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5章 失われた記憶
1.悪夢
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身体が動かない。顔も持ち上げられそうにない。
見えるのは古ぼけた板の天井?背中に冷たくて固い感触がある。
もしかして床に倒れていたんだろうか…。
指先にぬるっとした感触があるのは、血が出ているのかもしれない。
どこから?身体のあちこちが痛んで、どこをケガしているのかもわからない。
どうして動けないんだろう。
それに、この周りに感じるのは結界?
見えるのは小さな古ぼけた部屋。粗末な机と椅子と寝台?
小さな部屋の床に寝ているのはどうしてだろう。
人の気配は結界のせいだろうか、まったく感じることができなかった。
ふと自分の首から魔力が流れて出ているのを感じる。
首に巻き付いた何かが魔力を吸って、それがこの結界を維持しているらしい。
ここはどこ?
レオはどこにいったの?
シーナとシオンは?
力がんどん抜けていく。
魔力が底を尽きかけて、結界を維持するだけの魔力量では無くなった。
結界が薄くなって消えた瞬間、この部屋に飛び込んできたものがいた。
…だれ?顔がぼんやりとしか見えず、判別できない。
男性なのは体格でわかるけど、知っている人なのだろうか。
それに顔を舐めてくるのは猫?二匹の猫が見える。
男性が一生懸命何かを叫んでいるのに、何も聞こえない。
猫の鳴き声すら聞こえてこなかった。
その時、どこかで女性の高笑いが聞こえた。
楽しくて仕方ないといったような笑い声。
どこかで聞いたことがある気がするのに思い出せない。
何か大事なものを失った気がするのに、
その大事なものが何だったのかわからない。
とても、とても大事なものだったはずなのに…。
記憶を探ろうとする間もなく、意識は消えて、
何もかもが見えなくなった。
「リリー!リリー!」
「レオ?」
「大丈夫か?ずいぶんうなされてて、起こしても全然起きなくて。」
「うなされてた?」
どんな夢を見ていたのか全く思い出せない。
だけど素肌はじっとりと汗をかいていて、
いつもさらさらとしているはずの掛け布が張り付いているように感じる。
「覚えていないならそれでいい。心配した…。」
くるまっている掛け布ごと抱き寄せられたから、レオの胸に額をつける。
何も覚えていないのに、不安だけが残っていた。
レオと離れていた感覚が残っているような気がして、もう少し近くにいたい。
「レオ、もう少し強く抱きしめてて?」
「ああ。」
見えるのは古ぼけた板の天井?背中に冷たくて固い感触がある。
もしかして床に倒れていたんだろうか…。
指先にぬるっとした感触があるのは、血が出ているのかもしれない。
どこから?身体のあちこちが痛んで、どこをケガしているのかもわからない。
どうして動けないんだろう。
それに、この周りに感じるのは結界?
見えるのは小さな古ぼけた部屋。粗末な机と椅子と寝台?
小さな部屋の床に寝ているのはどうしてだろう。
人の気配は結界のせいだろうか、まったく感じることができなかった。
ふと自分の首から魔力が流れて出ているのを感じる。
首に巻き付いた何かが魔力を吸って、それがこの結界を維持しているらしい。
ここはどこ?
レオはどこにいったの?
シーナとシオンは?
力がんどん抜けていく。
魔力が底を尽きかけて、結界を維持するだけの魔力量では無くなった。
結界が薄くなって消えた瞬間、この部屋に飛び込んできたものがいた。
…だれ?顔がぼんやりとしか見えず、判別できない。
男性なのは体格でわかるけど、知っている人なのだろうか。
それに顔を舐めてくるのは猫?二匹の猫が見える。
男性が一生懸命何かを叫んでいるのに、何も聞こえない。
猫の鳴き声すら聞こえてこなかった。
その時、どこかで女性の高笑いが聞こえた。
楽しくて仕方ないといったような笑い声。
どこかで聞いたことがある気がするのに思い出せない。
何か大事なものを失った気がするのに、
その大事なものが何だったのかわからない。
とても、とても大事なものだったはずなのに…。
記憶を探ろうとする間もなく、意識は消えて、
何もかもが見えなくなった。
「リリー!リリー!」
「レオ?」
「大丈夫か?ずいぶんうなされてて、起こしても全然起きなくて。」
「うなされてた?」
どんな夢を見ていたのか全く思い出せない。
だけど素肌はじっとりと汗をかいていて、
いつもさらさらとしているはずの掛け布が張り付いているように感じる。
「覚えていないならそれでいい。心配した…。」
くるまっている掛け布ごと抱き寄せられたから、レオの胸に額をつける。
何も覚えていないのに、不安だけが残っていた。
レオと離れていた感覚が残っているような気がして、もう少し近くにいたい。
「レオ、もう少し強く抱きしめてて?」
「ああ。」
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