがとう。助けてくれたんだね。」
一瞬だけ、蛇の緑目が点滅するように光った。
どういたしましてと言われた気がして、蛇の身体を撫でる。
危険を察知するのは知っていたけれど、こんな風に動くとは思っていなかった。
助かって良かった…そう思ったら、身体の力が急激に抜けていく。
あれ…もしかして…魔力切れ?
「ユウリ!ユウリ!まずい…魔力切れを起こしかけている。」
あぁ、やっぱり魔力切れか。
あんなに無理しちゃダメって言われてたんだけどな…。
ごめん…キリル。しばらく聖女の仕事止まっちゃうかも…。
気が遠くなる…と感じた瞬間、唇に熱いものが押し付けられた。
熱気のようなものが口から入り込んでくる。
…それが魔力の塊だと気が付いて目をあけたら、そこにはキリルの顔があった。
え?
どういうこと?
押し付けられたのがキリルの唇で、キスされていたことに気が付いた時、
魔力切れではなく…衝撃で気を失ってしまっていた。
振り返ったら、神剣をかまえたままのキリルがいた。
ここまで走ってきたのか、めずらしく肩で息をしている。
後ろにいる隊員たちも汗をかいているのが見えた。
数名の隊員たちと共に私を探してくれていたようだ。
「キリル!」
「うるさい!悠里は俺の、俺たちの大事な人なんだ!
もうお前なんかに騙されて聖女なんて危険なことをさせるなんて嫌だ!」
律のその言葉にキリルの顔が曇る。
…騙しているという言葉に心当たりがあったのかもしれない。
わかってるから、そんな顔しなくていいよ、と言ってあげたくなる。
騙されているのかもしれないとは何となく思っていた。
どうして転移してきたからといって、私が聖女の仕事をしなくちゃいけないんだろう。
この世界に生まれた人たちがこの世界を守ればいいと思うのに。
聖女は偉い立場だとは言うけれど、神官宮以外の他の人たちと関わるわけでもない。
隊長としてキリルはそばに居てくれるけれど、終わってしまえば一緒にはいられない。
どう考えても私に聖女となるメリットはない。わかってる。
だけど、それでもいいと思ってしまった。
騙されているのだとしても、私を必要だと思ってくれるのならそれでいい。
聖女としてでも、キリルのそばにいたかった。
「私は騙されてなんかいない!
律、離して。私はキリルのところに帰る!」
大きな声でそういうと、顔を上げたキリルがハッとした顔をしている。
「そうだ…。ユウリは俺のところに帰ってくるんだ。
リツ、ユウリを離すんだ!」
「…なんでだよ…なんで、こんなやつのために尽くそうとするんだ。
悠里は…そんな尽くすようなタイプじゃなかっただろう!」
私を押さえている手からぷるぷると震えが伝わってくる。
律が本気で怒っているのがわかるけれど、こればかりはどうしようもない。
これは私が決めたことだ。私がどうするかは、私が決める。
律に怒られたからと言って、変える気は全くなかった。
「私のことはもうほっといてよ!」
「うるさい!だまれ!」
怒りが頂点に達したのか、律は小さなナイフを取り出し私の首元に突き付けた。
ひやりとした金属の感触が肌にふれる。
「リツ!何をしているんだ!ユウリを傷つける気か!」
「うるさい!悠里を傷つけたくなかったら、俺たちをこのまま行かせろ!
下手に動けば悠里が傷つくことになるぞ。」
「なんだと…?」
まさか…こんな風に脅されるとは。
首元に突き付けられているナイフは見えない。だけど、ふれている感触はある。
下手に動いたり、暴れたりしたら切れてしまうかもしれない。
律の顔は見えない…だけど、これは本気なんだと思った。
「いいか、そのままじっとしていろ…。」
キリルたちが動かないのを見た律が私を連れてまた移動しようとする。
まずい…このまま連れていかれたらキリルのところに戻れなくなるかもしれない。
そう思った時、急に身体が放り出された。
同時にカランと音が鳴って、小さなナイフが転がっていくのが見えた。
「うわぁぁぁぁ!!」
律の悲鳴が聞こえたと思ったら、少し離れた場所でのたうち回っていた。
何が起こったのかわからなかった。
立とうとしたら、放り出されたときに地面にぶつけた肩の痛みで動けない。
律が何か苦しんでいるように見えるが、いったい何が起きたのか?
「ユウリ!」
気がついたら、キリルに抱き上げられていた。
地面に落ちて泥だらけになってしまっているのにかまわず、抱きしめられる。
大きな優しい腕の中に閉じ込められ、その服にしがみついた。
「キリル!…どうしようかと思った。
…今、律に何があったの?」
「あれはユウリのヘビだ。」
「え?」
見たら、律の首に白い蛇が噛みついている。
…あれは…私の左腕にいた蛇?もしかして私を助けてくれた?
隊員たちが律を捕まえ縛り上げると、蛇はしゅるるんと私の腕に戻ってくる。
「…ありがとう。助けてくれたんだね。」
一瞬だけ、蛇の緑目が点滅するように光った。
どういたしましてと言われた気がして、蛇の身体を撫でる。
危険を察知するのは知っていたけれど、こんな風に動くとは思っていなかった。
助かって良かった…そう思ったら、身体の力が急激に抜けていく。
あれ…もしかして…魔力切れ?
「ユウリ!ユウリ!まずい…魔力切れを起こしかけている。」
あぁ、やっぱり魔力切れか。
あんなに無理しちゃダメって言われてたんだけどな…。
ごめん…キリル。しばらく聖女の仕事止まっちゃうかも…。
気が遠くなる…と感じた瞬間、唇に熱いものが押し付けられた。
熱気のようなものが口から入り込んでくる。
…それが魔力の塊だと気が付いて目をあけたら、そこにはキリルの顔があった。
え?
どういうこと?
押し付けられたのがキリルの唇で、キスされていたことに気が付いた時、
魔力切れではなく…衝撃で気を失ってしまっていた。
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