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42.ジルと私
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食事が終わってもジルが無言だったので、
あきらめて侍女に言ってお茶の準備をしてもらう。
「ルヴィ、ちょっと待っててね。」
少ししてようやく正気に戻ったと思ったら、部屋から出て行ってしまった。
あれ?聖女が来ているのに出て行って大丈夫なんだろうか。
半刻ほどしてジルが戻って来たら、その手にはいっぱいの花束を抱えていた。
「え?」
私の前に来て、跪いて花束を渡される。
服も青色の騎士服に着替えている。
いつも以上に熱を持った目で見られて、心臓の音がうるさくなった。
「ルヴィ。結婚式まであと1月あるけど、もう待たなくてもいいか?
俺はルヴィの全部を俺のものにしたい。ルヴィのすべてが欲しいんだ。
代わりに、俺のものはすべてルヴィに渡すよ。
気持ちも身体も生きるすべてを。
だから、俺と結婚してください。」
突然の求婚に驚くしかない。
だけど、ジルのものになるのにもう迷いは無かった。
「ジルのものにしてくれる?」
「いいのか?」
「うん。ずっと待っててくれてありがとう。
もう待たなくていいよ。ジルのものにして?」
どうして急にこんなことになったのか、後で聞いたけど、
求婚を受け入れてすぐ初夜になるとは思わなかった。
お父様からの伝言は、結婚式まであと一月、
もう身ごもっても大丈夫だから我慢しなくていいってことだったらしい。
行動する前にもう少し丁寧に説明してよとは思ったけど、
幸せそうな顔で笑うジルに黙ってしまった。
聖女が帰るまでの3日間のお休みだったはずなのに、
2日目に初夜を迎えてしまったせいで、お休みは7日間に延びてしまった。
久しぶりに顔を見たお父様は少し寂しそうだったけど、ハンスは嬉しそうだった。
結婚式を前に初夜を済ませたことで、婚姻は結ばれたと公式な発表がされた。
おかげで他国からの横やりも無く、無事に結婚式が執り行われた。
それからすぐに私が身ごもっていることが分かり、王女を出産。
その2年後には王子を出産したことで、側妃を娶る話もほとんどされなくなった。
ちなみに聖女はジルに会ったそうだが、
中庭の花を切って花束を用意しようとしているところに話しかけ、
容赦なく取り押さえられて衛兵に引き渡されたそうだ。
そのまま不敬罪と王弟の宮への侵入罪を言い渡され、強制送還されたそうだ。
それもすべてが終わったあとで聞いたのだけど。
7年経っても、相変わらずジルは私の心配ばかりしている。
国王になった今、そんなことしていて大丈夫なのかと思ってしまう。
「ねぇ、ジル。仕事は大丈夫なの?毎日お茶を一緒にしなくてもいいのよ?」
「いいんだよ。ルヴィの元気な姿を見ないと、やる気でないんだ。
お腹の子も心配だしね。」
そう言って大きくなってきた私のお腹を撫でてくれる。
3人目は王子だろうか、王女だろうか。
どちらでもいいから、元気で出て来てくれればいい。
「しょうがないなぁ。私も執務室に行くから、一緒に行こう?」
心配性なジルも仕方ないけど、それを嬉しく思ってしまう私も仕方ない。
手をつないで歩くとやっぱり身長差は感じてしまうけど、
見上げれば微笑んでくれるジルが大好きで、私も微笑み返す。
あーどこかで見てる祈りの塔の神様、このままこの幸せが続きますように。
ジルと一緒にこの国を、祈りの塔を守っていきますから。
あきらめて侍女に言ってお茶の準備をしてもらう。
「ルヴィ、ちょっと待っててね。」
少ししてようやく正気に戻ったと思ったら、部屋から出て行ってしまった。
あれ?聖女が来ているのに出て行って大丈夫なんだろうか。
半刻ほどしてジルが戻って来たら、その手にはいっぱいの花束を抱えていた。
「え?」
私の前に来て、跪いて花束を渡される。
服も青色の騎士服に着替えている。
いつも以上に熱を持った目で見られて、心臓の音がうるさくなった。
「ルヴィ。結婚式まであと1月あるけど、もう待たなくてもいいか?
俺はルヴィの全部を俺のものにしたい。ルヴィのすべてが欲しいんだ。
代わりに、俺のものはすべてルヴィに渡すよ。
気持ちも身体も生きるすべてを。
だから、俺と結婚してください。」
突然の求婚に驚くしかない。
だけど、ジルのものになるのにもう迷いは無かった。
「ジルのものにしてくれる?」
「いいのか?」
「うん。ずっと待っててくれてありがとう。
もう待たなくていいよ。ジルのものにして?」
どうして急にこんなことになったのか、後で聞いたけど、
求婚を受け入れてすぐ初夜になるとは思わなかった。
お父様からの伝言は、結婚式まであと一月、
もう身ごもっても大丈夫だから我慢しなくていいってことだったらしい。
行動する前にもう少し丁寧に説明してよとは思ったけど、
幸せそうな顔で笑うジルに黙ってしまった。
聖女が帰るまでの3日間のお休みだったはずなのに、
2日目に初夜を迎えてしまったせいで、お休みは7日間に延びてしまった。
久しぶりに顔を見たお父様は少し寂しそうだったけど、ハンスは嬉しそうだった。
結婚式を前に初夜を済ませたことで、婚姻は結ばれたと公式な発表がされた。
おかげで他国からの横やりも無く、無事に結婚式が執り行われた。
それからすぐに私が身ごもっていることが分かり、王女を出産。
その2年後には王子を出産したことで、側妃を娶る話もほとんどされなくなった。
ちなみに聖女はジルに会ったそうだが、
中庭の花を切って花束を用意しようとしているところに話しかけ、
容赦なく取り押さえられて衛兵に引き渡されたそうだ。
そのまま不敬罪と王弟の宮への侵入罪を言い渡され、強制送還されたそうだ。
それもすべてが終わったあとで聞いたのだけど。
7年経っても、相変わらずジルは私の心配ばかりしている。
国王になった今、そんなことしていて大丈夫なのかと思ってしまう。
「ねぇ、ジル。仕事は大丈夫なの?毎日お茶を一緒にしなくてもいいのよ?」
「いいんだよ。ルヴィの元気な姿を見ないと、やる気でないんだ。
お腹の子も心配だしね。」
そう言って大きくなってきた私のお腹を撫でてくれる。
3人目は王子だろうか、王女だろうか。
どちらでもいいから、元気で出て来てくれればいい。
「しょうがないなぁ。私も執務室に行くから、一緒に行こう?」
心配性なジルも仕方ないけど、それを嬉しく思ってしまう私も仕方ない。
手をつないで歩くとやっぱり身長差は感じてしまうけど、
見上げれば微笑んでくれるジルが大好きで、私も微笑み返す。
あーどこかで見てる祈りの塔の神様、このままこの幸せが続きますように。
ジルと一緒にこの国を、祈りの塔を守っていきますから。
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