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聖女としての働き

18.助けを求められる

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ダニエル王子が神官宮の受付で騒いで暴れているという連絡があったのは、
いつものように四人で訓練場にいる時だった。
あまり私たちに聞かせたくないのか、少し離れたところでキリルが報告を受けている。
と言っても、隊員の声が大きいので聞こえてしまっているけれど。


「ダニエルが暴れている?イチカもいるのか?」

「いいえ、ダニエル様だけのようです。」

不機嫌そうに聞いた質問に答えた隊員は、緊張したように早口で答えた。

「ダニエルが一人?何を言って暴れているかわかるか?」

「…あの、あのイチカという女性がさらわれたと言っています。」

「は?」

「差し入れを買い物に行くのを止められたので、
 少し離れた場所にある湖に遊びに連れて行ったそうなんです。
 その帰り道、馬車を集団に囲まれ、あの女性だけが連れ去られてしまったと。
 それで、キリル様に助けを求めに来たようです。」

「どういうことだ…?」

一花が連れ去られた?どういうこと?
異世界人だから?それとも女性だから?
この国って、それほど治安悪いところだった?

「美里、どうしよう。一花がさらわれたって…。
 それって、まずいんじゃ。」

「とりあえず、あの王子に話を聞くしかないんじゃない?
 さらわれたって言われても、状況がよくわからないし。
 カイン、私たちも受付まで行っちゃダメ?」

「…できればダニエルには会わせたくないなぁ。
 暴れているみたいだし、からまれたり、後から逆恨みされるかもしれない。」

「じゃあ、隠れて話を聞いているのは?
 キリルさんと話しているところをこっそり聞くだけ。」

「……うーん、それなら。絶対に出てこないって約束できる?」

「する!ね、悠里もそれでいい?」

「うん。わかった。約束するよ。」



隊員が走り去った後、キリルが私たちのところへと戻ってくる。
その顔にはうんざりと書かれているようだった。

「ちょっと受付でトラブルがあったみたいだ。
 受付まで行って話してくるから、
 ユウリは絶対にミサトとカイン兄さんから離れないで。」

「わかったわ。」

「すぐに戻ってくるから!」

「大丈夫だよ、絶対に美里とカインさんから離れないから。」

「じゃあ、行ってくる。」

走って受付へと向かったキリルを見送り、美里とカインさんへと振り返る。

「では、カインさんお願いします。
 隠れて受付が見える場所に案内してください!」

「さぁ、早く!」

「絶対に声は出さないで。約束してよ。」

「「はーい。」」


カインさんの案内で裏道のような場所を通って、受付近くの面会室の裏へと入る。
大きな鏡の裏側のようで、面会室の様子がはっきりと見えていた。
声もすべて筒抜けのようだ。
美里と顔を見合わせて、お互いに指で静かにのポーズをした。
ここで話したら面会室まで聞こえてしまう。


「だから、お前だけなんだ、頼れるのは!
 頼む。イチカを助けてくれ!」

面会室では土下座の状態でダニエル王子が頭を下げている。
それでもキリルの厳しい表情は変わらない。

「俺は言ったよな。イチカを外に連れ出すなと。
 その意味がわからなかったのか?」

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