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5章 失われた記憶
6.幸せと不穏な影
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バルと恋仲になるのは、そう時間がかからなかった。
ずっと長年一緒に暮らしていたように、二人と二匹の生活は楽しかった。
たまに精霊の森に薬草を摘みに行って、店で処方する。
バルは処方された薬を配達したり、店番をしたり、
表向きは遠方に住んでいた魔女の孫が、
一緒に暮らすことになったとして周りに受け入れられていた。
そんな暮らしが半年過ぎて、このまま幸せな日が続くんじゃないかと思っていた。
「身ごもった?」
「そうみたい。」
「俺とエミリの子ども…子ども…。
…幸せ過ぎて、もうどうしていいかわからない。」
「うん。」
静かに涙を流して抱きしめてくれるバルに、足元で騒ぎ立てて喜ぶレンとララに、
産まれてくる子も絶対に幸せになれるなって思った。
「店番は俺がやるから、少し落ち着いて座ってて。」
「体調は大丈夫。でも、確かに最近腕輪の調子がおかしいの。
変化の術がうまくかからないっていうか…。」
「多分、身体の中に二人分の魔力があるから、変化がかかりにくいんじゃないかな。
とりあえず、変化するのはやめてそのままでいればいい。
俺の妻だって公表して、魔女は旅に出てるとでも言えばいいんじゃないか?
それならその姿のままで店番しても大丈夫だろう?」
「そうね、そうしようか。バルのことが大好きなお客さんには悪いけど。」
「あぁ、あれな。最近うるさくなってきたからちょうどいいよ。
幼馴染と結婚したとでも言っておくから、後で話し合わせて。」
「ん、わかった。」
バルはそのままの姿で店番をしていたため、早くからバル狙いのお客さんがいた。
表向きは魔女の孫だったため、それを迷惑がることもできない。
少しだけモヤモヤしていたのもあったけど、これでちゃんと私との関係を公表できる。
バルを独り占め出来た気がして、単純に嬉しかった。
これが、この後どうなるかも知らずに。
ずっと長年一緒に暮らしていたように、二人と二匹の生活は楽しかった。
たまに精霊の森に薬草を摘みに行って、店で処方する。
バルは処方された薬を配達したり、店番をしたり、
表向きは遠方に住んでいた魔女の孫が、
一緒に暮らすことになったとして周りに受け入れられていた。
そんな暮らしが半年過ぎて、このまま幸せな日が続くんじゃないかと思っていた。
「身ごもった?」
「そうみたい。」
「俺とエミリの子ども…子ども…。
…幸せ過ぎて、もうどうしていいかわからない。」
「うん。」
静かに涙を流して抱きしめてくれるバルに、足元で騒ぎ立てて喜ぶレンとララに、
産まれてくる子も絶対に幸せになれるなって思った。
「店番は俺がやるから、少し落ち着いて座ってて。」
「体調は大丈夫。でも、確かに最近腕輪の調子がおかしいの。
変化の術がうまくかからないっていうか…。」
「多分、身体の中に二人分の魔力があるから、変化がかかりにくいんじゃないかな。
とりあえず、変化するのはやめてそのままでいればいい。
俺の妻だって公表して、魔女は旅に出てるとでも言えばいいんじゃないか?
それならその姿のままで店番しても大丈夫だろう?」
「そうね、そうしようか。バルのことが大好きなお客さんには悪いけど。」
「あぁ、あれな。最近うるさくなってきたからちょうどいいよ。
幼馴染と結婚したとでも言っておくから、後で話し合わせて。」
「ん、わかった。」
バルはそのままの姿で店番をしていたため、早くからバル狙いのお客さんがいた。
表向きは魔女の孫だったため、それを迷惑がることもできない。
少しだけモヤモヤしていたのもあったけど、これでちゃんと私との関係を公表できる。
バルを独り占め出来た気がして、単純に嬉しかった。
これが、この後どうなるかも知らずに。
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