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神の力
7.夜会
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王宮へと着いた後、夜会が行われているという大広間へと案内される。
扉を開ける前から、騒がしい音が漏れ聞こえていた。
私たちの到着を知らせる声が聞こえた後、大きな扉が両側から開かれる。
あれだけ騒がしかった広間が静まり返り、こちらを一斉に見たのがわかった。
「大丈夫、行こう。」
少し怯んだ私を励ますように、キリルの手が私の背を支えてくれる。
うなずいて足を踏み出した。
人々が私たちの行く手を阻まないように左右へとわかれていく。
道のように空いた場所をそのまま進むと、奥に私たち用の席が用意されていた。
宝石がはめこまれた彫刻のような二人掛けの椅子がニ脚用意されている。
…豪華すぎるカップルシート、なんて思ってしまったけれど、
聖女と隊長が対になっているのはわかっているはずで、
一緒に座らせるのが当然だと思っているからこそこの椅子なんだと思う。
ドレスがしわにならないかななんて心配しながら座ると、
その隣にキリルが座って私を見ている。
「貴族のほうを向くのが怖かったら、
ずっと俺を見ていて。」
「…それでいいの?」
「大丈夫。」
座ったのはいいけれど、前を向くのは怖かった。
聖女だから期待されているのはわかるけれど、一部それだけじゃないのを感じる。
殺意…まではいかないにしても、かなりの悪意を感じる。
そういえば聖女を消してこの世界を滅ぼそうとする者もいないわけじゃない、
そんなことを最初の頃に聞いた気がする。
この世界の人もみんな同じ考えでいるわけじゃない。
それはそうだよね。向こうの世界だって平和を望む人ばかりじゃなかった。
一時間…キリルを見ていればいいかな。
普段見れないキリルの正装を見ているのなら、
一時間くらいあっという間に終わる気がする。
「それにしてもなめてるな…。」
ぼそりとカインさんの低い声が聞こえた。
キリルにだけ聞こえるように話したいのかもしれないけれど、
カインさんとキリルの間に美里と私が座っている。
聞きたくなくても聞こえてしまうのは仕方なかった。
「前の聖女が来てから四十年も空いてしまった。
だから、もしかしたら教育が足りないかもしれないとは思っていた。」
「だとしても…。」
「まぁ、後で抗議してくるよ。
なめたままでいさせることはない。」
「それならいい。」
不穏なものを感じてキリルの服を少しだけ引っ張る。
「ん?どうかした?」と聞いてくれる顔はいつも通り優しくて、少し安心する。
「何かダメだったの?」
「気にしなくてもいいけど、気になる?」
「うん。教えてもいいなら聞かせて?」
「王族が一人も入場していないんだ。
本来なら、王族全員がいるうえで聖女の入場になる。
聖女のほうが身分が上だからね。
それを、王族が一人もいなかったから兄さんがなめているって言ったんだ。」
「そうなんだ…大丈夫なの?」
「後日、きっちり締め上げて来るよ。」
いい笑顔でそう言われたけれど、いったい誰を締め上げてくるんだろう。
ここで聞いたらまずいような気がして、それ以上は聞かないことにした。
席について三十分も過ぎるとこの場にも慣れて飽きてくる。
下手なことはできないし、会話もほとんどしない。
座っているだけだと眠くなる。
ぼーっとしたまま過ごしていたら、隣から美里の声が聞こえた。
「喉乾いちゃった。
何か飲み物欲しいな。」
「じゃあ、俺が取ってこようか。」
「うーん。何があるのか見てから選びたい。
自分で取ってきちゃダメ?」
「それなら一緒に取りに行こうか。」
どうやら飲み物が欲しくなったようで、
飲み物を出しているテーブルに取りに行くようだ。
ここから見たらグラスだらけで、何が置いてあるのかわからない。
見に行って選びたくなる気持ちもわかる。
「悠里は飲み物いらない?」
「私はいいよ。
さっき来る前にキリルの淹れたお茶を飲んできたから。」
「わかった。じゃあ、ちょっと取りに行ってくるね。」
軽く手を振って美里とカインさんを見送る。
二人は貴族たちがたくさんいるのにも関わらず、気にせずに歩いていく。
意外と美里は人前とか気にしないタイプだったようだ。
なんとなく二人の姿を見続けていると、
飲み物を取った後、二人の足がその場で止まった。
あれ?と思っていたら、カインさんが誰かと話しているようだ。
青いドレスを着た華やかな令嬢。…黒い影を背負っているように見える。
「キリル…あれ、大丈夫かな。」
「カイン兄さんがいるから大丈夫だとは思う。
が、めんどくさい令嬢につかまったのには変わらないな。
すぐに戻ってこれるといいんだが。」
「知っている人?」
「うーん…カイン兄さんの婚約者候補だった人。」
扉を開ける前から、騒がしい音が漏れ聞こえていた。
私たちの到着を知らせる声が聞こえた後、大きな扉が両側から開かれる。
あれだけ騒がしかった広間が静まり返り、こちらを一斉に見たのがわかった。
「大丈夫、行こう。」
少し怯んだ私を励ますように、キリルの手が私の背を支えてくれる。
うなずいて足を踏み出した。
人々が私たちの行く手を阻まないように左右へとわかれていく。
道のように空いた場所をそのまま進むと、奥に私たち用の席が用意されていた。
宝石がはめこまれた彫刻のような二人掛けの椅子がニ脚用意されている。
…豪華すぎるカップルシート、なんて思ってしまったけれど、
聖女と隊長が対になっているのはわかっているはずで、
一緒に座らせるのが当然だと思っているからこそこの椅子なんだと思う。
ドレスがしわにならないかななんて心配しながら座ると、
その隣にキリルが座って私を見ている。
「貴族のほうを向くのが怖かったら、
ずっと俺を見ていて。」
「…それでいいの?」
「大丈夫。」
座ったのはいいけれど、前を向くのは怖かった。
聖女だから期待されているのはわかるけれど、一部それだけじゃないのを感じる。
殺意…まではいかないにしても、かなりの悪意を感じる。
そういえば聖女を消してこの世界を滅ぼそうとする者もいないわけじゃない、
そんなことを最初の頃に聞いた気がする。
この世界の人もみんな同じ考えでいるわけじゃない。
それはそうだよね。向こうの世界だって平和を望む人ばかりじゃなかった。
一時間…キリルを見ていればいいかな。
普段見れないキリルの正装を見ているのなら、
一時間くらいあっという間に終わる気がする。
「それにしてもなめてるな…。」
ぼそりとカインさんの低い声が聞こえた。
キリルにだけ聞こえるように話したいのかもしれないけれど、
カインさんとキリルの間に美里と私が座っている。
聞きたくなくても聞こえてしまうのは仕方なかった。
「前の聖女が来てから四十年も空いてしまった。
だから、もしかしたら教育が足りないかもしれないとは思っていた。」
「だとしても…。」
「まぁ、後で抗議してくるよ。
なめたままでいさせることはない。」
「それならいい。」
不穏なものを感じてキリルの服を少しだけ引っ張る。
「ん?どうかした?」と聞いてくれる顔はいつも通り優しくて、少し安心する。
「何かダメだったの?」
「気にしなくてもいいけど、気になる?」
「うん。教えてもいいなら聞かせて?」
「王族が一人も入場していないんだ。
本来なら、王族全員がいるうえで聖女の入場になる。
聖女のほうが身分が上だからね。
それを、王族が一人もいなかったから兄さんがなめているって言ったんだ。」
「そうなんだ…大丈夫なの?」
「後日、きっちり締め上げて来るよ。」
いい笑顔でそう言われたけれど、いったい誰を締め上げてくるんだろう。
ここで聞いたらまずいような気がして、それ以上は聞かないことにした。
席について三十分も過ぎるとこの場にも慣れて飽きてくる。
下手なことはできないし、会話もほとんどしない。
座っているだけだと眠くなる。
ぼーっとしたまま過ごしていたら、隣から美里の声が聞こえた。
「喉乾いちゃった。
何か飲み物欲しいな。」
「じゃあ、俺が取ってこようか。」
「うーん。何があるのか見てから選びたい。
自分で取ってきちゃダメ?」
「それなら一緒に取りに行こうか。」
どうやら飲み物が欲しくなったようで、
飲み物を出しているテーブルに取りに行くようだ。
ここから見たらグラスだらけで、何が置いてあるのかわからない。
見に行って選びたくなる気持ちもわかる。
「悠里は飲み物いらない?」
「私はいいよ。
さっき来る前にキリルの淹れたお茶を飲んできたから。」
「わかった。じゃあ、ちょっと取りに行ってくるね。」
軽く手を振って美里とカインさんを見送る。
二人は貴族たちがたくさんいるのにも関わらず、気にせずに歩いていく。
意外と美里は人前とか気にしないタイプだったようだ。
なんとなく二人の姿を見続けていると、
飲み物を取った後、二人の足がその場で止まった。
あれ?と思っていたら、カインさんが誰かと話しているようだ。
青いドレスを着た華やかな令嬢。…黒い影を背負っているように見える。
「キリル…あれ、大丈夫かな。」
「カイン兄さんがいるから大丈夫だとは思う。
が、めんどくさい令嬢につかまったのには変わらないな。
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「知っている人?」
「うーん…カイン兄さんの婚約者候補だった人。」
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