王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

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13.回想 王子との出会い

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レオと最初にあったのも、この魔女の森だった。
とても天気のいい日で、少し油断していた。
湖のほとりに大きな布を敷いて、そこでシーナとシオンとランチをしていた。
大きめの具を挟んだサンドイッチと、甘酸っぱいフルーツジュース。
三人とも食べるのに夢中で、レオに話しかけられるまで気が付かなかった。

「ねぇ、美味しそうだな、そのサンドイッチ。
 どこかで買ってきたの?」

森の中から一人の少年が出てきた。
警戒心のかけらもない笑顔で話しかけられ、とても驚いた。
ここは魔女の森。魔術師がいなければ入ってくることは出来ない。
でも、この少年の後ろには誰も見えない。
黒髪に暗い青の瞳。少し背は高いけど、まだ幼い顔をしている。
同じくらいの年齢だろうか。

「お腹減ってるの?」

いつもなら人見知りするくせに、料理を褒められて、
少しだけ気を許していた。

「うん。お腹減ったから、もう帰ろうかと思ったんだけど、
 とてもいい匂いがしたからつられちゃって。
 どこかのお店で売ってるサンドイッチ?」

「…食べる?」

「「!?」」

シーナとシオンが驚いている。二人以外に料理を食べさせたことは無い。
優しい二人だから、美味しくなくても食べてくれているのかもしれない。
ちょっとだけ、他の人に食べさせてみたい気持ちもあった。

「いいの?ありがとう!食べる!」

少年を座らせて、目の前にサンドイッチを置いて、
ジュースもコップについであげる。
喜んで食べ始めると、すぐに一切れを食べてしまった。

「おいしい!中身は鶏肉?何このソース。すっごくおいしい!」

「本当?…私が作ったの。」

「え?買ってきたんじゃないの?だって、俺と同じくらいの年齢だよね。
 こんなにおいしいの作れるなんてすごいなぁ。
 あ、俺はレオ。10歳!」

「私はリリー。同じ10歳よ。こっちはシーナとシオン。」

「みんな同じ年?よろしくね!」

「おう。よろしくな。」「よろしく~。」

同じ年、同じ魔術師ということで、話は尽きなかった。
どうして魔女の森に一人でいたのか疑問はあったけど、
シーナとシオン以外の友人が出来て、料理のことも否定されなくて、
とても嬉しかった。

それから何度も魔女の森で会い、そのたびに一緒に食事をした。
レオは好き嫌いなくよく食べる子で、私の料理をいつも褒めてくれた。
お互いに名前と年齢しか知らなかったけど、一緒にご飯を食べて、
魔術の話ができればそれで良かった。

その関係が変わったのは、13歳。学園の入学式の日。
壇上に上がったレオは、第二王子レオルド様だった。
レオが王子様だと知ってしまって、一言も話せなかった。



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