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6章 つながる世界

8.公表された日

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次の日、学園に転移すると、周りが俺を見る目が違っていた。
誰もが俺に話しかけたいが話しかけられなくて困っているような感じだった。
見かねたジーンが、大きな声で叫んだ。


「リオル様にお祝いの言葉を述べるだけなら話しかけてもいいそうだ。」

「お、おい。」

「良いから、これくらい祝ってもらっておけよ。」


小声でブランにそう言われ、仕方なくうなずく。
俺がうなずいたことで許可が下りたのだと判断したのだろう。
近くにいた令息たちから祝われる。


「おめでとうございます!ミーシャ様とお幸せになってください!」

「リオル様、おめでとうございます!僕もなんだか嬉しいです!」


たくさんの祝いの言葉に、少し驚いたが素直に受け取ってありがとうと返す。
同じ学年の者たちに、こんなに祝われるとは思っていなかったが、意外と嬉しいものなんだなと思った。


「きっとミーシャのほうもすごいことになったるだろうな。」

「だろうな。
 昨日父上たちと話した後、離宮に寄ってミーシャにも話してきた。
 心の準備が必要かと思って。大丈夫そうだったけど。」

「まぁ、ミーシャなら大丈夫だろう。
 一緒にいるレイモンドの方が困ってそうだけど。」

「昼に謝っておくか…。」


その日の授業は生徒も先生もどこか浮ついていて、あまり集中できなかった。
一応王位継承権を持っていたけれど、3位だし公爵家の嫡男だし、あまり関係ないと思っていた。
同じように王位継承権を持っていても4位だし側妃の子だし、ミーシャについても大丈夫だと思ってけど、違うのだろうか。
こういう貴族らしい考え方は少し苦手で、まだミーシャのほうがわかっているだろう。
とりあえずは騒がせてしまったことをレイモンドに謝ろう。


「というわけで、すまんな。騒がしかっただろう。」

「まったくだ…もう少し心の準備する時間をくれてもいいだろう。
 俺が聞いたのは今朝だったんだぞ。」

「いやでも、決まったの昨日の夜だしな?ミーシャが知ったのも昨日の夜だぞ。
 当事者がそれならレイモンドが今朝でも仕方なくないか?」

「…公爵と宰相のせいだな。後で苦情を言っておこう。」

「まぁ、そう怒るなよ。
 エリザが暴走しなければ、まだ公表するつもりじゃなかったんだから。」

「その暴走も聞いたよ…何を考えてるんだか。」

「うわっ。やば。話してたら来たよ、どうするリオル!」


昨日と同様にエリザが食堂に現れたのが見えた。取り乱しているように見えるが、周りの令息たちもどうしていいかわからないようだ。


「リオル!どうして!?
 あなたと結婚するのは私でしょう?どうしてミーシャなのよ!
 違うって、はっきり言って!」

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