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聖女の旅立ち
12.対決の朝
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次の日の目覚めはすっきりしていた。
いつもと変わらない時間に起きて、朝食を作る。
朝食は私たちだけで食べるようで、二人で好きな具材を入れてホットサンドを作る。
蒸し鶏とチーズとアボカドを入れたホットサンドにかぶりついて、
冷たくしたミルクティーを飲む。
チーズとアボカドがトロっとしていて、カリっと焼けたパンも美味しい。
お腹いっぱいに食べて満足したころ、キリルに連絡が入った。
「最初の瘴気を確認したと報告が来た。
すぐに行こう。」
「わかった。」
近くのテーブルに置いてあった鈴を持ち、テントの外に出る。
隊員が私たちを警護しているのか、いつもよりも人が多いのがわかる。
私たちを囲むように隊員が立っているが、皆外側を向いて警戒している。
何かあったのか、ピリピリしたものを感じた。
「何か聞こえる…?」
遠くから男性の叫ぶような声と、女性の泣き声が聞こえる?
ここからは見えないけど、誰の声なんだろう。
「あれはキリアル子爵夫妻と娘のようだよ。」
「え?子爵?どうしてここに?」
「嘆願かな。ほら、一番先に瘴気を発生した不名誉な場所になったわけだ。
平民を虐げていたわけではないと訴えに来ているんだ。
それを俺たちから国王に言ってもらおうと思ってるんだよ。」
「小麦の不作が続いたからなんだっけ?」
「多分ね。そういうのを調べるのは俺たちの仕事じゃないし、
国王に何か言うわけでもないんだけどね。
…どうしても感情的に動いてしまうようだな。
俺たちならなんとかできると思っているんだろうけど。
会うわけないし、話を聞くわけも無いんだが。」
「そっか。そう言ってたもんね。」
ここに来るまでにきちんと危険性について教えてもらっていなかったら、
話くらい聞こうとか挨拶くらいはしようとか言ってたかもしれない。
だけど、少しの間でも近寄ってしまったら他の人たちが迷惑する。
こうして私たちを守ろうとしてくれている隊員たちのためにも、
さっきの声は聞かなかったことにした。
「で、瘴気の発生場所はここから近いの?
もう一つの拠点に移動する?」
「ここからで大丈夫。
今、馬の用意をしてもらっている。
もうすぐミサトと兄さんも起きて来るんじゃないかな。」
「馬で行くんだ!
あれ、美里たちまだ寝てたんだね。」
「どうやらまた眠れなかったみたいだよ。」
苦笑いしているキリルに、同じような表情を返す。
そっか。また興奮して夜に眠れなかったんだ…。
そんなことを話していたら、
眠そうな顔の美里と寝不足でも王子様なカインさんがテントから出てくる。
「おはよう、美里、カインさん。
また眠れなかったんだって?大丈夫?」
「うん、また夜に興奮して…朝になってから寝たの。
でも、今日は三時間くらいは寝たから大丈夫かな。」
「朝ごはんは?」
「甘いホットチョコ飲んできた。」
「それだけ?お腹すいちゃうよ?」
「だよねぇ~あきらめるわ。お昼ご飯に期待する。
だから、早く行って頑張って終わらせよう!」
「もう。そんな理由?」
くすくす笑っている間に、キリルとカインさんが馬を一頭ずつ引いてくる。
遠くから見ている分にはわからなかったけれど、近づくとかなり大きい。
自分の背よりも大きいかもしれない馬に、後ずさりしてしまう。
「う、馬ってこんなに大きいんだ?」
「大きい馬だね!普通の馬よりも大きいかも。」
「美里は平気なの?」
「中学の時に乗馬体験で乗ったことある。
一人では乗れないけど、そこまで怖くないよ。」
「そうなんだ。こんなに近くで見るのは初めてだし、
考えてみたら動物にふれたことない…かも。」
「そうなの!?」
考えてみたら、動物園も水族館も遊園地も行ったことがない。
親が子供とどこかに行くっていう発想が無い人だったから、
動物とふれあえるような場所には行ったことが無かった。
ついでに自宅はもちろん、律の家も一花の家もペットがいなかった。
学校でも動物を飼うようなことはなかったから、まったく関わっていなかった。
「…どうしよう。大丈夫かな。」
「悠里、顔色悪いよ。本気でまずい?」
いつもと変わらない時間に起きて、朝食を作る。
朝食は私たちだけで食べるようで、二人で好きな具材を入れてホットサンドを作る。
蒸し鶏とチーズとアボカドを入れたホットサンドにかぶりついて、
冷たくしたミルクティーを飲む。
チーズとアボカドがトロっとしていて、カリっと焼けたパンも美味しい。
お腹いっぱいに食べて満足したころ、キリルに連絡が入った。
「最初の瘴気を確認したと報告が来た。
すぐに行こう。」
「わかった。」
近くのテーブルに置いてあった鈴を持ち、テントの外に出る。
隊員が私たちを警護しているのか、いつもよりも人が多いのがわかる。
私たちを囲むように隊員が立っているが、皆外側を向いて警戒している。
何かあったのか、ピリピリしたものを感じた。
「何か聞こえる…?」
遠くから男性の叫ぶような声と、女性の泣き声が聞こえる?
ここからは見えないけど、誰の声なんだろう。
「あれはキリアル子爵夫妻と娘のようだよ。」
「え?子爵?どうしてここに?」
「嘆願かな。ほら、一番先に瘴気を発生した不名誉な場所になったわけだ。
平民を虐げていたわけではないと訴えに来ているんだ。
それを俺たちから国王に言ってもらおうと思ってるんだよ。」
「小麦の不作が続いたからなんだっけ?」
「多分ね。そういうのを調べるのは俺たちの仕事じゃないし、
国王に何か言うわけでもないんだけどね。
…どうしても感情的に動いてしまうようだな。
俺たちならなんとかできると思っているんだろうけど。
会うわけないし、話を聞くわけも無いんだが。」
「そっか。そう言ってたもんね。」
ここに来るまでにきちんと危険性について教えてもらっていなかったら、
話くらい聞こうとか挨拶くらいはしようとか言ってたかもしれない。
だけど、少しの間でも近寄ってしまったら他の人たちが迷惑する。
こうして私たちを守ろうとしてくれている隊員たちのためにも、
さっきの声は聞かなかったことにした。
「で、瘴気の発生場所はここから近いの?
もう一つの拠点に移動する?」
「ここからで大丈夫。
今、馬の用意をしてもらっている。
もうすぐミサトと兄さんも起きて来るんじゃないかな。」
「馬で行くんだ!
あれ、美里たちまだ寝てたんだね。」
「どうやらまた眠れなかったみたいだよ。」
苦笑いしているキリルに、同じような表情を返す。
そっか。また興奮して夜に眠れなかったんだ…。
そんなことを話していたら、
眠そうな顔の美里と寝不足でも王子様なカインさんがテントから出てくる。
「おはよう、美里、カインさん。
また眠れなかったんだって?大丈夫?」
「うん、また夜に興奮して…朝になってから寝たの。
でも、今日は三時間くらいは寝たから大丈夫かな。」
「朝ごはんは?」
「甘いホットチョコ飲んできた。」
「それだけ?お腹すいちゃうよ?」
「だよねぇ~あきらめるわ。お昼ご飯に期待する。
だから、早く行って頑張って終わらせよう!」
「もう。そんな理由?」
くすくす笑っている間に、キリルとカインさんが馬を一頭ずつ引いてくる。
遠くから見ている分にはわからなかったけれど、近づくとかなり大きい。
自分の背よりも大きいかもしれない馬に、後ずさりしてしまう。
「う、馬ってこんなに大きいんだ?」
「大きい馬だね!普通の馬よりも大きいかも。」
「美里は平気なの?」
「中学の時に乗馬体験で乗ったことある。
一人では乗れないけど、そこまで怖くないよ。」
「そうなんだ。こんなに近くで見るのは初めてだし、
考えてみたら動物にふれたことない…かも。」
「そうなの!?」
考えてみたら、動物園も水族館も遊園地も行ったことがない。
親が子供とどこかに行くっていう発想が無い人だったから、
動物とふれあえるような場所には行ったことが無かった。
ついでに自宅はもちろん、律の家も一花の家もペットがいなかった。
学校でも動物を飼うようなことはなかったから、まったく関わっていなかった。
「…どうしよう。大丈夫かな。」
「悠里、顔色悪いよ。本気でまずい?」
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