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24.アマンダ様と対決
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ブリュノ様と話しているアマンダ様の前に立つ。
近くで見て、アマンダ様がつけているのが私のブローチだと確信する。
……また、私の大事なものを奪うなんて。
怒りでうまく言葉が出ない。
そんな私を見て、アマンダ様は笑った。
「まぁ、ジュリア様。どうしたの?そんな怖い顔をして」
「アマンダ様っ」
「なぁに?」
「私のブローチを返して!」
やっと言えたと思ったら、アマンダ様は不思議そうに首をかしげ、
隣にいたブリュノ様を見上げる。
「何のことだかわかる?ブリュノ」
「いや、俺にはわからない。
ブローチって、そのブローチのことなんじゃないのか?」
「ええ?これ?」
本当にわからないという風に会話を続けている二人に、
思わず声が大きくなる。
「もう!アマンダ様にそのブローチを奪われるのは二度目よ!
いいかげんにして!それは大事な物なの!返して!」
「もしかして、私がこのブローチを盗んだと言っているの?」
「そうよ!早く返して!」
大きな声で騒いでしまったからか、周りの学生たちがざわめきだした。
火事で避難していた者たちが、何事かと集まってくる。
「ひどいわ。盗んでもいないのに、そんなこと言うなんて」
「盗んだアマンダ様が悪いんじゃない!」
「でも、これは私の物よ。ねぇ、ブリュノ」
アマンダ様がブリュノ様に助けを求めるように言う。
ブリュノ様は少し考え込んでいたようだけど、私に問いかけてきた。
「ねぇ、ジュリアのブローチはいつ盗まれたの?」
「さっきだと思うわ。避難する時に、鞄を持たなくて。
教室に戻ったら、もうなくなっていたの」
「じゃあ、違うよ」
「え?」
「俺、アマンダがこのブローチつけているの何度も見ているから」
あっさりと否定されて、もう一度アマンダ様の胸についているブローチを見る。
まさか、私の勘違いだった?
……ううん、間違いなくこれは私のブローチだ。
この紫の宝石はどこの宝石店でも見なかった。
同じブローチがあるわけがない。
それなのに、アマンダ様は勝ち誇ったような顔をした。
「ほら、私の物だって言ったじゃない」
「ち、違うわ。絶対に私の物だもの!」
「じゃあ、私が盗んだって証拠は?」
「え?」
「これが、あなたのブローチだって証拠はあるの?」
「それは……」
証拠……言われてみたら、何もない。
このブローチは人に見せないようにしていた。
お父様やお母様だって知らないものだ。
リーナは見ているけれど、使用人の証言なんて意味がない……
「このブローチはうちの商会から買ったものよ。
購入した時の書類だってあるわ」
「そんな……嘘よ」
「本当よ。ねぇ、謝ってよ!」
「え?」
「私が盗んだって誤解して、こんな騒ぎにしたんだから、
私と皆様に謝って」
「……」
謝るのは嫌だった。だって、絶対に私のブローチなのに。
毎日見てきたブローチを見間違えるわけはない。
だけど、それを証明する方法がない。
「いくら私がブリュノと仮婚約したからって、
嫌がらせするのはひどいわ。
ジュリア様に言われたから解消したっていうのに、
まだ言いがかりをつける気なの?あんまりだわ」
「違うわ!私はそんな嫌がらせなんてしてないじゃない!」
「じゃあ、どうしてこんなところで盗んだなんて言い出すの?
私を貶めたいからでしょう!」
「違うって言って……」
「違うって言うなら、ちゃんと証明してよ!」
私が証明できないとわかったのか、アマンダ様が責め立ててくる。
ブリュノ様は申し訳なさそうに離れたけれど、
周りの学生たちは私が悪いのだという目で見てくる。
「あれって、嫌がらせして仮婚約を解消させたって話だろう?」
「あぁ、聞いた。あの令嬢なのか」
「おとなしそうな顔しているのにねぇ」
「高位貴族って、性格悪いって聞くからなぁ」
「アマンダ様、かわいそうに」
私がアマンダ様とブリュノ様の仮婚約を解消させたという噂を信じているのか、
周りの学生たちがこそこそと話しているのが聞こえる。
B教室でならアマンダ様のこともわかってくれているけれど、
ここには他の教室や他の学年の学生ばかり。
私の味方になってくれるような人はいなかった。
「ほら、ちゃんと謝ってよ。
盗んだと思ったのは誤解でしたって、ちゃんと言って?」
アマンダ様がうれしそうににやりと笑った。
あぁ、こういう罠だったんだ……悔しい。けど、何もできない。
もう……いや。
ここから逃げ出してしまいたい。
「それはジュリアのブローチだろう」
「え?」
「……ライオネル様?」
私たちを囲んでいた学生たちを割って入ってきたのはライオネル様だった。
声が怒っている……そのまま冷たい目でアマンダ様をにらんだ。
「どういうことですか?ライオネル様。
このブローチは私の物だって証明されましたよ?」
「いや、まだ証明されていない。
ブリュノの証言は信じられない」
「どうしてですか?」
「アマンダ、お前この石が何の宝石なのかわかっているか?」
「え?」
「自分の商会から買ったと言うのなら、わかるだろう。
宝石の名前を言ってみろ」
宝石の名前……私も知らない。
紫色をしていても、紫水晶とも違う。
少しだけ発光しているような紫の宝石。
「え……ちょっと忘れてしまいましたわ。
でも、家に帰れば購入した時の書類があると思います。
明日にでも持ってきます」
「たとえ、急いで商会に調べさせても書類を作るのは無理だぞ」
「そんなことは」
「この宝石は流通していない。
販売する許可を出していないからな」
「……え?」
販売する許可を出していない?
だから、宝石店では見かけなかった?
だけど、許可って、どういうこと?
「この宝石はジョルダリ国でしか産出されない。
しかも、購入できるのは王族に限られている」
「は?」
……え?王族しか購入できない?それって……
近くで見て、アマンダ様がつけているのが私のブローチだと確信する。
……また、私の大事なものを奪うなんて。
怒りでうまく言葉が出ない。
そんな私を見て、アマンダ様は笑った。
「まぁ、ジュリア様。どうしたの?そんな怖い顔をして」
「アマンダ様っ」
「なぁに?」
「私のブローチを返して!」
やっと言えたと思ったら、アマンダ様は不思議そうに首をかしげ、
隣にいたブリュノ様を見上げる。
「何のことだかわかる?ブリュノ」
「いや、俺にはわからない。
ブローチって、そのブローチのことなんじゃないのか?」
「ええ?これ?」
本当にわからないという風に会話を続けている二人に、
思わず声が大きくなる。
「もう!アマンダ様にそのブローチを奪われるのは二度目よ!
いいかげんにして!それは大事な物なの!返して!」
「もしかして、私がこのブローチを盗んだと言っているの?」
「そうよ!早く返して!」
大きな声で騒いでしまったからか、周りの学生たちがざわめきだした。
火事で避難していた者たちが、何事かと集まってくる。
「ひどいわ。盗んでもいないのに、そんなこと言うなんて」
「盗んだアマンダ様が悪いんじゃない!」
「でも、これは私の物よ。ねぇ、ブリュノ」
アマンダ様がブリュノ様に助けを求めるように言う。
ブリュノ様は少し考え込んでいたようだけど、私に問いかけてきた。
「ねぇ、ジュリアのブローチはいつ盗まれたの?」
「さっきだと思うわ。避難する時に、鞄を持たなくて。
教室に戻ったら、もうなくなっていたの」
「じゃあ、違うよ」
「え?」
「俺、アマンダがこのブローチつけているの何度も見ているから」
あっさりと否定されて、もう一度アマンダ様の胸についているブローチを見る。
まさか、私の勘違いだった?
……ううん、間違いなくこれは私のブローチだ。
この紫の宝石はどこの宝石店でも見なかった。
同じブローチがあるわけがない。
それなのに、アマンダ様は勝ち誇ったような顔をした。
「ほら、私の物だって言ったじゃない」
「ち、違うわ。絶対に私の物だもの!」
「じゃあ、私が盗んだって証拠は?」
「え?」
「これが、あなたのブローチだって証拠はあるの?」
「それは……」
証拠……言われてみたら、何もない。
このブローチは人に見せないようにしていた。
お父様やお母様だって知らないものだ。
リーナは見ているけれど、使用人の証言なんて意味がない……
「このブローチはうちの商会から買ったものよ。
購入した時の書類だってあるわ」
「そんな……嘘よ」
「本当よ。ねぇ、謝ってよ!」
「え?」
「私が盗んだって誤解して、こんな騒ぎにしたんだから、
私と皆様に謝って」
「……」
謝るのは嫌だった。だって、絶対に私のブローチなのに。
毎日見てきたブローチを見間違えるわけはない。
だけど、それを証明する方法がない。
「いくら私がブリュノと仮婚約したからって、
嫌がらせするのはひどいわ。
ジュリア様に言われたから解消したっていうのに、
まだ言いがかりをつける気なの?あんまりだわ」
「違うわ!私はそんな嫌がらせなんてしてないじゃない!」
「じゃあ、どうしてこんなところで盗んだなんて言い出すの?
私を貶めたいからでしょう!」
「違うって言って……」
「違うって言うなら、ちゃんと証明してよ!」
私が証明できないとわかったのか、アマンダ様が責め立ててくる。
ブリュノ様は申し訳なさそうに離れたけれど、
周りの学生たちは私が悪いのだという目で見てくる。
「あれって、嫌がらせして仮婚約を解消させたって話だろう?」
「あぁ、聞いた。あの令嬢なのか」
「おとなしそうな顔しているのにねぇ」
「高位貴族って、性格悪いって聞くからなぁ」
「アマンダ様、かわいそうに」
私がアマンダ様とブリュノ様の仮婚約を解消させたという噂を信じているのか、
周りの学生たちがこそこそと話しているのが聞こえる。
B教室でならアマンダ様のこともわかってくれているけれど、
ここには他の教室や他の学年の学生ばかり。
私の味方になってくれるような人はいなかった。
「ほら、ちゃんと謝ってよ。
盗んだと思ったのは誤解でしたって、ちゃんと言って?」
アマンダ様がうれしそうににやりと笑った。
あぁ、こういう罠だったんだ……悔しい。けど、何もできない。
もう……いや。
ここから逃げ出してしまいたい。
「それはジュリアのブローチだろう」
「え?」
「……ライオネル様?」
私たちを囲んでいた学生たちを割って入ってきたのはライオネル様だった。
声が怒っている……そのまま冷たい目でアマンダ様をにらんだ。
「どういうことですか?ライオネル様。
このブローチは私の物だって証明されましたよ?」
「いや、まだ証明されていない。
ブリュノの証言は信じられない」
「どうしてですか?」
「アマンダ、お前この石が何の宝石なのかわかっているか?」
「え?」
「自分の商会から買ったと言うのなら、わかるだろう。
宝石の名前を言ってみろ」
宝石の名前……私も知らない。
紫色をしていても、紫水晶とも違う。
少しだけ発光しているような紫の宝石。
「え……ちょっと忘れてしまいましたわ。
でも、家に帰れば購入した時の書類があると思います。
明日にでも持ってきます」
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「そんなことは」
「この宝石は流通していない。
販売する許可を出していないからな」
「……え?」
販売する許可を出していない?
だから、宝石店では見かけなかった?
だけど、許可って、どういうこと?
「この宝石はジョルダリ国でしか産出されない。
しかも、購入できるのは王族に限られている」
「は?」
……え?王族しか購入できない?それって……
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