11 / 29
11.待ち伏せ
しおりを挟む
もうすぐ前期が終わる頃、寮を出て校舎へと向かう。
A教室がある棟の前に令嬢が三人、外側を向いて立っているのが見えた。
A教室がある棟に他の教室は入っておらず、
今のところ他の学年のA教室に令嬢は在籍していない。
これはあれかな。
嫌な予感がしたけれど、引き返すわけにもいかない。
覚悟を決めて近づいたら、予想通り声をかけられる。
「ディアナ様ですわね? 少しいいかしら」
「何かしら」
一番身分が上なのか、金髪の令嬢が前に出る。
水色の猫のような目じりが、さらに険しくなる。
「あなた、婚約者がいるのに他の令息につきまとっているそうね。
恥ずかしいと思わないの?」
「令息につきまとう? 私が?」
「アルフレード様とエルネスト様よ!」
「やっぱりそういう件で……」
きっとあのダンスの授業の噂を聞いたんだろう。
この令嬢は一年か二年だから、あの場にはいなかった。
さすがに同じ学年の令嬢の顔くらいは覚えている。
だが、今まで社交していなかったから、この令嬢がどこの家なのかはわからない。
おそらく髪色から高位貴族だとは思うが、学園に公爵家の令嬢は在籍していない。
ということは、少なくとも侯爵家以下。
しかも下の学年の令嬢に気をつかう必要はない。
「そんなことはしていないわ」
「まぁ、嘘つきなのね。婚約者に相手にされないのも当然だわ」
「え?」
「有名なんでしょう?あなたの婚約者。
いつも違う令嬢を三人も連れて歩いてるって。
婚約者に相手にされなくてみじめなのはわかるけど、
それでアルフレード様たちに迷惑をかけるなんて許せないわ!」
エラルドの話が他学年にまで広がっているらしい。
あと半年で卒業だというのに。ため息が出そう。
「聞いているの!?」
「それがどうかしたの?」
「はぁ?」
「私の婚約者が他の令嬢といるのは、同じ教室だからよ。
そして、私がアルフレード様たちと一緒にいるのも、同じ教室だから。
そのことであなたにとやかく言われる覚えはないわ」
「これだけ言われても反省しないの!?」
「なんて人なの!」
「そんなだから婚約者に見捨てられるのよ!」
私の態度が気に入らなかったのか、後ろにいた令嬢二人も声をあげる。
茶色の髪に、薄茶色の髪。おそらく伯爵家以下の令嬢たち。
まだ学園の中だから許されるけれど、本来は許されないのに。
婚約者に見捨てられる、か。
本当に見捨てられているのなら、どれだけ良かったことか。
ダンスの授業のように、婚約者でなければいけないものは優先される。
だからこそ、婚約解消できずにいる。
「たとえ本当に私が婚約者に見捨てられていたとしても、
それこそ、あなたたちには関係ないと思うのだけど?」
「関係あるわよ。私はアルフレード様の婚約者候補だもの」
「婚約者候補?そんなものは聞いてないけど」
「学園内で探すのなら、選ばれるのは私しかいないもの。
だからこうしてあなたに注意しに来ているんじゃない」
選ばれるのは私しかいないと言えるくらい、
それだけ身分が上だということなんだろう。
アルフレード様が婚約者探しのお茶会を開かないことで、
学園内で婚約者を選ぶつもりだという噂もあったし。
かと言って、勝手に思いこみで婚約者候補などと言っていいわけはない。
こうなってしまえば、私だけの問題ではなさそうだ。
「今後はアルフレード様とエルネスト様には近づかないで!
わかったわね!」
「同じ教室なのにそんなことできるわけないでしょう。
それで、あなたたちはどこの家の令嬢なの?」
「まだ歯向かう気なの!?私はインディユ侯爵家よ!」
「後ろの二人は」
「二人はどうでもいいでしょ!」
「……はぁ」
どうでもいいわけないだろうに。
一応はまずいとわかっているわけだ。
金髪の令嬢は同じ侯爵家なら大丈夫だとでも思っているのだろうか。
「とりあえず、あなたたちが言いたいことはわかったわ。
カファロ家から正式に抗議させてもらうから」
「はぁ?抗議ですって? 何を言っているの!?」
「侮辱しておいて何を言っているの?当然でしょう?」
「信じられない!親は関係ないでしょう?
そんな性格してるから浮気されるのよ!」
「浮気されるほうが悪いのか?」
「え?」
急に男性の声が割って入った。
この声はと思って振り返ったら、
校舎の二階の窓からアルフレード様とエルネスト様が顔を出している。
「アルフレード様ぁ!?」
「やだ、エルネスト様まで……」
「うそ……聞かれていた?」
二人に聞かれていたことに気がついて、三人の令嬢は顔を青ざめた。
「お二人とも、どうしてそんなところにいるんです。
話はどこから聞いていたんですか?」
「ん?最初からだよ」
「最初から?」
「ああ。A教室がある棟の前に令嬢が待っているのを見て、
ディアナに何かするつもりなんだと思ってな」
「はぁ……」
最初から私に何か言うだろうとわかっていて、
会話が聞こえる場所まで移動して聞いていたらしい。
眉間にしわをよせているアルフレード様の横で、
エルネスト様はにやにや笑ってる。
どうせなら令嬢たちが話す前に止めてくれたら良かったのに。
「……あの、わたし」
「ああ、リリーナ・インディユ、カーラ・ライッタ、アンナ・デデハ。
このことは学園と王家に報告させてもらおう。
処罰が決まるまではおとなしくしておくように」
「処罰? どうしてですか!?」
さすがアルフレード様。この令嬢たちの名前を覚えていた。
後ろの二人の家は子爵家だったようだ。
侯爵家のリリーナ様がいれば大丈夫だと思っていたんだろうけど。
そんなわけはない。もう口もきけずに震えている。
「この学園でも身分をわきまえるようにと言われているはずだ」
「ディアナ様と私は同じ身分では?」
「そこからか。ディアナと君は違う。
君はただの侯爵令嬢だが、ディアナは領主候補なんだ。
わかるか?この違いが」
「領主候補……?」
三人の令嬢は顔を合わせてきょとんとしてる。
あぁ、そうか。
今の社交界で女性で爵位を持っているのは子爵家と男爵家しかいない。
私が爵位を継ぐとは想像もしていなかったに違いない。
だが、この国は女性が爵位を持つことを禁じているわけではない。
たとえ公爵家でも陛下が認めてくださるのであれば継ぐことができる。
「ディアナは女侯爵になるんだ。
爵位を継げば、社交界でディアナよりも身分が上の女性は、
王妃と側妃、王太子妃の三人しかいなくなる」
「えっ……」
「わかるか?君がどれだけ無礼なことをしたのか。
王太子妃に継ぐ身分の女性に対して、
婚約者に見捨てられたから令息につきまとっていると侮辱した。
これは許されることではない。
学園と王家から、君たちの父上にお叱りがいくだろう」
「そ、そんな……」
A教室がある棟の前に令嬢が三人、外側を向いて立っているのが見えた。
A教室がある棟に他の教室は入っておらず、
今のところ他の学年のA教室に令嬢は在籍していない。
これはあれかな。
嫌な予感がしたけれど、引き返すわけにもいかない。
覚悟を決めて近づいたら、予想通り声をかけられる。
「ディアナ様ですわね? 少しいいかしら」
「何かしら」
一番身分が上なのか、金髪の令嬢が前に出る。
水色の猫のような目じりが、さらに険しくなる。
「あなた、婚約者がいるのに他の令息につきまとっているそうね。
恥ずかしいと思わないの?」
「令息につきまとう? 私が?」
「アルフレード様とエルネスト様よ!」
「やっぱりそういう件で……」
きっとあのダンスの授業の噂を聞いたんだろう。
この令嬢は一年か二年だから、あの場にはいなかった。
さすがに同じ学年の令嬢の顔くらいは覚えている。
だが、今まで社交していなかったから、この令嬢がどこの家なのかはわからない。
おそらく髪色から高位貴族だとは思うが、学園に公爵家の令嬢は在籍していない。
ということは、少なくとも侯爵家以下。
しかも下の学年の令嬢に気をつかう必要はない。
「そんなことはしていないわ」
「まぁ、嘘つきなのね。婚約者に相手にされないのも当然だわ」
「え?」
「有名なんでしょう?あなたの婚約者。
いつも違う令嬢を三人も連れて歩いてるって。
婚約者に相手にされなくてみじめなのはわかるけど、
それでアルフレード様たちに迷惑をかけるなんて許せないわ!」
エラルドの話が他学年にまで広がっているらしい。
あと半年で卒業だというのに。ため息が出そう。
「聞いているの!?」
「それがどうかしたの?」
「はぁ?」
「私の婚約者が他の令嬢といるのは、同じ教室だからよ。
そして、私がアルフレード様たちと一緒にいるのも、同じ教室だから。
そのことであなたにとやかく言われる覚えはないわ」
「これだけ言われても反省しないの!?」
「なんて人なの!」
「そんなだから婚約者に見捨てられるのよ!」
私の態度が気に入らなかったのか、後ろにいた令嬢二人も声をあげる。
茶色の髪に、薄茶色の髪。おそらく伯爵家以下の令嬢たち。
まだ学園の中だから許されるけれど、本来は許されないのに。
婚約者に見捨てられる、か。
本当に見捨てられているのなら、どれだけ良かったことか。
ダンスの授業のように、婚約者でなければいけないものは優先される。
だからこそ、婚約解消できずにいる。
「たとえ本当に私が婚約者に見捨てられていたとしても、
それこそ、あなたたちには関係ないと思うのだけど?」
「関係あるわよ。私はアルフレード様の婚約者候補だもの」
「婚約者候補?そんなものは聞いてないけど」
「学園内で探すのなら、選ばれるのは私しかいないもの。
だからこうしてあなたに注意しに来ているんじゃない」
選ばれるのは私しかいないと言えるくらい、
それだけ身分が上だということなんだろう。
アルフレード様が婚約者探しのお茶会を開かないことで、
学園内で婚約者を選ぶつもりだという噂もあったし。
かと言って、勝手に思いこみで婚約者候補などと言っていいわけはない。
こうなってしまえば、私だけの問題ではなさそうだ。
「今後はアルフレード様とエルネスト様には近づかないで!
わかったわね!」
「同じ教室なのにそんなことできるわけないでしょう。
それで、あなたたちはどこの家の令嬢なの?」
「まだ歯向かう気なの!?私はインディユ侯爵家よ!」
「後ろの二人は」
「二人はどうでもいいでしょ!」
「……はぁ」
どうでもいいわけないだろうに。
一応はまずいとわかっているわけだ。
金髪の令嬢は同じ侯爵家なら大丈夫だとでも思っているのだろうか。
「とりあえず、あなたたちが言いたいことはわかったわ。
カファロ家から正式に抗議させてもらうから」
「はぁ?抗議ですって? 何を言っているの!?」
「侮辱しておいて何を言っているの?当然でしょう?」
「信じられない!親は関係ないでしょう?
そんな性格してるから浮気されるのよ!」
「浮気されるほうが悪いのか?」
「え?」
急に男性の声が割って入った。
この声はと思って振り返ったら、
校舎の二階の窓からアルフレード様とエルネスト様が顔を出している。
「アルフレード様ぁ!?」
「やだ、エルネスト様まで……」
「うそ……聞かれていた?」
二人に聞かれていたことに気がついて、三人の令嬢は顔を青ざめた。
「お二人とも、どうしてそんなところにいるんです。
話はどこから聞いていたんですか?」
「ん?最初からだよ」
「最初から?」
「ああ。A教室がある棟の前に令嬢が待っているのを見て、
ディアナに何かするつもりなんだと思ってな」
「はぁ……」
最初から私に何か言うだろうとわかっていて、
会話が聞こえる場所まで移動して聞いていたらしい。
眉間にしわをよせているアルフレード様の横で、
エルネスト様はにやにや笑ってる。
どうせなら令嬢たちが話す前に止めてくれたら良かったのに。
「……あの、わたし」
「ああ、リリーナ・インディユ、カーラ・ライッタ、アンナ・デデハ。
このことは学園と王家に報告させてもらおう。
処罰が決まるまではおとなしくしておくように」
「処罰? どうしてですか!?」
さすがアルフレード様。この令嬢たちの名前を覚えていた。
後ろの二人の家は子爵家だったようだ。
侯爵家のリリーナ様がいれば大丈夫だと思っていたんだろうけど。
そんなわけはない。もう口もきけずに震えている。
「この学園でも身分をわきまえるようにと言われているはずだ」
「ディアナ様と私は同じ身分では?」
「そこからか。ディアナと君は違う。
君はただの侯爵令嬢だが、ディアナは領主候補なんだ。
わかるか?この違いが」
「領主候補……?」
三人の令嬢は顔を合わせてきょとんとしてる。
あぁ、そうか。
今の社交界で女性で爵位を持っているのは子爵家と男爵家しかいない。
私が爵位を継ぐとは想像もしていなかったに違いない。
だが、この国は女性が爵位を持つことを禁じているわけではない。
たとえ公爵家でも陛下が認めてくださるのであれば継ぐことができる。
「ディアナは女侯爵になるんだ。
爵位を継げば、社交界でディアナよりも身分が上の女性は、
王妃と側妃、王太子妃の三人しかいなくなる」
「えっ……」
「わかるか?君がどれだけ無礼なことをしたのか。
王太子妃に継ぐ身分の女性に対して、
婚約者に見捨てられたから令息につきまとっていると侮辱した。
これは許されることではない。
学園と王家から、君たちの父上にお叱りがいくだろう」
「そ、そんな……」
649
お気に入りに追加
4,782
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません
しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。
曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。
ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。
対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。
そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。
おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。
「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」
時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。
ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。
ゆっくり更新予定です(*´ω`*)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる