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聖女の旅立ち
13.森の奥へ
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「…どうしよう。大丈夫かな。」
「悠里、顔色悪いよ。本気でまずい?」
これは何とかなりそうな気がしない。
馬のほうを見たらブハッと息を吐いていて、思わず後ろに後ずさる。
…馬のほうも私を受け入れてくれなさそう…
そう思っていたら、急に身体がふわっと浮いた。
「え?」
「落ち着いて。魔術で浮き上がらせているだけだから。」
「ええ?」
まるで透明人間に横抱きにされているように宙に浮いている。
服もスカートの中が見えないように膝の裏あたりで支えられているように感じる。
「ほら、大丈夫。俺のところに来ればもう平気でしょ?」
「え?」
気がついたら、馬に乗っているキリルの腕の中にいた。
横すわりで馬に乗せられているようだけど、鞍がやわらかいクッションのような感じで、
あまり馬の上に乗っている気がしない。
「前を向ける?向けなかったら俺のほうを見ていていいから。」
「う、うん。」
キリルの服にしがみつきながら、前を見てみる。
思った以上に視点が高くて少し怖い。
「馬の上って高いんだね…。」
「そうだね。でも、慣れるまではゆっくり進むから大丈夫。
カイン兄さんも準備いい?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「悠里、大丈夫?」
「あ、うん。」
同じようにカインさんの馬に乗せられている美里はこちらを向いている。
私と美里が話しながら行けるように、お互いのほうを向くように乗せてくれたらしい。
上から見る馬はたまにブルブル震えているけれど、そこまで怖くない。
ブルっと馬が息を吐くたびにキリルが大丈夫って背中を撫でてくれる。
何度かそんなことを繰り返していると、もう怖くなくなっていた。
カポカポとゆっくり前に進むのに慣れてきたら、森の中を馬に乗って歩くのが楽しくなってくる。
馬車が一台余裕で通れそうな道幅の舗装されていない道をゆっくりと進む。
木々の葉からこぼれてくる光がキラキラして、とても綺麗だった。
「綺麗なところだね。」
「うん、ピクニックとかで来たなら良かったのにね。」
「ふふ。」
いつも通りのんびりとした美里に笑ってしまう。
今から瘴気を消すのにとは思うけど、気負いすぎてもいけないのかもしれない。
「この鈴は何度か使ったら壊れてしまうものなんだ。
替えの鈴もいくつか用意してあるけど、そのうち足りなくなる。
だから、また新しく鈴を作ることになるから、
どこか改良してほしいところがあったら言ってほしい。」
「改良?そっか。実際に使ってみないとわからないよね。」
「これ、使ってる間に壊れちゃったらどうするの?
私たちが歌うしかない?」
「え。そっか。歌でもいいんだっけ。」
「後ろの隊員たちが替えを持っているから平気だけど、
万が一の時には歌ったほうがいいかもしれないな。」
真面目な顔をしたカインさんに言われ、歌も考えておかなきゃいけないんだと悩む。
すぐに歌えるような曲はと考えてみたけれど、何も思いつかない。
「美里…私、カラオケ苦手だった。
ほとんど行ったことも無い。美里は?」
「私は親戚の集まりとかで行ったことがある。
でも、歌うのは得意ではないなぁ。」
「じゃあ、極力歌わない方向でお願いします。」
「そだね。」
苦手なものはやっぱり苦手。
無理に歌うくらいなら、鈴を途中で壊さないように頑張ろう。
手に持っていた鈴の筒を強く握ったら、シャンと音がした。
その音が森の奥に吸い込まれていく感じがして、その先を見つめる。
「もしかして、近い?」
「何か感じた?」
「鈴の音が向こうに吸い込まれた感じがした。」
「じゃあ、近いな。」
さっきまでは明るくて綺麗だった森が、薄暗いおどろおどろしいものへと変わっていく。
薄墨が風景ににじんできているように見える。
道の奥から、先に進んでいた隊員たちが二人ほど戻ってきた。
「悠里、顔色悪いよ。本気でまずい?」
これは何とかなりそうな気がしない。
馬のほうを見たらブハッと息を吐いていて、思わず後ろに後ずさる。
…馬のほうも私を受け入れてくれなさそう…
そう思っていたら、急に身体がふわっと浮いた。
「え?」
「落ち着いて。魔術で浮き上がらせているだけだから。」
「ええ?」
まるで透明人間に横抱きにされているように宙に浮いている。
服もスカートの中が見えないように膝の裏あたりで支えられているように感じる。
「ほら、大丈夫。俺のところに来ればもう平気でしょ?」
「え?」
気がついたら、馬に乗っているキリルの腕の中にいた。
横すわりで馬に乗せられているようだけど、鞍がやわらかいクッションのような感じで、
あまり馬の上に乗っている気がしない。
「前を向ける?向けなかったら俺のほうを見ていていいから。」
「う、うん。」
キリルの服にしがみつきながら、前を見てみる。
思った以上に視点が高くて少し怖い。
「馬の上って高いんだね…。」
「そうだね。でも、慣れるまではゆっくり進むから大丈夫。
カイン兄さんも準備いい?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「悠里、大丈夫?」
「あ、うん。」
同じようにカインさんの馬に乗せられている美里はこちらを向いている。
私と美里が話しながら行けるように、お互いのほうを向くように乗せてくれたらしい。
上から見る馬はたまにブルブル震えているけれど、そこまで怖くない。
ブルっと馬が息を吐くたびにキリルが大丈夫って背中を撫でてくれる。
何度かそんなことを繰り返していると、もう怖くなくなっていた。
カポカポとゆっくり前に進むのに慣れてきたら、森の中を馬に乗って歩くのが楽しくなってくる。
馬車が一台余裕で通れそうな道幅の舗装されていない道をゆっくりと進む。
木々の葉からこぼれてくる光がキラキラして、とても綺麗だった。
「綺麗なところだね。」
「うん、ピクニックとかで来たなら良かったのにね。」
「ふふ。」
いつも通りのんびりとした美里に笑ってしまう。
今から瘴気を消すのにとは思うけど、気負いすぎてもいけないのかもしれない。
「この鈴は何度か使ったら壊れてしまうものなんだ。
替えの鈴もいくつか用意してあるけど、そのうち足りなくなる。
だから、また新しく鈴を作ることになるから、
どこか改良してほしいところがあったら言ってほしい。」
「改良?そっか。実際に使ってみないとわからないよね。」
「これ、使ってる間に壊れちゃったらどうするの?
私たちが歌うしかない?」
「え。そっか。歌でもいいんだっけ。」
「後ろの隊員たちが替えを持っているから平気だけど、
万が一の時には歌ったほうがいいかもしれないな。」
真面目な顔をしたカインさんに言われ、歌も考えておかなきゃいけないんだと悩む。
すぐに歌えるような曲はと考えてみたけれど、何も思いつかない。
「美里…私、カラオケ苦手だった。
ほとんど行ったことも無い。美里は?」
「私は親戚の集まりとかで行ったことがある。
でも、歌うのは得意ではないなぁ。」
「じゃあ、極力歌わない方向でお願いします。」
「そだね。」
苦手なものはやっぱり苦手。
無理に歌うくらいなら、鈴を途中で壊さないように頑張ろう。
手に持っていた鈴の筒を強く握ったら、シャンと音がした。
その音が森の奥に吸い込まれていく感じがして、その先を見つめる。
「もしかして、近い?」
「何か感じた?」
「鈴の音が向こうに吸い込まれた感じがした。」
「じゃあ、近いな。」
さっきまでは明るくて綺麗だった森が、薄暗いおどろおどろしいものへと変わっていく。
薄墨が風景ににじんできているように見える。
道の奥から、先に進んでいた隊員たちが二人ほど戻ってきた。
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