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25.精霊が選んだ人
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「陛下、公爵家のことはご心配なく。
私の婚約者は精霊が選んでくれると思います」
「なんだと?精霊はそんなことまでするのか?」
「ええ。精霊は質のいい魔力を好むのです。私が当主なのもそれが理由です。
精霊ならば私と同じように質のいい魔力の人を選んでくれるでしょう。
きっと精霊が選んでくれた人であればうまくいくと思います」
「質のいい魔力だと??どうやって精霊に選んでもらうのだ?」
アロルドを見ると、意図に気づいたのかうなずいてくれる。
打ち合わせはしていないけれど、アロルドなら大丈夫だと思う。
「精霊たちよ!お願い!
アーンフェ公爵家にふさわしい令息をここに連れて来て!」
キラキラと虹のように光り輝く中、アロルドがゆっくりと姿を現す。
アロルドは腕輪に魔力を流しただけだが、
近くにいた精霊が喜んで力を貸して、周囲に虹を出してくれたらしい。
おかげで本当に精霊が連れてきたように見えている。
「本当に連れてきたのか!お前は誰だ!」
「………ここは、王宮でしょうか?
私はアロルド・オーケルマン。オーケルマン公爵家の長男です」
「陛下、オーケルマン公爵家の長男は行方不明だったはずです!」
「なんだと??」
宰相はアロルドが行方不明だったことを覚えていたようだ。
陛下はそれを聞いて驚いている。
宰相が覚えていてくれたおかげで説明するのが簡単になりそうだ。
「行方不明?そうでしたか。
屋敷の私室にいたら光に囲まれて……気がついたら精霊界にいました。
精霊の愛し子にふさわしいかどうか試練を与えると言われたのですが、
どうやら試練は乗り越えられたようですね……」
陛下に向かって説明した後、私へと歩いてくる。
アロルドが私の手をとると、陛下と宰相が驚いているのがわかる。
さきほどベッティル様が私にさわれずに弾き飛ばされたのと違い、
アロルドはしっかりと私の手をとった。
「エルヴィラ様、精霊の愛し子の恋人として選ばれました。
私をあなたの婚約者として受け入れていただけますか?」
「ええ、もちろんです。
アロルド様、あなたを婚約者として受け入れます」
承諾すると、両手に優しくくちづけされる。
人前でそんなことをされると恥ずかしい。
だけど、ここは見せつけたほうがいいのかもしれない。
「陛下、宰相。精霊が私の婚約者を連れて来てくれました。
認めてくださいますよね?」
「……あぁ、認めよう」
「……ええ、そうですね、陛下」
陛下と宰相は精霊の力を信じたのか、力なく返事をした。
もう逆らう気力も無くなったのだと思う。
また何か言い出される前に退室しようと思ったところで、
謁見室に入ってきたのは王太子と第二王子だった。
その後ろに王妃と騎士団長も続いている。
「久しぶりだな、エルヴィラ嬢とアロルド。
邪魔してしまって悪いが、父上と大事な話をしたいのだ。
もうこれ以上、父上に任せておけないからな。
ここでしっかりと責任を追及させてもらうことにするよ」
「それがよろしいと思います」
「うん、ありがとう。後はもう退出していいよ」
「はい」
礼をしてアロルドと共に退出する。
陛下と宰相も今の状況なら、なんでもうなずきそうな気がする。
譲位するのも時間の問題かなと思いながら馬車に乗る。
馬車が走り出すとすぐにアロルドは腕輪の魔力を止めた。
色は黒から青に変わっていた。腕輪を使ったのが短時間で済んでほっとする。
「はぁ……なんとかなったなぁ」
「本当に……アロルドがいなかったら乗り越えられなかったわ」
「まぁ、ぎりぎりのところだったな。あれほどしつこいとは思わなかった。
でも、これで懲りただろう」
「お父様も……ブランカも。これであきらめたわよね」
「さすがにそうだろう……疲れたんじゃないか?顔色が悪い」
言われてみたら少し胸のあたりが気持ち悪い。
無茶ばかり言われて、思っていたよりもつらかったのかもしれない。
でも、これでお父様とブランカ、ベッティル様とも縁は切れる。
そして、ようやくアロルドと婚約できる……。
「さて、あとはどうやって姿を取り戻すかだなぁ」
「……戻るのよね?」
やっと婚約の許可がおりたのに、不安で仕方ない。
腕輪の力で姿が見えるようになるのは最大で三時間程度。
はやく姿を取り戻さないと婚約話をすすめることもできない。
「大丈夫だとは言えない。だけど、ここにいるよ」
「ルド?」
「姿が見えなくても、俺はエルの隣にいる。
ずっと一緒にいるから、それはわかって」
「……うん」
後ろから支えるように抱きしめられ、アロルドに寄り掛かるようにされる。
馬車の揺れが気にならなくなり、代わりにアロルドの心音が聞こえる。
「少し休んだほうがいい」
「うん、ありがとう」
これで問題は片付いたはず。
今日の夜に精霊王に会いに行けば呪いは解ける……と思いたいけれど。
もし呪いが解けなかったとしてもアロルドが隣にいてくれるならそれでもいい。
そう思ってしまうのは間違いだろうか。
私の婚約者は精霊が選んでくれると思います」
「なんだと?精霊はそんなことまでするのか?」
「ええ。精霊は質のいい魔力を好むのです。私が当主なのもそれが理由です。
精霊ならば私と同じように質のいい魔力の人を選んでくれるでしょう。
きっと精霊が選んでくれた人であればうまくいくと思います」
「質のいい魔力だと??どうやって精霊に選んでもらうのだ?」
アロルドを見ると、意図に気づいたのかうなずいてくれる。
打ち合わせはしていないけれど、アロルドなら大丈夫だと思う。
「精霊たちよ!お願い!
アーンフェ公爵家にふさわしい令息をここに連れて来て!」
キラキラと虹のように光り輝く中、アロルドがゆっくりと姿を現す。
アロルドは腕輪に魔力を流しただけだが、
近くにいた精霊が喜んで力を貸して、周囲に虹を出してくれたらしい。
おかげで本当に精霊が連れてきたように見えている。
「本当に連れてきたのか!お前は誰だ!」
「………ここは、王宮でしょうか?
私はアロルド・オーケルマン。オーケルマン公爵家の長男です」
「陛下、オーケルマン公爵家の長男は行方不明だったはずです!」
「なんだと??」
宰相はアロルドが行方不明だったことを覚えていたようだ。
陛下はそれを聞いて驚いている。
宰相が覚えていてくれたおかげで説明するのが簡単になりそうだ。
「行方不明?そうでしたか。
屋敷の私室にいたら光に囲まれて……気がついたら精霊界にいました。
精霊の愛し子にふさわしいかどうか試練を与えると言われたのですが、
どうやら試練は乗り越えられたようですね……」
陛下に向かって説明した後、私へと歩いてくる。
アロルドが私の手をとると、陛下と宰相が驚いているのがわかる。
さきほどベッティル様が私にさわれずに弾き飛ばされたのと違い、
アロルドはしっかりと私の手をとった。
「エルヴィラ様、精霊の愛し子の恋人として選ばれました。
私をあなたの婚約者として受け入れていただけますか?」
「ええ、もちろんです。
アロルド様、あなたを婚約者として受け入れます」
承諾すると、両手に優しくくちづけされる。
人前でそんなことをされると恥ずかしい。
だけど、ここは見せつけたほうがいいのかもしれない。
「陛下、宰相。精霊が私の婚約者を連れて来てくれました。
認めてくださいますよね?」
「……あぁ、認めよう」
「……ええ、そうですね、陛下」
陛下と宰相は精霊の力を信じたのか、力なく返事をした。
もう逆らう気力も無くなったのだと思う。
また何か言い出される前に退室しようと思ったところで、
謁見室に入ってきたのは王太子と第二王子だった。
その後ろに王妃と騎士団長も続いている。
「久しぶりだな、エルヴィラ嬢とアロルド。
邪魔してしまって悪いが、父上と大事な話をしたいのだ。
もうこれ以上、父上に任せておけないからな。
ここでしっかりと責任を追及させてもらうことにするよ」
「それがよろしいと思います」
「うん、ありがとう。後はもう退出していいよ」
「はい」
礼をしてアロルドと共に退出する。
陛下と宰相も今の状況なら、なんでもうなずきそうな気がする。
譲位するのも時間の問題かなと思いながら馬車に乗る。
馬車が走り出すとすぐにアロルドは腕輪の魔力を止めた。
色は黒から青に変わっていた。腕輪を使ったのが短時間で済んでほっとする。
「はぁ……なんとかなったなぁ」
「本当に……アロルドがいなかったら乗り越えられなかったわ」
「まぁ、ぎりぎりのところだったな。あれほどしつこいとは思わなかった。
でも、これで懲りただろう」
「お父様も……ブランカも。これであきらめたわよね」
「さすがにそうだろう……疲れたんじゃないか?顔色が悪い」
言われてみたら少し胸のあたりが気持ち悪い。
無茶ばかり言われて、思っていたよりもつらかったのかもしれない。
でも、これでお父様とブランカ、ベッティル様とも縁は切れる。
そして、ようやくアロルドと婚約できる……。
「さて、あとはどうやって姿を取り戻すかだなぁ」
「……戻るのよね?」
やっと婚約の許可がおりたのに、不安で仕方ない。
腕輪の力で姿が見えるようになるのは最大で三時間程度。
はやく姿を取り戻さないと婚約話をすすめることもできない。
「大丈夫だとは言えない。だけど、ここにいるよ」
「ルド?」
「姿が見えなくても、俺はエルの隣にいる。
ずっと一緒にいるから、それはわかって」
「……うん」
後ろから支えるように抱きしめられ、アロルドに寄り掛かるようにされる。
馬車の揺れが気にならなくなり、代わりにアロルドの心音が聞こえる。
「少し休んだほうがいい」
「うん、ありがとう」
これで問題は片付いたはず。
今日の夜に精霊王に会いに行けば呪いは解ける……と思いたいけれど。
もし呪いが解けなかったとしてもアロルドが隣にいてくれるならそれでもいい。
そう思ってしまうのは間違いだろうか。
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