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6章 つながる世界
3.直接対決
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「ここいい?空いている?」
「ええ、空いているわ。」
学園の食堂は身分別にはなっていない。
食事をするために個室を借りることもできるのだが、中庭に面したこの席が気に入っている。6人で座れる席に、俺とジーンとブランで来て、3人で座っているレミリアに声をかけた。レミリアは第一王子のレイモンドと第一王女のミーシャと座っていた。レイモンドは王妃の子で、王太子になることが決まっている。ミーシャは側妃の子で、王位継承順位は俺よりも下の4位だ。2位には王妃の子で第二王子のフランソワ王子がいる。フランソワ王子はまだ11歳なので学園には通っていない。
俺とレイモンド、ミーシャが仲良くしているのを見せるのは仕事でもあった。
こうしてレイモンドが王太子になることに俺が不満を持っていないと示さないと、俺を王位につけようとする者たちが勝手なことを言い始める。それを防止する役目もあって、こうして個室ではないところで一緒に食事をすることにしていた。
あくまでも、レミリアはジーンとブランの妹で、ミーシャの話し相手、ということになっている。俺の妹だと公表されていなくて良かったと心から思う。もし妹だとわかっていたら、レイモンドの婚約者だと思われていただろう。もちろん、レイモンドはレミリアとシオンのことも知っているので、そんなバカなことは考えもしていない。レイモンドは王妃に似ていて、きちんと判断できる王子なので、婚約者候補には他の公爵家の令嬢を選ぶだろう。ただ、13歳の今の時点では交流するのは早いと判断しているようで、まだ婚約者選びは始まっていない。
「またエリザ教が来たって?」
「ああ、宰相から聞いた?」
「父上から。朝めずらしく一緒に食事したから。心配していたよ。
リオルがめんどくさくなってないかって。」
「ぷぷっ。陛下、わかってんな~。」「さすがだな~陛下。」
「ホントだよ、すごくめんどくさい。父上を恨みそうになるよ、ホント。
王位継承権放棄するんだから、これくらいの仕事は引き受けろってさ。
まぁ、そう言われたらやるしかないよね。
後のめんどくさいことはレイモンドに任せるわけだしさ。」
「おーい。俺だけに任せる気かよ。少しは手伝ってくれ。
リオルはもちろん、ジーンとブランもいなくなられると困るんだけど。」
「わかってるよ、それは。手伝えることは手伝うよ。」
「ああ、頼んだよ…って、あれエリザじゃないか?どうしてここに?」
食堂の入り口付近が騒がしいと思ったら、令息たちを引き連れたエリザが入ってくるところだった。いつもならサロンにいるはずなのに、何をしに来たのか。
警戒していると、エリザはまっすぐこちらに向かってきている。端の席に座っていたシーンとブランがいつでも立ち上がれるような体勢になっている。
「ごきげんよう?」
「何か用か?」
俺とレイモンドはエリザの方を見もせず、ジーンが返事をする。エリザの身分から考えて、この席で話しかけていいのはジーンとブランだけだ。いや、本当はジーンとブランも話しけてはいけないのだが、表向きは俺の侍従になっているし、端の席に座っている。レミリアもいるが、反対側の端にいるし、ミーシャへの影響を考えると答えるわけにはいかなかった。
「侍従ごときが無礼だぞ。
エリザ王女はレイモンド王子とリオル様に話しかけているんだ。
邪魔をするんじゃない。」
エリザの隣にいた令息が声を張り上げる。
食堂中に響いたので、あちこちからこちらをうかがう様子が見えた。
エリザが人前でレイモンドや俺に話しかけてくることは無かった。当たり前だ。
話しかけていい立場ではないのだから。
いくら血のつながりがあるとはいえ、一緒に考えてはいけないのだから。
「お前こそ、無礼だぞ。
身分の無いものが王族に話しかけていいと思っているのか?」
「えっ?…身分が無い…ってなんだ?」
知りもしなかったのか。どこの令息か知らないが、何も知らないものを連れてきたようだ。
さて、ますます俺たちが相手にするわけにはいかなくなったな…。
「ひどいですわ。従姉だし、姉でしょう?
そんなに嫌わなくても良いと思うのだけど。
一緒に住んでいないのだから、せめて学園でお話くらい…。」
従姉だし、姉。ただ血のつながりだけを見たらそうなのだろう。
エリザの周りの令息たちはそれに応じない俺たちが悪いと思っているようだ。
これはジーンとブランでは手に余るかもしれない。
だが、俺が話すのも…どうしたものか。
「あら、聞き捨てならないわ?
リオル様が従弟でレイモンド様が弟だと、そこのものは言うのかしら?」
まさかのレミリアだった…あぁ、こいつが黙ってられないの忘れてたよ。
「ええ、空いているわ。」
学園の食堂は身分別にはなっていない。
食事をするために個室を借りることもできるのだが、中庭に面したこの席が気に入っている。6人で座れる席に、俺とジーンとブランで来て、3人で座っているレミリアに声をかけた。レミリアは第一王子のレイモンドと第一王女のミーシャと座っていた。レイモンドは王妃の子で、王太子になることが決まっている。ミーシャは側妃の子で、王位継承順位は俺よりも下の4位だ。2位には王妃の子で第二王子のフランソワ王子がいる。フランソワ王子はまだ11歳なので学園には通っていない。
俺とレイモンド、ミーシャが仲良くしているのを見せるのは仕事でもあった。
こうしてレイモンドが王太子になることに俺が不満を持っていないと示さないと、俺を王位につけようとする者たちが勝手なことを言い始める。それを防止する役目もあって、こうして個室ではないところで一緒に食事をすることにしていた。
あくまでも、レミリアはジーンとブランの妹で、ミーシャの話し相手、ということになっている。俺の妹だと公表されていなくて良かったと心から思う。もし妹だとわかっていたら、レイモンドの婚約者だと思われていただろう。もちろん、レイモンドはレミリアとシオンのことも知っているので、そんなバカなことは考えもしていない。レイモンドは王妃に似ていて、きちんと判断できる王子なので、婚約者候補には他の公爵家の令嬢を選ぶだろう。ただ、13歳の今の時点では交流するのは早いと判断しているようで、まだ婚約者選びは始まっていない。
「またエリザ教が来たって?」
「ああ、宰相から聞いた?」
「父上から。朝めずらしく一緒に食事したから。心配していたよ。
リオルがめんどくさくなってないかって。」
「ぷぷっ。陛下、わかってんな~。」「さすがだな~陛下。」
「ホントだよ、すごくめんどくさい。父上を恨みそうになるよ、ホント。
王位継承権放棄するんだから、これくらいの仕事は引き受けろってさ。
まぁ、そう言われたらやるしかないよね。
後のめんどくさいことはレイモンドに任せるわけだしさ。」
「おーい。俺だけに任せる気かよ。少しは手伝ってくれ。
リオルはもちろん、ジーンとブランもいなくなられると困るんだけど。」
「わかってるよ、それは。手伝えることは手伝うよ。」
「ああ、頼んだよ…って、あれエリザじゃないか?どうしてここに?」
食堂の入り口付近が騒がしいと思ったら、令息たちを引き連れたエリザが入ってくるところだった。いつもならサロンにいるはずなのに、何をしに来たのか。
警戒していると、エリザはまっすぐこちらに向かってきている。端の席に座っていたシーンとブランがいつでも立ち上がれるような体勢になっている。
「ごきげんよう?」
「何か用か?」
俺とレイモンドはエリザの方を見もせず、ジーンが返事をする。エリザの身分から考えて、この席で話しかけていいのはジーンとブランだけだ。いや、本当はジーンとブランも話しけてはいけないのだが、表向きは俺の侍従になっているし、端の席に座っている。レミリアもいるが、反対側の端にいるし、ミーシャへの影響を考えると答えるわけにはいかなかった。
「侍従ごときが無礼だぞ。
エリザ王女はレイモンド王子とリオル様に話しかけているんだ。
邪魔をするんじゃない。」
エリザの隣にいた令息が声を張り上げる。
食堂中に響いたので、あちこちからこちらをうかがう様子が見えた。
エリザが人前でレイモンドや俺に話しかけてくることは無かった。当たり前だ。
話しかけていい立場ではないのだから。
いくら血のつながりがあるとはいえ、一緒に考えてはいけないのだから。
「お前こそ、無礼だぞ。
身分の無いものが王族に話しかけていいと思っているのか?」
「えっ?…身分が無い…ってなんだ?」
知りもしなかったのか。どこの令息か知らないが、何も知らないものを連れてきたようだ。
さて、ますます俺たちが相手にするわけにはいかなくなったな…。
「ひどいですわ。従姉だし、姉でしょう?
そんなに嫌わなくても良いと思うのだけど。
一緒に住んでいないのだから、せめて学園でお話くらい…。」
従姉だし、姉。ただ血のつながりだけを見たらそうなのだろう。
エリザの周りの令息たちはそれに応じない俺たちが悪いと思っているようだ。
これはジーンとブランでは手に余るかもしれない。
だが、俺が話すのも…どうしたものか。
「あら、聞き捨てならないわ?
リオル様が従弟でレイモンド様が弟だと、そこのものは言うのかしら?」
まさかのレミリアだった…あぁ、こいつが黙ってられないの忘れてたよ。
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