上 下
23 / 62

23.旅路

しおりを挟む
「目立つ…ね。」

「ああ、間違いなく目立ってるな。」

金色の髪で青い目、それでいて旅装束の私と、金色の髪に緑目の騎士が同じ馬に乗って守っているように見えるユリアス。
街の人は日の出とともに朝市場の準備をしているようで、意外と人が多かった。
準備している横を通り抜けると、私たちを見る人たちは目を見張って驚いている。
その後はまるで宗教画でも見たような顔になってお祈りを始めているのを見て、思わず目をそらした。


「聖女と騎士に見えてるのよね?」

「ロージーはどこから見ても聖女にしか見えないだろう。
 俺も帯剣してるから騎士にしか見えないだろうしな…。」

ユリアスの剣は学校長から授かったもので、王弟の紋章が入っている。
身分を示すためのものでもあるので、とても目立つ。
騎乗しているせいで人の目の高さに剣があるために目に入りやすいだろう。


「これは街壁の外に出るまではこんな感じかしら。
 仕方ないけれど、視線がいたい…。」

「もしかしたら俺たちのことが王宮の方に知らせが行ってるかもしれないから、
 少し足を速めて行こう。
 こんなとこで止められたら困る。」

「そうね。」

人に見せるようにゆっくりと進めていた馬の足を速め、街壁の外に出る。
出る際には検査がないので、そのまま馬に乗ったままで進む。
検査をしている衛兵がこちらをちらっと見た気がしたが、ユリアスは一気に馬を駆けらせて森の奥へと入って行った。


「少しの間、飛ばして進むから。
 しっかり掴まっていてくれ。」

「ええ。」

なんだかユリアスに掴まっていることが多い気がする。倒れたり、担がれたり…。
護衛騎士だからそんな浮ついたことは無いとわかるんだけど、それでも気にはなる。
こんなに男性に近付いたのは、前世合わせてもユリアスしかいない。
顔が赤くなりそうなのを必死に平気なふりをしてやり過ごす。
二人旅なのに、変に気まずくならないように、こういう時こそ王太子妃教育なのにと思った。


それから何度か休憩をはさみ、夕方に近くなる前に道から少し入った森で野宿の用意をし始めた。
街道沿いにはいくつか宿屋があるらしいが、王宮から誰かが探しに来ていると困ると、野宿することにしていた。枯れ木や枯れ草を集めて戻ると、ユリアスが簡易の寝床を作ってくれているところだった。

「…手際が良いのね。」

「ああ。騎士団で遠征に何度も行ってるからな。
 簡易寝床でも、寝る場所があるだけましなほうだよ。
 その辺に寝転がって休憩だけ取っていることだってある。」

「騎士団ってすごいのね。」

本当にすごいと思って褒めたのに、ユリアスの顔はちっともうれしそうじゃなかった。
そういえば騎士になりたくないって言っていた。何かあるのだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?

サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに―― ※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。

義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。

しろいるか
恋愛
子爵家の経済支援も含めて婚約した私。でも、気付けばあれこれ難癖をつけられ、悪役令嬢のレッテルを貼られてしまい、婚約破棄。あげく、実家をすべて乗っ取られてしまう。家族は処刑され、私は義母や義妹の奴隷にまで貶められた。そんなある日、伯爵家との婚約が決まったのを機に、不要となった私は神様の生け贄に捧げられてしまう。 でもそこで出会った神様は、とても優しくて──。 どん底まで落とされた少女がただ幸せになって、義母たちが自滅していく物語。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

【短編】王子のために薬を処方しましたが、毒を盛られたと婚約破棄されました! ~捨てられた薬師の公爵令嬢は、騎士に溺愛される毎日を過ごします~

上下左右
恋愛
「毒を飲ませるような悪女とは一緒にいられない。婚約を破棄させてもらう!」 公爵令嬢のマリアは薬を煎じるのが趣味だった。王子のために薬を処方するが、彼はそれを毒殺しようとしたのだと疑いをかけ、一方的に婚約破棄を宣言する。 さらに王子は毒殺の危機から救ってくれた命の恩人として新たな婚約者を紹介する。その人物とはマリアの妹のメアリーであった。 糾弾され、マリアは絶望に泣き崩れる。そんな彼女を救うべく王国騎士団の団長が立ち上がった。彼女の無実を主張すると、王子から「ならば毒殺女と結婚してみろ」と挑発される。 団長は王子からの挑発を受け入れ、マリアとの婚約を宣言する。彼は長らくマリアに片思いしており、その提案は渡りに船だったのだ。 それから半年の時が過ぎ、王子はマリアから処方されていた薬の提供が止まったことが原因で、能力が低下し、容姿も豚のように醜くなってしまう。メアリーからも捨てられ、婚約破棄したことを後悔するのだった。 一方、マリアは団長に溺愛される毎日を過ごす。この物語は誠実に生きてきた薬師の公爵令嬢が価値を認められ、ハッピーエンドを迎えるまでのお話である。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

処理中です...