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5章 失われた記憶
23.帰宅
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「おかえりなさーい。」
宰相室から転移して帰ると、リリーが夕ご飯を作っている最中だった。
リオルはシオンが抱っこしてあやしていた。
俺が帰って来たがわかると、リオルが手を伸ばしてくる。
シオンから受け取って抱っこすると、ご機嫌そうにきゃっきゃと笑う。
テーブルにグラタンを運びながらリリーが尋ねてくる。
手が空いたシオンもキッチンからスープを運んできている。
どうやらもうご飯は出来ていたけど、俺が帰ってくるのを待っていたようだ。
「突然王宮にいたっと思ったら一度戻ってくるし、
シーナだけ連れて行くからどうしたのかと思ったけど、
何かあったの?シーナは?」
「ああ。緊急過ぎて説明する時間が無かったんだ。心配させてごめん。
兄貴の側妃候補だった令嬢がジョセフィーヌ王女に刺されたんだ。」
「えっ。」
「シーナが治療しているから命は助かるだろう。
だけど、肩から背中にかけて大きな傷が出来てしまった。
どうやったって傷が残るだろうな。
シーナにはしばらく王宮に残って治療を続けてもらっている。」
「傷が残るなんて、そんな…じゃあ、その令嬢は側妃として?」
「ああ。おそらくそういうことになると思う。兄貴もそう言ってた。
ミランダ王女も納得していたよ。
ジョセフィーヌ王女はミランダ王女を切ろうとしていたらしい。
それを令嬢がかばって切られたそうだ。
自分をかばうような令嬢なら側妃として迎え入れたいって。
兄貴が王妃以外に側妃も娶らなきゃいけないのも知っていたそうだ。」
「そう…レンフィールの王女だったわよね。
つらいでしょうね…。」
「そうだな。だけど、それに関しては俺たちは何も言えない。
それで、相談なんだけど。」
「相談?何?」
「…ご飯食べてからにしようか。」
何も知らずに腕の中で眠り始めたリオルを見て、お前はどう思う?って聞きたくなる。
リオル自体が精霊に望んで俺たちのもとへ来たとしても、
おそらく前世の記憶は無いだろう。
俺たちのように想いに引きずられたりしない。
それでも貴族として生まれて来たからには、どうしたって制限がかかってしまう。
魔術師になるなら、貴族をやめてもいいんだけどな。
それもリオルが大きくなってから決めることか。
俺もいつ貴族をやめてもいいと思っていたけど、兄貴たちを見捨てるのも難しかった。
リリーを失うようだったら間違いなく逃げるとは思う。
ただ今のように隠れていられるなら、何の問題は無かった。
…リオルが王位継承権を持っても、ここに隠れている間は大丈夫だろう。
ミランダ王女が王妃になって王子を産むまでの間。
だけど、もし王妃が子を産めなかったら。
いや、今考えても無駄だな。
宰相室から転移して帰ると、リリーが夕ご飯を作っている最中だった。
リオルはシオンが抱っこしてあやしていた。
俺が帰って来たがわかると、リオルが手を伸ばしてくる。
シオンから受け取って抱っこすると、ご機嫌そうにきゃっきゃと笑う。
テーブルにグラタンを運びながらリリーが尋ねてくる。
手が空いたシオンもキッチンからスープを運んできている。
どうやらもうご飯は出来ていたけど、俺が帰ってくるのを待っていたようだ。
「突然王宮にいたっと思ったら一度戻ってくるし、
シーナだけ連れて行くからどうしたのかと思ったけど、
何かあったの?シーナは?」
「ああ。緊急過ぎて説明する時間が無かったんだ。心配させてごめん。
兄貴の側妃候補だった令嬢がジョセフィーヌ王女に刺されたんだ。」
「えっ。」
「シーナが治療しているから命は助かるだろう。
だけど、肩から背中にかけて大きな傷が出来てしまった。
どうやったって傷が残るだろうな。
シーナにはしばらく王宮に残って治療を続けてもらっている。」
「傷が残るなんて、そんな…じゃあ、その令嬢は側妃として?」
「ああ。おそらくそういうことになると思う。兄貴もそう言ってた。
ミランダ王女も納得していたよ。
ジョセフィーヌ王女はミランダ王女を切ろうとしていたらしい。
それを令嬢がかばって切られたそうだ。
自分をかばうような令嬢なら側妃として迎え入れたいって。
兄貴が王妃以外に側妃も娶らなきゃいけないのも知っていたそうだ。」
「そう…レンフィールの王女だったわよね。
つらいでしょうね…。」
「そうだな。だけど、それに関しては俺たちは何も言えない。
それで、相談なんだけど。」
「相談?何?」
「…ご飯食べてからにしようか。」
何も知らずに腕の中で眠り始めたリオルを見て、お前はどう思う?って聞きたくなる。
リオル自体が精霊に望んで俺たちのもとへ来たとしても、
おそらく前世の記憶は無いだろう。
俺たちのように想いに引きずられたりしない。
それでも貴族として生まれて来たからには、どうしたって制限がかかってしまう。
魔術師になるなら、貴族をやめてもいいんだけどな。
それもリオルが大きくなってから決めることか。
俺もいつ貴族をやめてもいいと思っていたけど、兄貴たちを見捨てるのも難しかった。
リリーを失うようだったら間違いなく逃げるとは思う。
ただ今のように隠れていられるなら、何の問題は無かった。
…リオルが王位継承権を持っても、ここに隠れている間は大丈夫だろう。
ミランダ王女が王妃になって王子を産むまでの間。
だけど、もし王妃が子を産めなかったら。
いや、今考えても無駄だな。
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