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80.最後の警告

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「なぜ、この教室で授業を受けられると思うんだ?
 お前の成績ではついていけないぞ。無駄なことはやめておけ」

「成績なんてどうでもいいの。
 私はアルフォンスのそばにいなきゃいけないのよ」

「それこそ無駄なことだろう。
 側近候補でも婚約者でもないお前がそばにいる必要はない」

「あるのよ!」

はっきりと王子に必要ないと言われたのが嫌なのか、感情的に声を荒らげた。
ギルバードはめんどうになったのか、アルフォンス王子へと問いかけた。

「アルフォンス王子、お前はどう思う?
 エレーナはA教室にいる必要があるか?」

「いいえ、ありません」

「アルフォンス!私がいなきゃ何もできないじゃない」

「俺はエレーナがいなくても何も困らない」

「何を言っているの?
 あなたがセザール王子にいじめられていた時、助けたのは私よ?
 お茶会での悪評だって、私が消してあげたのに」

本気でそう思っているのか、胸を張って答えているエレーナに、
昔から人の話を何も聞かなかったんだろうなと思う。

「俺はそんなことをしてほしいと言っていない」

「そんなこと言っても、私に助けられていたでしょう?」

「……よけいなことしてただけだよな」

ぼそりと一人の令息がつぶやいた。茶色の髪を一つに結んだ眼鏡の令息。
もう一人の側近候補か。確か中央貴族の伯爵令息だった。

「あんたは黙ってなさい!」

「いや、ダニエルの言うとおりだ。
 エレーナがしていたのは余計なことだった。
 おかげで王妃からの目が厳しくなって、エシェルに行くことになったんだからな」

「アルフォンスまで何を言うの?」

信じられないという顔をするが、このA教室にいる者たちは理解している。
アルフォンス王子が目立たないようにしていた努力をエレーナが壊したということを。
本人は助けているつもりだったのだろうけど、王子からしてみたら邪魔していただけだ。
そのことに気がつかない限り、会話は成り立たないだろうけど。

「エレーナ・コッコがこの教室にいてもいいと思うものは手を上げろ」

ギルバードが教室全体に聞こえるように言ったが、誰も手を上げなかった。
エレーナだけがどうしてと驚いている。

「これでわかっただろう。
 これ以上邪魔をするようなら、謹慎処分にして学園の外に出す。
 すぐさまここから出ていけ」

「教師にそんな命令が出せるわけないでしょう!」

「俺はルモワーニュ国王から許可を得ている。
 退学にすることもできるが、そのほうがいいか?クレマン」

「……これ以上揉めるようであれば、そうしてください。
 父上には私から説明します」

「クレマン!あなた私にそんなこと言っていいの!?」

「父上から言われている。
 アルフォンス様にこれ以上つきまとうようなら退学させていいと。
 これが最後の警告だ。先生の指示に従え。
 コタユータ侯爵家がお前を助けることはない」

「……ふんっ。アルフォンスを守れるのは私だけなんだから!」

さすがにこれ以上は無理だと悟ったのか、
エレーナは言い捨てると荒々しくドアを開けて教室から出て行った。
一応は納得したのだろうか。素直にB教室に行ったのであればいいけれど。

「さて、今日は自己紹介と二学年の授業の説明だけして終わる予定だ。
 まず、大きく変わったところを先に説明する。
 A教室は他の教室よりも先に授業が終わることになった」

授業時間が他の教室と違う?
あぁ、帰りの時間が重ならないようにってこと?

「この教室は王族と王族の婚約者がいるからな。
 安全のために、A教室が終わった後に他の教室が終わるように調整する。
 授業時間はそれだけ短くはなるが、この教室は優秀だから問題ないだろう」

時間が短縮すれば、それだけ集中して覚えなくてはいけなくなるが、
A教室であれば大丈夫だろう。
ちょっとだけダーリア様が嫌そうな顔をしていたけれど、
他の者たちは問題なさそうな顔している。

「それでは、自己紹介をしてくれ」

その後は一人ずつ自己紹介をし、この日の授業は終わった。
私たちが教室から出た時、少し離れている他の教室はまだ授業が続いている。
これなら貴族に声をかけられないように急いで帰る必要もない。

帰る時、アルフォンス王子とアリアンヌ様がうれしそうにしていた。
同じ王族棟に帰るのだろう。どうやら側近候補の二人も王族棟に住んでいるようだ。
エレーナは中央棟にいるだろうから、これなら朝の時間だけ気をつければ済むのかもしれない。
さすがにあんなやり取りを何度も聞かされるのは嫌だ。
退学になるかもしれないと思ったら静かになると思うけれど、
エレーナの行動がわからない以上、不安はなくならない。

明日からどうなるんだろう。

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